80.太極拳上達法(入門・初級編)

このページをご覧の初心者の、そこのあなた。上達の希みは、かなりの確率であります。そもそもご自分の太極拳を何とかしようと思うから、こんな時間に色々上達のきっかけをつかもうとしているんです。大丈夫です。

上達の望めない、ただ何となく太極拳をやっている人たちは、週に一回の教室で仲間の皆さんの動きを見ながら最後の収勢まで通せば大満足の筈です。あなたのような努力はしていません。そもそも彼らは、健康のために始めた太極拳で苦労などしたく無いのです。動作名などちゃんと憶えるのも面倒くさい。人間、小難しい事は避けて通りたいのが本音です。でも、そんな調子で100年太極拳をやっても.自分に残るものは何もありません。太極拳をやった事にもならない。運動としては、やらないよりは良かったとは思いますが。

太極拳はちゃんと向き合って取り組めば、やって来ただけの成果を残してくれます。初心者が先ず憶えなければならないのは套路の順序です。週に一回の教室でこれを実行しようとしても無理があります。教室で順序を憶えようとしてはいけません。順序を憶えるのはDVDなどの映像で憶えるようにします。ひたすら映像を見て、一人で憶える努力を重ねます。友達などからマンツーマンで教えてもらえる人は良いと思います。それと並行して動作名称を憶えます。1日一個憶えても24日あれば24の動作名称を憶えられます。順序といっても、おおよその荒順序で構わないのです。細かな手順や方向は教室練習の時に修正すれば良い。大体の順序を予習しては教室で復習をします。この時、どの動作名称がどの動作に該当するかを突き止めるのも大切なことです。動作名称の由来や意味を調べるのも、後々役に立つでしょう。成る程と思わせるような、深い意味を持つような名前もあれば、「な~んだ!」と思ってしまう程、安易に付けられているような名前もあります。それでも、太極拳の動作名称の意味を知って置くことは記憶する上でもとても大切なのです。

今までのお話を整理して見ましょう。

①初心者のみなさんの太極拳上達法は、順序はDVDなどを観て一人で憶える。または、気の許せる友達に教えてもらう。

②合わせて、その名称も憶える。

③動作名称の意味合いも、調べて憶える。

①のDVDは、順序を憶えるだけならどんなDVDでも構わないと思います。加藤先生のDVDは長い目で見ればとても為になりますが、順序を憶える為だけでは勿体ない。順序用の手ごろなもので良いでしょう。

②の動作名称の憶え方ですが、紙に書いて憶えるのが一番良いと思います。この時、大切なポイントは筆で書くと云うことです。もちろん筆ペンでもかまいません。筆は筆圧の調整や運筆がボールペンに比べるとはるかに難しい。筆字になれた方はともかく、不慣れな人には厄介な作業になります。それが良いのです。素晴らしい脳トレーニングにもなるし、一画一画丁寧に書くことによって文字も憶えることが出来ます。書くという動作を楽しみながら記憶するという目的が達成出来たら、一石二鳥というものです。

③の動作名称の意味合いを憶えるは、一つ一つ楽しみながら調べて見てください。先生によって知っている人もいれば、知らない人もいますので、ご自分で調べた方が良いと思います。②と③は同時進行で勉強することとによって、より効果的な向上が期待出来ます。

次に大切なことは、正しい定式を憶えることです。太極拳で云う『定式』とは、その動作の完成時の形のことを言います。定式がきれいに収まれば、とても美しい太極拳になります。逆に、定式が規格から大きく外れれば、見るにたえない太極拳に落ちてしまいます。定式は、大きなポイントです。

ここにご覧いただいている、加藤先生の定式写真はDVD撮影時のお元気なお姿ではありません。手術後退院されて間もない頃、指導教材制作の一環として撮影さたものです。この加藤先生の写真には正しい太極拳普及への強い想いと願いが込められています。

順序、動作名称、動作名称の意味、そして定式。ここまでの課程を修了された時、皆さんはもう初級クラスではありません。中級の域に立たれていることになります。もちろん、中級以降に学ぶべき事はたくさんあります。制定拳の基礎を構成する歩法・手法・身法・腿法・眼法などあせらず急がず、丁寧に取り組んでください。ご自分の感性を磨き、良いものとそうでないものの判別が少しでも出来るようになった時、ご自分の大きな進歩を確信できる筈です。とにかく、良いものに接してください。