先ず始めに大雁気功は、千数百年の歴史を有する由緒正しい気功である事をお伝えしたい。
大雁気功の日本語版書籍は、ベースボールマガジン社発行の『やさしい大雁気功』が販売されている。著者は、李徳鳳老師。新刊で税込¥1,363-であったこの本は、どうやら再版されていないらしく、現在では入手困難になっている。古本しか手に入らないのだ。私が入手した時は数冊が、ネットの古本店で販売されていた。昨年のこの本の古本相場は¥5,000-であったが、勉強したかったので止むを得ず購入を決めた。痛い出費であったが、現在とても役に立っている。その後ネットでの価格の変遷は、ある時は¥3,000-であり、ある時は¥1,300-であったりした。我が加藤教室の生徒さんたちは、それぞれ¥3,000で買ったり、¥1,300で買ったりしている。購入するときのタイミングに『運』もあるようだ。2017年4月現在、この本はアマゾンで1冊のみ、¥13,000-で販売されている。新刊の10倍の価格だ。事ここに至れば、出版社に新刊の増刷を切望するしかないようだ。
私が初めて大雁気功に出会ったのは5年ほど前になるだろうか。加藤修三先生がまだお元気な頃、先生のご縁で、日本で唯一のプロの太極拳団体である『日本太極拳友会』の合宿に参加させていただいた時のことだ。神奈川県横浜市にある日本太極拳友会は、日本で一番多くの『全日本チャンピョン』を擁する団体でもある。率いるのは、伝説の指導者三代正廣先生。32式太極剣を始めて3ヶ月の宮岡愛選手(現 内田愛選手)を一気に全日本チャンピョンに導いた。最年少の13歳であった。このような太極拳指導者は、今の日本のどこを探しても他に見当たらない。まさに一流の指導者であり、その指導者に率いられるのは、まさしく日本一の太極拳団体である。
大雁気功の初体験の感想は、『軽い体操』程度。
大雁気功は、鳥の雁の動作や習性を取り入れて構成されているので、顫動(チャンドン)という翼を羽ばたく動作が出てくる。これは三代先生がやればとても美しい動作になるのだが、どうも自分でやる段になると心に大きな抵抗が生じる。気功自体も、正直積極的にやる気になれなかった。
去年、私が66歳の段階で抱えている身体的問題は、高血圧、痛風、アレルギー喘息、加齢による変形性関節症、頻尿、糖尿病予備群、腰部脊椎間狭窄症とそれによる坐骨神経痛、五十肩、偏頭痛などなどである。年々歳々、体のあちこちの部品が故障を起こして来る。自分の体の『耐用年数』を50年と見ているので、仕方無いと言えば致し方無い。2016年11月、そんな私の体調不良を察して三代先生がこの大雁気功を強く推薦してくださった。三代先生は50種を超える気功を実体験して、大雁気功が一番健身効果があったそうだ。勿論、ご自分でも日々実践されている。三代先生のお言葉を素直に受け入れて、大雁気功に取り組むことにした。やるとなったら徹底して勉強し、日々実践する。このオンボロの身体を実験台にして、結果が良ければ生徒のみなさんにもお薦めしよう。そんな思いで半年間続けた。64式の動作名称と動作規格を憶え、全体動作は三代先生の動作をお手本にして稽古した。
あっと言う間に半年が経った。私の場合、偏頭痛がすぐに解消された。そして、終わったあと、何故か身体が軽くなっている。階段を登る足取りが明らかに軽いのだ。五十肩で耳の横まで寄せられなかった右腕も、いつの間にか動くようになっていた。ちょっと走ると息切れしていたが、それも無くなっていた。ストレッチをしても、坐骨神経痛の痛みで難しかった右脚の柔軟性も、少しづつ良くなっている。大雁気功64式1回の動作時間は、8分から9分。理想的には朝3回、夜3回の通し稽古。時間が無ければ、たとえ3分4分で途中終わっても問題ない。短くても、やらないよりはずっと良い。但し、途中で終わっても必ず『収式』の動作で終わらせることが大切。今、加藤教室では正式に大雁気功を導入し、必ず1回は実践している。
以下は、『やさしい大雁気功』の解説文を抜粋してご紹介する。
大雁気功は道教の崑崙派に伝えられて来た秘伝功法の一つで、大きな雁の動作をまねて、気功導引法と結びつけて創られたものである。この気功を練習することによって、人体に網の目のように張り巡らされている生命エネルギーの通路である経絡を良く通し、エネルギーの気や栄養を運ぶ血(けつ)を正常に運行させることが出来る。
大雁気功を行ってきた人々を調査してみると、中高年者の慢性病、保健のための体力強化に、非常に良い効果があることが証明されている。特に高血圧、低血圧、心臓病等の慢性病に、みなかなりの回復治療効果を示すことが分かっている。
(中略)
気と血(けつ)は生命を動かすエネルギーである。大雁気功は主にさまざまな動作をすることによって、体内の気を順調にまわし、ツボを開き、経絡を通し、血の滞りを治し活性化する。気功練習によって手足の陰陽の経脈は上中下の丹田を通し(上丹田は眉と眉の間、中丹田は両乳頭の間、下丹田はヘソ下)、全身二十本の経脈を通し、気・血をスムーズにおだやかにする。
手のひら中央の労宮、足うら中央の湧泉ツボを開き、天地の気を吸収し、清新な気を体内に送り、濁った気を排出し、弱まった所を補い、活発すぎる所を安定させ、身体の新陳代謝機能を増強し、元気を養い、良い気をつくり、体内器官組織に栄養を与え、臓腑機能を協調させ、病気を治し健康な身体をつくるのである。本書では動作説明の後に、その動作の作用を説明している。
また、ある解説では「中高年者が行うと経絡、血液の流れが良くなり、除病健身の効果が得られる。青少年が行うと、脳の働きが良くなり、記憶力が良くなるので学習能力が高まる。」とも紹介されている。
また、いくら健康のためとは言え、やり過ぎはご法度なのでご注意願いたい。