197.『太極拳対練102式のすすめ②』

対練はその名の通り、甲と乙が対面して練習するものです。

太極拳套路のように一人では出来ません。気心の知れている人と楽しく学ぶ事が大切です。

いつもの先生から習えるのが一番良いと思いますが、太極拳教室で対練のクラスがあるところは探すのに苦労するかも知れません。

見つからなければ中国の対練DVDで学びましょう。

私のお薦めは『李徳印の太極拳対練』です。

オーソドックスな内容ですから、対練初心者の入門教材としては最適だと思います。値段も¥2,000-前後であったと記憶しています。

ただし、中国規格のDVDですから日本のDVDプレーヤーでは再生出来ません。

私の場合は初めはパソコンで見ました。どうしてもテレビ画面で再生したい場合はPanasonicの逆輸入品をお薦めします。


『Panasonicリージョンフリープレーヤー』の『DVD-S700』です。

規格の違う外国のDVDのほとんどを再生する事ができます。価格は私が購入したものは¥23,000-でした(説明書英文)。

安いものは外国メーカー製で¥4,000-前後でも販売していますが、信頼出来る機器で見たいと思い、迷わずにPanasonicを選びました。

こう言う所でけちって何度も転んでいますから、そういう経験を活かしたのです。

親からは「安物買いの銭失いをするんじゃないよ。」と聞かされていましたが、ついついうっかりが何度かあります。

値段の高い物が必ず良い物とは限りません。

でもはっきり言えるのは“良い物”はそれなりに値が張るという事です。

対練の修得の手順は

①先ずは動作名称と動作手順を覚えましょう。

第一段は1式から22式までの動作になります。

お一人が11動作で構成されていますから、甲乙の分担を決めて始めましょう。4式の単鞭までは単独の動作です。

抱拳礼以降はお互いに速さを合わせ、起勢・攬扎衣・開合手・単鞭と繋げて行きます。

順序の段階では動作の連綿性や力の入れ抜き・間(タイミング)や間合い(距離感)の事などは考慮する必要はありません。

ただひたすら動作と動作名称を覚えましょう。

この段階では動きは怪しくても構いませんから、とにかく22式の野馬分鬃まで動けるようになる事が先決です。

22式まで協力して覚えたら、今度は役割を変えて見ましょう。甲だった方は乙を、乙だった方は甲をやります。

お互いの動作を両方覚える事は、なめらかな動作に結びつきます。

古代中国の兵法家の孫子も「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」と言っています。

相手の動きを知る事は、自分がどう動けば良いかに直結するのです。


②動作の意味を知り、軽い発勁をためして見ましょう。

太極拳動作では推掌でも冲捶でも肘を伸ばす事はありませんが、基礎的な発勁動作では相手に攻撃が当たる時は、肘もしっかり伸ばして突き込みます。

強く発勁すると肘を痛めますからあくまでも軽く伸ばして見ましょう。

5式の上歩進捶は1歩前に大きく踏み込みながら乙の胸部を突きます。弓歩が決まるのと冲捶の肘が伸びるのが一致するときれいな動作になります。

冲捶は基本の拳の握り方を勉強して軽く握っても形になるようにしましょう。

握りが悪いと拳面から勁力を感じる事はありません。冲捶の肘は伸びたあと反動で少しゆるめます。

6式の退歩提手は左足を大きく退げ、右足の前足底を前に着地すると同時に右手掌背で甲の右拳背につけます。

甲の7式の搬手冲捶は乙の提手で受けられた後、さらに左手搬手で乙の右手を払い右の冲捶で乙の右脇腹を突きます。

8式で乙はこの甲の冲捶を左手摟手で払い、右冲捶で反撃を加えて行きます。

7式の甲の左搬手は手の平で乙の手首内側を払い、8式の乙の摟手は左掌根にて甲の右手首内側を払います。

ここまでは突いたり受けたり払ったりと特に難しい動作ではありません。お互い協調して動作をすればうまく行くでしょう。

9式の甲の換歩靠は足さばきと手法と体さばきの調整がむつかしい動作になります。

靠という動作も日本人にはあまり馴染みがありません。

靠は単に左肩を乙の右脇部に当てて行けば形は作れますが、それでは実際に発勁した時に全く威力はありません。

靠は発勁する直前に相手に柔らかく密着します。この時の下半身は十分に蓄勁がされている状態です。

肩が相手に密着した瞬間に、一気に発勁します。体の使いは上下のバネ、前後の体重移動、上半身の纏絲などによります。

対練では実際に発勁はしませんが、こう言う体の使い方を学んで行くときれいな動作につながります。

8式の乙の冲捶を右足を引き、左掌を甲の右拳に添えて後方へ捋し、同時に左足を一歩進めて左肩を乙の右脇に密着させます。

この時重心は左右の足の中間にあり、十分に蓄勁されている事が大切です。

左肩がふわっと相手に密着した瞬間に一気にエネルギーを爆発させ靠定式の左弓歩になります。

対練の実際では軽く肩を付ける程度ですが、このようなの含みがこの動作では不可欠になります。

このほかに相手の攻撃のタイミングに合わせて防御動作をしたり、距離を調整したりと、脳を刺戟する材料には枚挙にいとまがありません。


はじめは動作名と動作を覚え、次に動作の意味を理解し、軽い発勁を学びましょう。その後に相手の動作との同調を身につけて行きます。

もちろんタイミングや距離感の修得も大切な要素になります。

102式ありますから、あせらずに時間をかけてからだと脳のトレーニングを楽しまれたらいかがでしょうか。


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