126.「鉄人の真似しちゃなんねぇ!」・・・「鉄人だから」

『三浦雄一郎』、元気で若いよねぇ〜!1932年10月12日生まれの86歳。

『加山雄三』も元気で若いよねぇ〜!1937年4月11日生まれの82歳。

このお二人は『鉄人』です。特に三浦雄一郎さんは『超人』とも言われている。

鉄人とは、鉄のように頑強な身体や意思を持つ人物の事。元々生命力が強い上に、日々己を鍛えて来た結果の呼称。だから、一般ピープルが真似することは出来ない。また、真似することもご法度だ。理由は私の体験談としてお話ししよう。たとえお二人共通のコマーシャルであるサントリーセサミンを飲んでも、多少の効果は期待出来るかも知れないが、決して鉄人にはなれない。

たしか6〜7年前、NHKで三浦雄一郎の放送があった。私は正直言って大変感動した。80歳を前にしてエベレスト登頂を目指しての日々のトレーニング。このとき紹介されたトレーニング方法は『ヘビーウォーキング』。背中に30kgの重りの入ったリュックサックを背負い、両足首には重さ5kgのアンクルウェイトを装着して街中を散歩するのだ。本人いわく「街で山歩きの気分、結構楽しいですよ!」このトレーニングは週に4日、多い時は1日8時間以上歩くこともある。

三浦雄一郎の体の機能を12年にわたって調べて来た体育大学の教授が言った。

「75歳から、トレーニングによって急激に筋力が伸びています。」

「人間の可能性はこんなもんじゃないと、三浦さんが改めて示してくれました。」

この放送を見ていたほとんどの視聴者が、その前向きな生きる姿勢に感動したはずだ。私も大いに感動し、早速アンクルウェイトを注文した。

「三浦雄一郎が5kgのアンクルウェイトだから、オレは2kgのにしようっと!」

謙虚な姿勢で臨んだ。私は冒険家でも登山家でもないので、リュックサックに30kgのウェイトを入れるのは遠慮させていただいた。少し自信が付いてからでも遅くは無いはずだ。数日して注文していた2kgのアンクルウェイトが届いた。両足首に巻きつければ合計4kgの重さになる。装着した感じは、思っていたよりはずっと軽い。

「こりゃちょっと物足りねぇな!」

これが私の率直な感想である。軽いアンクルウェイトなのでほぼ毎日1時間を1週間ほど歩き続けた。歩いている時は三浦雄一郎が隣にいて、共に歩いているようで心地よい。

「やっぱり三浦雄一郎のように、前向きに生きるって気持ち良いよなっ!」

心に感動がよみがえる。

結果、どうなったか?

暫くして、左膝に痛みが生じた。鉄人の真似を軽くとは言えした結果、私の左膝は悲鳴をあげてこわれたのだ。歩くと痛くて、もう散歩など出来ない。痛みから日常生活にも支障を来すようになって来た。

今になれば判るのだが、表面だけの現象を見て、物事を理解してはいけない。三浦雄一郎の何たるかを知らずして、真似してはいけないのだ。三浦雄一郎は小学二年生からスキーを始め、成長するに従って青森県でも有名なスキー選手となった。その後はみなさんご存知のようにプロスキーヤーとして世界で活躍し、登山家としても著名になっている。三浦雄一郎の下半身は80歳を前にして鍛えられた訳では無い。小学二年生から高い負荷によって鍛えられ、その強靭な下半身を80歳を前にして改めて鍛え直しただけなのだ。一般人とはベースが大きく違う。

番組で医療センターのゲストの医師にNHK側が質問。

「いくつになっても筋肉は、つけられるものですか?」

医師が答えていわく。

「そうですね、若いころから運動をして筋肉をつけるということも大事ですけれども、年を取ってからでも決して遅くはないです。60、70、80になっても、三浦さんのようにトレーニングさえすれば、筋力を鍛えることができます。それが非常に重要なことだと思います。」

こんなコメントを信じて日本全国の視聴者がどれだけ膝をこわしたのだろうか?

私の知り合いのご主人もこの番組を見て真似し、膝をこわしたとの事である。

大切な事は個人個人に合ったトレーニングをして筋力を鍛える事なのだ。決して三浦さんのようにトレーニングしてはいけない。同じトレーニングをするのでは無く、その前向きな姿勢を学ぶ所にこの番組の意義があった。そこら辺をNHKも専門科も考えた上で、一般ピープル向けに解説をする必要があった。放送側も解説側も視聴者側もみな考えが甘かった。誰のせいにする訳ではないが、みんなでもっとしっかり致さねば。・・・物事は表面だけ見るのでは無く、その奥に隠れている本質を見抜く事こそが大切なんだなぁ・・・。

「わかっちゃいるけど、やめられねぇ〜。」とは良く言ったものだ。

その後私の膝は、日常生活に不自由を来しながらも半年後には回復した。

数ヶ月ほど信頼できる整体院に通い、十数万円の治療費を要した。

「高っぇ〜!(たっけ〜) 勉強代。」となった。

自分のペースで、自分の領域で自分を鍛えることが大切。その点、太極拳は安心して出来る万人向けのトレーニング法と言えるだろう。