第十四回 加藤修三の 『太極拳レベルアップ講座』

①『下半身の安定と重心移動』

レベルアップ講習では一番の目標として、下半身の安定、重心移動を学びます。

重心移動の最も大切な動作は、胯関節の動作です。

講習では胯関節の動きを 『A』、 『B』、 『B+』 の三動作に分類して練習します。

“Aの動作”

Aの動作は胯関節を合わせる、合胯(収胯)を表します。

“Bの動作”

Bの動作は胯関節を開く、開胯を表します。

“B+の動作”

Bの動作開胯と同時に膝頭をつま先方向に張り出します。

*太極拳動作に於ける重心移動は、総てこの三つの動作の組合せで行なわれます。

“動作時の注意点”

A、B、B+の三つの動作は、足首・膝・胯の三つの関節と足裏の協調運動です。

足裏はどの運動でも、しっかりと踏みしめる事。これに依りA、Bの運動の際、足首・

膝関節が固定され、胯関節の運動が充分に行なえるようになります。

“Aの運動の特性”

両脚の中間点からどちらかの脚へ体軸を移動させる。

足裏を踏みしめて、足首・膝関節を固定し胯関節を合わせて行なう運動。

“Bの運動の特性”

片方の脚に乗っている体軸を、両脚の中間点に送り出す。

足裏を踏みしめて、足首・膝関節を固定し、胯関節を開いて行なう運動。

“B+の運動の特性”

A、Bの運動では膝関節を固定して、胯関節の『開』・『合』を行いましたが、B+の運動

では足裏を踏みしめて膝頭をつま先方向に張り出す事で胯関節を開く運動です。

B+の運動は、三つの運動内容を持っています。

①Aの運動とセットで行ない、軸脚を完成させる運動。

②軸脚を完成した後に運動の方向が大きく変化する場合(身体の正面から見て、

外側に45°を越える場合)、軸をずらす事無く方向を変化させる運動。

③両脚の中間点に有る体軸を、膝頭を張り出して胯関節を開く事に依り、体軸を

引き寄せる運動。

*『A』 『B』 『B+』 この三つの運動の組合せで太極拳の重心移動を伴う歩法は行なわれます。半坐盤歩、歇歩等の歩法、歩型は体軸を廻す事に依り行ないますが、胯関節に表れる運動は同じになります。

A・B・B+の記号を使って「側行歩」 「退歩」 「進歩」の三つの歩法を表してみます。

(A・B・B+ の大文字は右脚。 a・b・b+ の小文字は左脚。 ○は中間点を表します。)

“側行歩” A→B→○→a b→○→A の繰り返しになります。

“退 歩”

左虚歩から 収脚 退歩 右虚歩 収脚 退歩 左虚歩

A→B+→B+ → B→○→a→b+ a→b+→b+ → b→○→A→B+

“進 歩”

起勢(開立歩)から

収脚 上歩 左弓歩 后坐 収脚 上歩

A→B+→B+ → B→○→a→b+→b→○→B+→B→○→a→b+ →

右弓歩 后坐 収脚 上歩 左弓歩

b→○→A→B+→B→○→b+→b→○→A→B+ → B→○→a→b+

*『A』 『B』 『B+』を理解して身体で覚える様、練習しましょう。