第十七回 加藤修三の 『太極拳レベルアップ講座』

“手法と身法について”

太極拳運動の根幹の動きは「眼、身、歩」であると云われます。

眼法は意を表し、目的を持った手法が身法に絡がり、歩法の変化を造り出すと私は考えます。

眼法を身法に絡ぐ手法は大変重要であり、手法の運用法はしっかりと理解しなければなりません。

手法・身法が密接なのは、腕が動いている時、肩は手法の一部であり、定式になった時の肩は身型の一部になります。

手法を考える時、肩の使い方は大変に重要であり充分に理解しなければなりません。

「手法の内容」

手法の内容の説明の一つに、立円・平円の二方面の分け方で説明されますが、掌や拳の路線に付いては分かりますが、身法との絡がりへの理解にはあまり役に立ちません。

レベルアップの講習では、手法の運動方向を身体の前面方向に働くものを前面系の手法とし、身体の側面方向に動く手法を、側面系と決めて説明します。

“前面系と側面系 胸肩・中肩・背肩”

“前面系の手法の特徴”

○身体の前面、胸前、両肩前方向に勁力を表す手法。

“特徴”

○前面方向の『開の動作』・『合の動作』。

○肩の上部で起きる沈肩で行う(中肩)

(起勢の手法・摟膝拗歩等の推掌・攬雀尾の掤、捋、擠、按)

“側面手法の特徴”

○身体の側面方向に開く・側面外側から身体の中心に合わせる手法。

(野馬分鬃の分手・白鶴亮翅・倒巻肱の開手)

身体の中心から前面に働く勁、側面に働く勁の二方向に手法を考えると内容の理解が進むと思います。

手法では、肩関節の動きは脚部・臀部・肘・手首に絡がり、目的を果たす事が出来ます。

“肩の役割”

手法における肩の役割は、大変重要です。

腕には肩・肘・手首と三つの関節があります。肩は胸・背と絡がり、腰と絡がります。

動作の目的が手法にあるとき、肩の使い方の重要さが理解出来ると思います。

“肩の使い分け”胸肩・中肩・背肩

手法の内容によって、肩は三つの部分に分けて考える事が出来ます。

肩の運動は全て沈肩で表現されますが、前面系の動作では中肩を使った沈肩で行います。

側面系の『開』の動作は、胸・肩が主になり、『合』の動作では背・肩が主になります。

胸肩、背肩は同時に働いていますが、『開』の動作では胸部に感じ、『合』の動作では、背部に働きを感じます。この感覚は腕にも伝わります。

胸の感覚は掌心側に伝わり、背の感覚は掌背に絡がって行きます。

“0の肩”

肩の働きの重要性について説明して来ましたが、一般的に肩の動作説明は「肩を沈めて」の言葉が全てです。肩の関節は一つの動作が到達点に達すると、次の動作に対応するために元に戻ります。この状態を「肩を沈めて」の言葉で表現しているのです。

肩関節の動きについては、もう少し内容を深める必要があります。

①何もしていない状態を“0ゼロ”に設定します。

②意が働いて動きが始まる状態が “1” です。

③目的に向かって動く途中が “2” です。

④目的に到達した時が “3” です。

そして、この次の目標に変化しようとした時、肩関節は “0ゼロ” に戻ります。

“0ゼロ” に戻らずに次の動作に移ると、動作は硬直して勁を発揮する事は出来ません。

準備 “0ゼロ” → 始まり “1” →途中 “2” → 到達点 “3” → “0ゼロ” に戻る。

2013年7月 加藤修三