以前、生徒さんから
「四六時中、太極拳の事を考えられていると評判の加藤修三先生ですが、電車の中や会社内などスペースが取れない時の効果的な訓練法を是非知りたいのです。」と云う質問が有りました。
私は太極拳が面白くて、確かに1日の中のかなりの時間、教室で指導している時や電車に乗って移動している時など、太極拳の事を良く考えます。ただ、四六時中と云うところまで、太極拳の事を考えている事は有りません。
確かに、合宿とか訪中した時に、同宿した仲間に
「加藤さんは、寝言で太極拳を教えている。」
と何回も言われた事が有りますが、睡眠中の事は私にはわかりません(笑)。
電車で移動中の時なども、乗り込んで来る野球部や運動部らしい高校生達を観察して
「この子は出来そうな子だ。」とか
「あんまり強そうな運動部では無さそうだな。」などと勝手に想像したりしますが、最近はあまり太極拳の事などを考える事が少なくなりました。
以前はこんな事も有りました。第二回の全日本大会に32式太極剣の集体を出す事が決まり、背格好が合うからと言われ集体チームに参加させられました。その時点で、私は32式太極剣の套路を全く知りませんでした。当時、招請していた李徳印老師から
「練習すれば、大丈夫だ!」
なんて言われて、必死の思いで練習しました。
全体のテンポ、リズムは32式太極剣の伴奏音楽で合わせるように言われ、カセットテープに録音したものを車のデッキに入れてリピートにして、運転中ずっと聞いていました。車が渋滞している時など、つい手が剣の動作をしてしまい、隣の車の人から怪訝な目で見られた事も有りました。
大会の成績は第二位。
内部の練習では一位だったのに、24式太極拳のチームに負けてしまいました(笑)。
太極拳に憑かれた人は、太極拳の事が頭から離れられない時期があるでしょう。上手な人の動作を見れば自分も上手になりたい等々、色々考える事もあるでしょう。
でも太極拳をするのは自分自身、ある時期を経たら自分自身をしっかり見つめて自分で出来る事を一つ一つ着実にこなして行く事です。
取り留めのない話しになってしまいましたが、練習している時に集中して自分を見つめる事をしないと、身体が捻じれたり、足裏のバランスが崩れていても気が付かなかったりします。指導員の注意が頭に入らず練習の成果が上がらない状況に陥ることもあるでしょう。そんな事にならないように、練習中に仲間が受ける注意は、自分に対する注意だと思って聞く事が大切です。
私が太極拳を始めた時に、中国の老師に言われた事の中に印象に残る話しがあります。
太極拳の技術の進歩の為には習字に譬えて、
「楷書は、一人の先生からしっかり学び、行書は他の人に習い、草書は自分自身が作り出すものです。」と云われた事が有ります。
太極拳を始めた教室、先生はとても大切です。でも時々は講習会等にも参加して教室の仲間以外の人達と交流したり、技術の話などをして見てはどうですか。
日頃の練習の成果を実感するには資格の取得も一つの方法ですが、大会に出場して全日本大会の出場権を獲得するのも意義のある事だと思います。