第五回 加藤老師遺稿『全日本選手権大会に思う』

全日本武術太極拳選手権大会を観戦しました。

選手の皆さんには、「頑張って、思い切りやりなさい。」などの声を掛け、

サブアリーナと会場を何回も往ったり来たり忙しい三日間でした。優勝した選手、上位に入り来年のシード権を獲得した選手の皆さん、お祝い申し上げます。入賞した選手、昨年より成績を上げた選手にも良く頑張ったと褒めて上げたいと思います。

初めての全日本で緊張した選手もいたと思います。誰もが経験を積み強い選手に育って行くものです。全日本大会出場の経験を生かして、これから努力してくれるものと期待しています。

大会を見ていて一つ気になった事があります。新しい審判員が多くなりました。新しい審判員もきっと緊張しながら打点をしていたのだと思いますが、選手の演武を見ていて

「エッ!どうしてこの選手の得点が高いの?」と思う事がしばしば有りました。

プログラムを見ると選手名の横に、Sマークが付いている選手でした。

私が審判をしている頃、審判員に前年度の成績表が配られた事がありました。選手編成表に前年度の得意を書き込み、打点の参考にしている審判員が何人も居ました。打点は今コートで演武している選手の技術を評価し、打点をするのが審判の公平な役目となります。前年度の打点を参考にするなどしてはならない事です。

前年度の成績の配布は、二・三年で取り止めになりました。今、私が止めて欲しいのは、選手編成表の選手名の横にSマークを入れる事。是非、Sを外して欲しいと思っています。

何故なら、明らかにSマークに影響を受けて打点をしている審判員が居ると思われるからです。シード権を獲得して来年度の出場権を得る事は素晴らしいことですが、来年のコートでの演武に対しての評価ではない筈です。プログラムに付くSマークは観客の為にも必要かも知れません。でも、審判員に予断を持たせるような編成表のSマークは有ってはならないと思います。

一年間を懸けて練習して大会に臨む選手の為にも、優秀な審判員を育成する為にも、関係者の皆さんにお願いしたいと思います。

加藤修三(2009年夏)