富士山は美しい。ずっと眺めていても、飽きが来ない。雄大で美しく、時間や季節によってもその表情を変えて見せてくれる。
私は父が群馬県高崎市出身、母は静岡県富士宮市出身なので群馬と静岡には子供の頃から馴染みがあります。群馬も好きだけれど、富士山には日本人として、正直特別な魅力を感じます。世界遺産にもなりましたし、これからは日本一と云うより、世界の富士ですね。
最近あらためて日本の文化やテクノロジーが世界から見直されているようです。こんな小さな国なのに世界から認めて貰えるものが沢山有ることに、しみじみと嬉しさが込み上げて来ます。世界最大の漢和辞典、大修館書店刊行の『大漢和辞典』も日本が世界に誇れる一品だと思います。代表の諸橋轍次博士を中心にして多くの学者が、数十年の歳月をかけて完成させた貴重な辞典です。刊行された時には、漢字の本家、中国政府からも500セットの一括発注があったそうです。ちなみに、現在では新装普及版が全15巻で一式¥259,200−します。私はとても新しいものは買えなかったので、古本を購入しました。当時のものは、全13巻ですがとても重宝しています。漢文を調べる時もあれば、太極拳用語を調べる事もあります。このように日本人が、それぞれの志に向かって生真面目に勤勉に努力し続ける生き方が、これからも世界のあらゆる分野で実を結ぶ事と思います。
生真面目・勤勉・努力と云えば、やはり加藤先生を思います。技術者ですから太極拳以外の事については、至って不器用な面もお有りでした。ところがこと太極拳に於いては、どんな質問をしても丁寧に答えてくれるのです。余程熱心に勉強されて来たのでしょう。多くの中国人一流老師の皆さんからも、とても愛されていました。北京の大学教授である著名な太極拳老師は、「加藤は日本で一番の太極拳指導者だ!」と絶賛して居られましたし、有名な謝志圭老師などは「加藤は、私の生徒だとは思っていない、太極拳に於いて加藤は私の弟だ。」この道を深く真摯に学ぶ加藤先生に対し、親しみを込めて言われた言葉です。
2014年11月にご自宅で療養中だった先生に呼ばれた際に、太極拳団体について質問をしました。私も私なりに意見を持った上での質問でした。私が「先生、今の日本で一番の太極拳団体はどこだと思われますか?」の質問に、先生は小さな声でしたがはっきりと「拳友会があらゆる面で日本一になったね。」と答えられました。拳友会とは神奈川県に本拠地を置く、全国規模の太極拳団体である『日本太極拳友会』の事です。私も様々な太極拳団体を見て来ましたが、他の追随を全く許さないのが今の日本太極拳友会です。我々日本の武術家から見ると、どんなに組織が大きくても日本の太極拳団体はアマチュアの愛好団体です。健康のためになれば良い、老後の趣味として楽しめれば良いと云う趣旨の上に運営されています。これはこれで、しっかりとした社会的役割を担っていると思います。しかし日本一となると、たとえどんなに組織が大きくても、アマチュア団体では対象になりません。日本国内だけならともかく、それでは、日本人の技術として世界にはとても通用しないからです。
加藤先生に質問をした時に、私の頭の中にあった答えも『日本太極拳友会』でした。加藤先生とピタリと答えが一致した瞬間でした。日本太極拳友会は私の知る限りでは、日本でただ一つのプロの太極拳団体と言って良いと思います。この団体以外は、日本トップの大団体もアマチュア愛好家団体なのです。では、どこが他と違うかと言うと、やはり指導者が違います。
日本太極拳友会会長の三代正廣先生は、これからの日本の太極拳界を背負って立つにふさわしい人間性をお持ちです。『百工の技芸と雖も、未だ志にもとづかざるものあらず』と立志編にありますが、正しい太極拳を日本に広め、次代の後継者を育成し、以て広く国民に益する事を志しておられます。本物を学び、そして伝えると云う強い使命感と熱意を感じます。今、日本に一番不足しているのが『正しい太極拳』の普及です。この三代先生の『志』・『使命感』・『熱意』・『人間性』でどんどん日本の太極拳は良くなると思います。
また、日本太極拳友会の特筆すべき社会貢献性は、他団体の愛好者に対しても門戸を開き、講習会に受け入れているところです。講師陣も全日本チャンピオンを多数揃え、充実した講習を実施しています。皆さんも是非一度、参加体験される事をお薦め致します。