第二十四回『制定拳は楽しんで健康促進。』

正宗楊式太極拳は本来の武術のままの太極拳です。

それに比べて制定拳は太極拳健康運動と言えます。簡化24式は中国政府が中国国民の健康のために永年太極拳(楊露禅が創始した元祖伝統楊式太極拳・河北省永年県が発祥の地)をベースにして作らせた健康運動だからです。簡化とは永年太極拳に比べて簡単にしたとか、簡略化したと云う意味になります。中国国家が制定した太極拳健康運動だから『制定拳』と言います。

みなさんは簡化二十四式太極拳を始めとする制定拳を楽しめていますか?

日本人は何事も生真面目にやろうとして、ああしてはいけないとか、こうしてはいけないとか、難しい事を云う傾向があります。

そもそも簡化は基本的に難しい事を言ったり聞いたりしなくても良い性質の健康運動です。それをやる事によって健康が促進すればいいんです。それにはある程度の身体に対する負荷が必要になります。もちろん一人一人の体力や身体の調子によって使い分けは必要ですが、突っ立ったままの状態で下半身にほとんど負荷をかけないような24式では健康効果は期待できません。たとえば基本歩型の弓歩は前足のつま先の位置まで膝を折り曲げ合わせ、後ろ足の膝は軽く張り伸ばします。重心のバランスはおおよそ7対3くらいで良いでしょう。横幅は10cmから20cmの幅をとり、前後の足が重ならないように注意が必要です。これを基準にして脚が痛いとか、膝が痛いとか下半身に故障のある人はあまり痛くない範囲で調整をしてください。もう一つの基本歩型である虚歩は前脚1に対して後脚9くらいの重心バランスで取ります。実足である後ろ足にしっかり重心を載せ、前足はいつでも軽く上にあげられる状態を保つ事が大切です。この二つの基本歩型がしっかり取れるようになれば健康運動としては合格です。

次に故障予防の意識を持ってください。どんな運動でも間違った動作を長く続けていると身体の故障につながります。まず下半身に負荷をかける時には必ずつま先と膝の向きを一致させることが重要です。太極拳で膝痛に悩む人は膝とつま先のズレが故障の大きな原因の一つになっています。もう一つは弓歩のとき、前足の膝がつま先をこえて前に出ることの無いように注意しましょう。前足のかかとの上にちょうど頭がのるような重心バランスを取り、つま先重心にならぬ様かかとを中心にして足裏全体で負荷を支える感覚を覚えてください。故障の原因を取り除き、しっかりと下半身に負荷をかける事が出来る様になれば動いた後にうっすらと汗をかく事が出来るでしょう。運動の後の爽やかな感覚を味わえるはずです。

初心者はまず順序を覚えることに重点を置きましょう。多少手法が上になろうが下になろうが仕方ないでしょう。順序を覚えてきたら今度は定式の形を覚えましょう。定式とはその動作の完成時の形を言います。写真は加藤修三先生の『穿梭』の定式です。まず第一に順序。第二に定式の形。それに並行して動作の名称は覚える必要があります。『1.起勢』『2.左右野馬分鬃』『3.白鶴亮翅』などなどです。動作名称は書道の勉強のつもりで、半紙に筆で書いて覚えると必ず覚えられます。そのとき一緒に中国語読みも書いて覚えてください。『2.左右野馬分鬃ゾウヨウイェマフェンゾン』と言った具合です。物事に取り組む時は一歩踏み込んだ姿勢での取り組みが上達のコツになります。その内に覚えようと思っていたら十年経ってもまともなことは覚えられません。十年経っても一人で順序も出来ない、動作名称などとんでもないと言う方も結構おられます。一歩踏み込んで苦労して覚えたものは、その楽しさも倍増しているはずです。歳はとっても若々しく学ぶことがとても大切です。