第一回『斃而后不已』(たおれてのち、やまず)

斃而后已(たおれてのち、やむ)

死に至まで、努力して已まぬ事。出典は五経の一つ『礼記』。

【禮、表記】志身之老也、不知年數之不足也、俛焉日有孳孳、斃而后已。

老いても、その志に対する想いは益々強く、残された年月を気にも止めない。日々努力する様は変わらず、死ぬまで屈しない。斃れて後に已(や)むまで。

この言葉に接する時、そのまま加藤先生の生き様を思い浮かべます。常に、より良き太極拳を模索し、研究するお姿は私の目に焼き付いて離れません。とても真面目で、誠実な方でした。食道ガンで入院する以前のお元気な時も、入院し手術した後も、肺炎で高熱を出され昨年末再入院される時も、最後の最後までその生き様は一貫しておられました。

全国の太極拳愛好者の皆さんのために、少しでも役立とうと云う強い想いがおありでした。2015年1月からスタートした『32式太極剣のはなし』の執筆は、病室でご自分の命を削りながらの最後の仕事となりました。その気力に只々唖然となるばかりでした。さすがに3月をむかえ、呼吸が苦しくなり酸素マスクが手放せない状態になると原稿はストップしましたが、それでも朦朧(もうろう)とする意識の中で何度も筆をお取りになっていたそうです。

事務局のわれわれは、加藤修三先生と同じ事は出来ません。ただ、加藤先生の志の一端を引き継ぎ、次代にその想いを伝えて行く役割と責任は継続すべきだと思います。加藤先生の生き様を手本に、今後もその志をつなぎ、皆さんにより良い情報をこのホームページを通してお伝え出来ればと考えます。

まだ未公開の映像や資料なども有りますし、加藤先生から指導されたMEMOもたくさん残っています。出来ればそのMEMOを元にして『32式太極剣のはなし』の続きも事務局の仕事として果たせたらと思います。

この欄のタイトルは『斃而后不已』(たおれてのち、やまず)です。

原典に『不』と云う一字を加えました。

加藤先生が斃れたあとも、その志は次代の者に引き継がれ已む事は無いと云う思いを込めました。