「加藤修三先生に教えて頂いた事」

太極拳札幌交流協会 代表

原田 稔

一昔前の話になってしまいます…、加藤先生を北海道にお招きして講習会をして頂いた事がありました。

浅学菲才の私は、その際、先生に太極拳で套路を学ぶ意味をお尋ねしました。

先生は、あの思慮深い表情で呟くように…「達人の技(ワザ)は美しい…。」と仰られました。

私は先生の言われた言葉の意味が分からずに、目顔で問い返したものです。

そんな私に、先生は、こう言われたのです…「武術家であろうと、芸術家であろうと…、イヤ…、熟練した職人さんの仕事に打ち込む姿も…どんな分野でも、達人の技は美しいものだ、その所作は美しいものだ…、太極拳の套路は、その達人の所作を学ぶと言う事から、意味のある事なんだ。」と話されたのでした。

爾来、ずいぶん長い時間が経ちましたが、この時の先生のお言葉は私の耳にズット残っています。

加藤先生の説かれる太極拳は、明快で簡潔でありながら、決して、平易でも単純なものでもありません。

このホームページをご覧の方なら、皆さんが知っていられる事でしょうが、先生の指導される太極拳は、とても奥深く、そして貴重な内容を教えて下さっているものだと思います。

太極拳をされている、先生のお姿は、まるで身体で描く東洋哲学、実践する哲理そのものです。

特に虚歩圧腿や仆歩圧腿などの基本練習を指導されて、自らも模範を示されるそのお姿は、求道者の姿とさえ、言えると思います。

チャキチャキの江戸っ子言葉を、お話になる先生の口調では「真っ直ぐ」を『まっつぐ』と発音されます。

私の様な田舎者には、まぶしいような印象を感じますが、本当に唯、真一文字に進んで行くという話しっぷりです。

昨年、全日本大会の会場出口で、帰路につく際に、私と家内は加藤先生から声を掛けて頂きました。

「原田…!二人でな、ゆっくりと、やって行くんだぞ、ゆっくりとな…。」

私も家内も先生の御教示のとおり、ゆっくりと、そして「まっつぐ」に進むつもりです。

太極拳札幌交流協会 代表 原田 稔