永い間32式太極剣に関しての執筆の要望を、数多くの皆さんから戴いて参りました。
自分でも「書きたい!」「書かなければならない!」と云う使命感の様なものさえ感じていました。
32式太極剣は、簡化24式太極拳の1956年発表に続いて、1957年に制定されました。
現在は当時に比べ動作規範等に大変に大きな変わり過ぎの部分もあり、これが32式太極剣の解説をするに当たって大きなためらいとなっていました。
套路を「起勢」から「収勢」まで習い覚えた人が、すぐに新しい人に教える。その繰り返しのなかで、微妙な技術的ズレが生じた可能性も有ると思います。
亦、32式太極剣は「楊式剣」を初心者向け套路として分かり易く造られています。
中国の老師は、多くの老師が楊式剣を習得されていて、制定剣でありながら伝統的な操剣法がつい表れてしまう。こんな事が理由で制定剣でありながら今の様に色々変化してしまったのではないかと考えられます。出来る限り本来の姿の制定剣を解説して行きたいと思います。
基本的動作の理解
①太極剣は、剣を持ってただ振り回して套路を追っかければ良しとは、どなたも考えてはいないと思います。剣の持ち方や、身体の勁を剣に伝える為にはどうすれば良いか等を、考えて行きましょう。
勁力を充分に剣に伝えるには、どんな意識と操剣法が必要なのかを考えることは、大変重要な事です。剣の尖に勁を伝える為には、剣のどの部分に意識を伝えたら良いのか、剣法と身法を協調させる為にはどうしたらよいのか、今までとは少し違った意識を持って剣法を考えなくてはならないかも知れません。套路動作の進行に合わせてお話しをして行きましょう。
②案外気が付かずに剣を動かしていませんか?
起勢から並歩点剣で剣を右手に持ち替えると、収勢の動作まで32式太極剣の動作は右手で剣を動かしています。右手で持ったまま動作を続ける事は、当然身法も右動作を続けている事になります。右側方向より左に動かす時、亦反対に左側より右側方向に動かす時、それぞれ気を付けて行なわなくてはなりません。一例を挙げると、独立掄劈で上歩提膝掄劈の動作の際、剣が自身の顔に近づいたり、ひどい場合には頭の上方に来てしまう事。或は虚歩掄劈の時は、反対に右肩上に引き上げて仕舞う事などです。どこをどうすべきかと云う事は、本文で詳しく、動作規格の中でお話ししたいと思います。
③剣指の使い方とその重要性
剣指の働きは剣の動作の中で非常に重要なものです。動作に付いての慣れ等で剣指の型を崩してしまったり、剣法と剣指の協調が大変に重要である事を忘れてしまっている場合が多く見られます。身体の左側方向に張る動作、過渡の動作、亦剣指を右手首傍に合わせる動作、どの位置に張るのか、添えた剣指は右手首のどの辺りに添えたら良いのか、これらも大変に重要であり正確でなくてはなりません。これら基本動作の正しい理解と、間違いがあったら正して内容の良い32式太極剣を学んで見ましょう。動作規格と注意点を通して共に学びましょう。