第十六回「雲手から単鞭」(前回からの続き)

「動作規格」

① 三回目の左雲手から二回目の単鞭に入るが、右雲手と同様に左掌で押さえ、右掌は胸前、前方に張り続ける。

② 右掌を南西方向に内旋し、重心は右脚にAの運動で乗せる。

③ 右掌を鉤手に変え、腹前正中線に有る左掌は正中線に添わせて胸前に上げる。右脚にB⁺の運動が起きて軸足を完成させる。胸の方向は南に向く。掌心を内側に向けた左掌の指先は、右鉤手の手首に向ける。そして左腕内側から外に向けた掤勁を保つ。

④ 左脚膝を上げ、つま先を床から離す。

左腕は掤勁を保ち続け、目線を南東方向へ移行させる事で右脚にB⁺の運動がおこり、腰向きは南東に向く。

⑤ 腰向きの変化に合わせ、左脚を東方向へ上歩、左踵を着地させる。

右脚裏を踏み押え続けて、両脚の中間点に体軸を移動させる。左掌は体軸が中間点に到達する迄、正中線に合わせ続ける。体軸が中間点から左脚に移行するのに合わせて、徐々に開き始め左弓歩が完成する。その移行にあわせて外向きの掌心を内旋させ、左弓歩の完成時に東から斜め前方に向ける。

左掌の内旋に依り腰がゆるみ、左脚裏に重心が掛かる時、右脚の踵に蹴り出しが起きる。左弓歩となり、単鞭が完成する。

「動作の要領と注意点」 ―その二―

① 雲手動作の数は右脚を左脚に三回寄せる事で数えますが、三回寄せた事で雲手が終了したと思わないことです。

右脚への重心移送の際の手法は右雲手です。右雲手を行なう事で右脚にAの運動が起き、左掌が胸前に上がる動作でB⁺の運動が起き、右軸脚が完成するのです。

② 単鞭の動作をしようと鉤手を作りにいくと、右脚のAの運動は起こりません。AとB⁺の運動がなければ右脚軸は未完成で、左脚上歩の際に右脚膝を内側に潰してしまいます。

③ 胸前の左掌を張り続ける事は、胸・肩前を開き続ける事となり、腰をゆるめてくれます。

④ 単鞭の定式時の手型について、

左掌…手首を肩の高さに合わせます。右鉤手…五本の指先を揃えて摘まむ様にして、手首を折り曲げ、指先を真下に向けます。手首の内側 を肩の高さに合わせます。丁度手首の厚み分、肩より少し上方に有ります。

⑤ 鉤手の手型は手首から先で作るのではなく、肩を沈め、肘を自然に伸ばし、斜め上方に向いた手の甲を軽く張り伸ばします。

⑥ 単鞭の動作は閃通臂の動作と同じ様に腰向きを十分に開いて行いましょう。

⑦ 眼法は上歩した後に中間点に重心が到達する迄は左掌手首辺りに置き、中間点を過ぎる時から眼法が先行して、定式時に左掌が到達する位置前方に向けます。