第十二回「左攬雀尾の掤から捋・擠」

「動作規格」

①わずかに尺骨側(小指側)の外旋した左掌を、人差し指(橈骨側)を軸に内旋させ、左胯関節をAの運動でやや左方向に向け左掌を肩の高さに伸ばし、右掌は人差し指側(橈骨側)の外旋でやや進行方向左に向け、右手人差し指の付け根を正中線に合わせる。左掌は左肩前、掌心斜め下向き、右掌は正中線に合わせ掌心斜め上向き。

②左掌を更に上方に伸ばす意識を持つ事により、左掌に押さえる勁を生み出すと同時に、下方に押さえる事により、左掌採、右掌托の勁を作る。

③左掌採、右掌托の勁を保ったまま、左脚にかかる踏み押さえで、体軸は両脚の中間点に移行する。この時、左弓歩の弓腿の膝は動いてはならない。捋の動作が始まった両掌は、手型を変えずに体軸の移動に合わせて移動する。

④中間点に至った体軸は、右脚胯関節のAの運動で右脚に移行し、重心は右脚に移る。

⑤両脚中間点に至るまでは、両掌の捋の手型は変えず、次の擠の動作に移行するために、右胯関節のAの運動を止め(鎖胯)、腰を右に廻し、右掌を右斜め方向(後方45°位)に開き肩の高さに合わせる。左掌は右掌の動きに同調して外旋し正中線に合わさる。

⑥次に右斜め後方に上がった右掌に向けていた眼法は進行方向に向ける。それにより、進行方向に身体が向き、胸前に上がった左掌を、前に張り出し始める。進行方向に向く身法に合わせて身体の中心に戻る右掌は、左掌手首内側に合わせて両掌の内側から膨らむ勁で前方に張り出す。歩型は弓歩の定歩となり、擠の定式となる。両掌は胸の高さに合わせる。

「動作の要領と注意点」

①捋の手法はわずかに左胯にAの運動を起こして、左方向に向いた左肩前に合わせます。手の動きが大き過ぎて、左肩前を外れて左に流れ過ぎないように注意しましょう。左掌は左肩の高さに合わせます。

②捋を始めようとする時、左右の掌心の向きは、下方向きの左掌心と右掌心は向き合っている事。掌心の向きに大きなずれを作らないように注意しましょう。

③捋の動作は感覚的に引く動作と考えますが、内容的には引くのではなく、左掌の捋で右掌に托の勁を生み出して、両掌の協調により左弓腿に負荷がかかり、左脚にBの運動を起こす事により重心が両脚の中間点に移行する事で起こる動作です。捋と擠の動作は連動していますが、捋の勁は重心が両脚の中間点に至るまでの動作となります。

④捋から擠に移るのは、重心が中間点に到達した以後になりますが、ここからが擠の動作へ移行する過渡動作の始まりです。

⑤右脚のAの運動で重心が右脚に移動したら、右斜め45°方向に開く右掌は、腰を廻す事で行なう事です。右に腰を廻し正面に戻す腰の動きで右脚に重心を残す事が出来、擠の勁を充分に発揮する事が出来ます。

⑥ ①から⑤までの要領の中で特に注意したいのは、攬雀尾の動作には重心移動はあっても歩法の変化はありません。前後の重心移動の中で動作の内容が変化します。この重心移動は適切な手法の内容の変化によって起こるものです。手法の適切な運用が攬雀尾動作を作り出します。