‪第十二回の②「左攬雀尾の擠から按」‬

「動作規格」

①擠の定式 合わせた両掌を内側から張り(ふくらませる)、腰をゆるめて体軸を両脚中間に移し、同時に両掌は内旋させながら肩幅に開く。

②開いた両掌は胸の高さから肩の高さ位に上方に向けて弧線を画くようにして胸前に引き寄せる。引き寄せた両掌は胸前から腹部前に引き続き弧線を画きながら押える(下按)。重心は右脚に移動する(后坐)。

③腹部前に押えた両掌は引き続き下方から上方に向け弧線を継続し続け、肩前に推し返す(前按)、右脚の重心は手法に合わせ左脚に移り、左弓歩定式となる。(按の完了)

○動作の要領と注意点

攬雀尾の動作は、弓歩の定歩の中で手法に合わせて前後の重心移動に依り動作が進行します。擠から按の動作も擠の手型の変化で腰をゆるめ、重心を左脚から右脚に移す事で動作が進行します。肩幅に開いた両掌は肩幅を越えて開き過ぎない様に注意し、両掌、手首の部分を上方に膨らませる様に弧線を画く事で、

腰をゆるめ続けて右脚に重心を移動させます。水平に両掌を引くと、肩が詰まり腰が緊張して充分に坐る事が出来ません。按の動作では両掌の掌面の部分、掌根と掌底の使い分けも大変重要になります。

引き込みの時は、掌根を意識して胸前から腹部前への下按では掌底に力点を置く意識が必要です。下按から前按に移行する時は、再び掌根に意識を戻します。

按の動作で下按で一区切りする人が多くいますが、これは間違い動作です。下按で勁を切らない事が必要です。按の手法は横から見た時、ちょうど卵を横から見た形になると言われています。下按と前按は勁を切らずに継続させなくてはいけません。

定式の前按では、手首の位置はほぼ肩の高さで肩幅を越えて広げ過ぎない事ですが、力点の方向にも注意が必要です。左弓歩の場合、両掌の力点の方向は一つの方向ですが、言葉では両掌は肩の前、掌心はやや内側に向けると言いますが、左弓歩の場合、力点の方向は肩の前、正面より僅かに左弓歩、左軸脚方向に向けます。正確な力点の方向を知る方法として、按の定式を造り、左攬雀尾の場合、按の手型を保ったまま少し右方向にずらします。静かに左方向に戻して来ると、力点の方向が定まると腰がゆるみ、足裏にしっかり重心がかかるのを感じます。この方法はどの定式での完成度を上げるのにも使え、役に立つ筈です。

○追記 擠の手型について

擠の手法の特徴は、両手を使って一つの勁を造り出している事です。野馬分鬃、摟膝拗歩等の多くの動作は、分と採、推と採の二つの方向性と合わせて目的の動きを表します。この様な手法では双つの手の合わせ方、手型が大変重要になります。左攬雀尾の擠では、左手は掤の動作と同じく胸前に肘を曲げ前腕を水平に保ち、手首の位置を正中線に合わせます。右手は掌心を斜め外側に向け、小指の付け根を左手首のの中心に合わせ、肩を沈め、肘をやや下げて前腕を斜めにします。身体前面に張り出す動作と含胸抜背の身法を合わせて強い擠の勁を造り出します。双手の状態は両肘を落したり、又逆に両肘を水平にしても正しい勁は生まれません。内側から合わせる右掌は、左掌と重ねてはいけません。これは多くの人達に見られる間違いです。掌どうしが重なっている状態からは擠の勁は出す事が出来ません。

右掌の合わせは指先で合わせたり、又逆に手首どうしを合わせて上方に抜けてしまっても、正しい擠の動作は得る事は出来ません。

正しい双手の合わせが出来たら、肩の高さから胸前に下げて見る、力点の方向を左右にずらして見る等の方法を取って正確な擠の手法の内容を修得しましょう。