第十九回 ~ 質問に答えて ~

簡化二十四式太極拳の動作説明も右蹬脚まで進み、全動作の半分を過ぎました。

【三つの胯関節運動A・B・B+】

重心移動は太極拳の運動に取って大変重要な項目ですが、日本の言葉で適切な説明が付け難いものがありました。短い言葉で適切に伝わる表現が無いものかと考え、重心移動の最も重要な働きをする胯関節の運動を三つの言葉で分かり易く伝える事が出来るのではないかと考え、Aの動作、Bの動作、B+の動作と名付けました。胯関節は下腹部と大腿部の内側が合わさっている部分の関節です。両脚の中間点に在る体軸を右脚、左脚に寄せるのは下腹部の動きであって、大腿部は動きません。また片脚に在る体軸を両脚の中間点に移動させる動きを大腿部は動かずに下腹部側の動きで行われます。この胯関節の大腿部側、下腹部側の働きを頭に入れておいて、A、B、B+の動作を考えてみて下さい。

Aの動作(合胯)

Aの動作の特性は両脚中間点から片脚に体軸を移行させる運動です。下腹部が大腿部側に引き寄せられる内容で、合胯と云われる運動です。

「動作の要領と注意点」

中間点に在る体軸を片脚側に引き寄せるには仮に右脚に寄せるとして、右脚裏を踏み押えて足首と膝関節を固定し右脚、腰の側面をつま先と踵で作る直線、身体の正面から真直ぐ後方に引きます。動作が完了した時は腰向きは軸脚つま先から外側に最大45°の方向に向きます。膝関節を固定して行う事が絶対に必要な動作です。足裏の踏み押えで足首関節を固定し、膝胯関節を固定しましょう。

Bの動作(開胯)

Bの動作の特性は片脚に乗っている体軸を両脚中間点に送り出す動作です、大腿部側に合わさっていた下腹部が送り出されて体軸を両脚中間点に移動させる内容です。開胯といわれる運動です。

「動作の要領と注意点」

片脚に在る体軸を両脚の中間点に送り出すには、右脚に体軸が在ると仮定して右足裏をしっかり踏み押え続ける事で足首、膝関節が固定され、胯関節下腹部側が開き続け両脚中間点に体軸が到達します。Aの動作では腰の側面を真直ぐ後方に引きましたが、Bの動作では後方に引いていた側面を身体正面方向に強く戻します。膝関節をしっかり固定できるように足裏のしっかりした踏み押えは重要です。

〇A、Bの動作共に、共通項は足裏をしっかり使い、膝関節の固定が最重要ポイントです。

B+の動作(膝を張り出す開胯)

B+の動作には三つの内容が有ります。

(1)中間点に在る体軸を片脚に寄せる動作

(2)Aの動作とセットにして、軸脚を完成させる動作

(3)完成させた軸脚から軸の位置をずらす事無く、身体の向きを変える動作

A、Bの動作共に膝関節を固定する事で可能になる運動ですが、B+の動作は膝関節の固定では無く、膝関節をつま先方向へ張り出す動作が必要となります。Bの動作は下腹部側を開く運動でしたが、この開胯運動に膝頭をつま先方向に張り出す運動を加えた運動なのでB+の動作と名付けました。

「動作の要領と注意点」

(1)の動作は弓歩型から后座動作をする時中間点に体軸を移動させるのは弓腿の踏み押えで起きるBの動作です。その後に後脚に体軸を移動させるのは後脚のB+の動作です。

(2)Aの動作で引き寄せられた体軸を、膝頭をつま先方向に張り出す事で腰向きがつま先方向に向き、腰がゆるみ反対の脚が寄ります(鬆腰收脚の状態)。独立歩や過渡動作の中でも軸足を完成させる時には必ず必要な動作です。

(3)軸脚を完成させた後に次の動作に移行する時、例えば起勢から左野馬分鬃の動作に移行する際には抱球収脚の後に東方向に上歩をしますが、右軸脚膝頭を正面に張り出す動作で腰向きを南東方向にむけた後、東方向に上歩する事ができます。B+の動作はこの様に三つの動作内容が有り、非常に重要な動作です。

これから説明の中でA、B、B+の動作を使っていきます。少しでも皆さんの理解に役立てばと思っております。