第六回「左野馬分鬃から白鶴亮翅」

①野馬分鬃の定式から左掌を橈骨(とうこつ)側の内旋で左斜め方面に張り出し、同時に左脚胯関節にAの運動を起こし、右掌尺骨(しゃっこつ)側の外旋で抱球(パオチュウ)を作ります。左脚のAの運動で右脚は半歩引き寄せられ、足先を着地させます。

②左掌の掌根で「採()」、押さえて指先を斜め下方に少し差し込むようにし、右肩前を開き張り続けます。右肩前に右掌が到達した時、腰向きは進行方向から45°位に位置し、左掌は右掌に添えて動きます。左脚にBの運動が起きて体軸は両脚の中間点に達します。右足先も足先は45°。踵は床面に着地します。

③更に右掌は右に60°位開き、同時に右脚にAの運動が起きます。重心は右脚に移ります。

④右腕を張り続けながら、同時に左掌も張り続け肩前から左斜め下方に動かします。左掌が動き始める時に、右脚にB+の運動が起こります。

⑤更に左掌は左斜め下方に動き、右脚に二度目のB+の運動が起き、腰向きが進行方向に到達し腰に新たなゆるみが生まれ左足先が床面から浮きます。

⑥浮いた左足先を着地させ、胸前中心から左右に膨らませて定式となります。眼は正面前方、右掌は頭の横、左掌は座腕になり左胯関節斜め前に収まります。

「動作の要領と注意点」

①跟歩(ゲンブウ)の動作が出て来ます。跟歩(ゲンブウ)はその前の動作の勁が継続する事によって起こる運動です。左野馬分鬃の左掌の分け開いた勁をそのまま内旋して張り続ける事が大切です。簡化二十四式太極拳には四つの跟歩(ゲンブウ)、虚歩(シイブウ)の動作があります。いずれも意識の持ち方は同様です。左掌の内旋に依って起きる腰のゆるみを左足裏にしっかりかけて踏み押さえ、左膝頭を固定する事が大変に重要です。

②跟歩(ゲンブウ)した右脚は左脚のBの運動で足裏(踵)を着地させます。右脚の運動で足裏を着地させると左軸足の力が失われ、右脚の胯関節に詰まりが生まれて虚歩型の膝が内側に潰れてしまします。太極拳の練習を続けて膝関節を痛めてしまう方が多く見られますが、重心の移動を虚の脚で行なう事による弊害です。実の脚の力が働いて両脚中間点に体軸を移行させる運動は、全ての歩法に於ける大変重要な項目です。

③左足先を着地させる動作が有ります。これは右脚に重心移動で生まれたAの運動から右足先に腰向きを合わせるB+の運動と、更に腰向きを正面に向ける二つ目のB+の運動を重ねて使う事が必要です。一気に腰向きを正面に合わせようとすると、右膝頭は内側に潰れてしまいます。

④左足先が床面から離れるのは、二つ目のB+の運動で腰向きが正面に向いて、緩む腰によって起こるものです。左足先を意識して動かそうとしては、正しい歩型を作り出す事は出来ません。

これらの要領は「高探馬」「海底針」の動作にも共通です。

同じ跟歩・虚歩でも「手揮琵琶」の動作は、定式の身型が斜め向きになるので、B+の運動は一回だけです。但し、半歩足を寄せる跟歩動作の要領は同様です。

⑤白鶴亮翅の手法は左右に開くのではなく、斜め上方、斜め下方へと勁が働き、内側から開く事、定式時にはっきりとした含胸状態にする事です。虚歩の歩型で臀部が突出するのは、腕を張ってしまう開胸状態にしてしまうからです。

今まで原稿の内容を「動作規格」「動作要領」「注意点」と三つの項目で書いて来ました。しかし「動作要領」と「注意点」には内容的に重複する事が多々有りますので、今回より「動作規格」と「動作要領と注意点」の二項目にして書いて行きます。感想や質問もお待ちします。