第五回「左野馬分鬃」

①野馬分鬃の定式から

左掌の位置を変えずに、更に分け開く意識を伝える事で、腰をゆるませ、体軸を両脚中間点に移動させる、Bの運動が（左脚に）起きます。

②后坐（ホウゾウ）動作へ

虎口（フウコウ）が進行方向、指先が斜めの右掌が①の動作で指先が正面に向きます。身体の中心方向に動き始めた右掌は、右肘も張りながら、更に中心方向に向けていきます。指先は45°位内向き。この動作で腰がゆるみ右脚にB+の運動が起こります。体軸は右脚に移動し、身体は左斜め方向に向いて后坐（ホウゾウ）動作が完了します。

③抱球（パオチュウ）・収脚（ショウジャオ）

②の動作で左掌はわずかに内旋し、掌心が内向きになります。右掌は掌心が下向きのまま身体の中心に近寄ります。左掌橈骨側の内旋で腰をゆるませ、左腕を内側から内旋動作に合わせて張り続けます。右脚にBの運動が起き、中間点に体軸は移動し、続いて左脚のAの運動につながり、体軸は左脚に移り右足踵が上がります。

④右足踵が上がったら右掌を尺骨側で外旋させ、抱球動作を完了させます。この動作で腰がゆるみ右足は左軸足に寄って来ます。

⑤抱球（パオチュウ）・収脚（ショウジャオ）が完了したら、寄って来た右脚を適切な横幅をとって上歩（シャンブウ）させ右踵を着地させます。

⑥右野馬分鬃の定式

⑤の動作の後は、起勢から左野馬分鬃の動作と左右の違いはありますが、左掌根で押さえ、右腕に張りを伝え膨らみ続けます。そして右脚に重心が移り始めたら、分け開き右肩前に右掌を置き、同時に弓歩の歩型の完了で右野馬分鬃になります。

右野馬分鬃から左野馬分鬃は前述した動作要領を右と左に手足を置き換えて行ないます。

「動作の要領」

左野馬分鬃の定式から始まる、右野馬分鬃の始まりの腰のゆるみを、胸の中心から肩前、上腕の膨らみで作り出す事は大変重要です。

弓歩型は前脚に七分、後脚に三分の重心配分です。両脚の中間点は、前脚から近い所に有り、腰の緩みと体軸の移動を感じたら中間点に到達します。後脚に起きるB+の運動は繰り返し練習して、正確なものにするという事が大変重要です。抱球の手型から、上側の掌を押さえる時、掌根に意識を置いて行ないます。掌を動かす時、動作の内容によって、掌根、掌底の使い分けをする事です。掌の向きを変える纏糸（てんし）運動も、橈骨側と尺骨側の使い分けが正しくない動作をすると、勁が萎えたり、両手の協調運動が生まれなくなったりします。

「注意点」

①弓歩からの后坐（ホウゾウ）は、中間までの体軸の移動時間を前脚の強い踏み押さえで行なう事です。踏み押さえ運動は、腰のゆるみで作り出します。決して腰・臀部で重心を後方へ下げない事です。

②上歩（シャンブウ）した後、すぐに足裏を床面に着ける人が多くいますが、これは間違いです。抱球の上の掌の押さえる動作で起こる腰のゆるみ、それに伴う体軸移動によって足裏が床面に着くのです。上歩（シャンブウ）する時は、少し足の甲の部分に張りを持たせて送りこみ、着地する前にゆるめるようにします。

③弓歩の定式では上半身はやや前傾させます。前脚寄りにある支点の上に、頭部を持って来る為に起きる、自然な前傾、これが立身中正の要領です。腰部を反らせて真っ直ぐにする搨腰（ta yaoタアヤオ）は注意しましょう。