第二十回 「右蹬脚から双峰貫耳」

「動作規格」

①蹴り出した右脚を収める。

②両掌を、橈骨側を使って外旋し、左掌は顔の向きに合せる。左掌を左肩に合わせる様にして、腰向きを右に廻し、両手首を肩の高さに合わせる。

③収めた右脚はそのまま保持し、両掌を下げて膝頭横に押える様にする。両掌が膝横に来てから、蹬脚の方向に合せて右踵を着地させる。

④両掌は膝横からやや下方横に開きながら、両掌から拳を握り(握拳)始め、尺骨側の内旋で拳腹をわずかに下方に向け、両拳を打ち出す。

⑤拳の打ち出しに合せ、重心は移動を始め、両拳人差し指の付け根を眼の高さに合せる。同時に右弓歩となり、双峰貫耳の動作が完了する。

「動作の要領と注意点」

❶蹴った右脚を収める時には右脚裏親指を身体の中心に引き合わせる様にして右脚を収めた際の右脚膝が下がらない様にします。

収めるときに足首が曲がったまま引き込むと膝頭が下がり、右脚は脱力してしまいます。

❷両掌の動きは相手の首を挟みつけ相手の顔面を膝頭に打ちつける内容になります。

両掌が膝横に来る迄に、膝の位置は保持しましょう。

❸膝横に下げた両掌は少し下方に下げながら横に開き拳を握り始め、尺骨側の内旋で相手のこめかみ、自分の目の高さに打ち出します。注意として、横に開き始めそのまま弧線を画き続けて打たない事です。拳を握り始めた弧線は打ち出し始めたら相手のこめかみに向け、斜めの直線で打ち出す様にして、勁力の有る動作にしましょう。

定式時の両拳は人差し指の付け根を眼の高さに合せ、両拳の間隔は自分の顔の幅よりやや狭くします。

❹定式時に弓歩が交差してしまい、充分な動作が出来ない人が多く見られます。左掌を左肩前に合せる時に左脚の膝をゆるめて、脚先方向に張り出すB⁺の動作を行います。蹬脚時の腰向きからB⁺の動作で腰向きを右に向けて正確な弓歩を作りましょう。

❺定式時の両拳の位置が高く、肘・肩が上がり易いものです。両拳の内旋時に沈肩墜肘の状態が起きる事に注意を払って動作をしましょう。両拳の作るタイミングが早過ぎたり、両拳の内旋する事に依る変化に注意を払って下さい。そうすれば肩が上がり、内旋が行き過ぎ拳眼が下方に向いて肘が上がるような事を防ぐ事が出来るでしょう。

※附記※

双峰貫耳の動作では簡化二十四式太極拳の解説の中で初めて手型に拳型が出て来ました。拳型の作り方を説明しましょう。

(一) 虎口を開いた状態で四本の指を軽く着けて指先を自然に伸ばします。

(二) 四本の指の第一、第二関節を折り曲げて、指の腹の部分を掌の上部に軽く着けます。

(三) 掌の中心を折り曲げて指先を掌心に触れさせます。

(四) 親指を折り曲げます。人差し指の第一、第二関節の間に親指の腹を合せ、親指先を小指方向に向け

ます。

太極拳手型は強く握り過ぎ無い事と、ゆるめ過ぎて握った指と掌との間に空間を作らない事です。空手では強く握りますし、気功等では中心を空ける空拳にしますが、太極拳では強く握り過ぎず、亦空拳にしない事です。折り曲げた親指先が拳面方向を向いてしまわない事、小指の折り曲げが不足して浮いてしまわない事、拳面を平らにする様に心掛けましょう。