第二十六回「穿梭の定式から海底針」

「動作規格」

①左穿梭の右掌推掌、更に前方(西南30°)に推し込み、右脚半歩寄せる跟歩。

②右掌を更に推し出す推掌で、左脚胯関節はAの運動が起き、腰向きは西南30°から更に15°(腰向き45°)。

③推し込んだ右掌を下方に押さえ、肩を沈めて腰を緩める。腰を緩める事に依り西南45°から、腰向きは西南30°に戻る。この動作では、腰向きの変化だけで重心の移動は無し。

④右掌を押さえ終わると同時に、押さえる右掌で肩前に挙った左掌は外旋しながら立掌になる。掌心北向き、肩の高さに合わせる。

⑤左掌の北方向への動きに合わせて、左脚の重心は移動を始め、左掌が真西に到達した時に右足踵は着地し、重心は両脚中間点に到る。

⑥左掌は更に身体前面に弧を画きながら掌心下向きで押さえる。左掌の動きに合わせて、右掌は外旋させ掌心身体向き、虎口を右耳の高さに合わせる。同時に腰向きは西北(60°位)に向き、重心は右脚に移る。(右脚Aの運動)

⑦引き続き左掌は身体前面を払い、右脚胯B+の運動、腰向き西北45°に戻る(体軸を新しくする)。更に左掌は摟掌、身体は西に向き腰の緩みに合わせて左脚先が床から浮き上がり、脚先を着地させる。同時に右掌は指先を下方に向けて身体中心に向かって差し込む(挿掌)。状態は差し込む動作に合わせて前方に倒し込む。挿掌の完了時に上体の角度は30°位に倒す。左掌は摟掌、定式で左脚大腿横に収める。

「動作の要領と注意点」

☆左穿梭から海底針に移行する動作は、大変多くの人が間違って行っています。正しい動作を覚えて下さい。

①左穿梭の定式の方向は、西南30°方向です。跟歩して右脚を半歩引き寄せた時の腰向きは、南西45°位になります。多くの人の間違いは、この動作で起こります。跟歩した右脚踵を内側に引き入れて、海底針の歩型、虚歩型の後脚の型を取って仕舞う人が大変多く居ると言う事です。

跟歩の歩法の意味は、穿梭の定式の推掌の勁を、更に相手に強く届かせる動作です。手法は推掌をしながら、歩法は次の動作への変化をしていては、武術としての太極拳の動作では無くなってしまいます。詳しく動作の説明をしましょう。

②左脚胯関節Aの運動で、腰向きは西南45°に向きます。西南45°の腰向きを推掌の右掌を下方に押さえて(沈肩)腰をゆるめて西南30°に戻します。この時、重心の移動をしない事。右掌を押さえる動作で左掌は外旋させ掌心を右方向に合わせます。この左掌を右方向へ払う動作で起きる左脚胯関節Bの動作で、体軸を両脚中間点に移動させ右踵を着地させます。この動作で右脚先は西北45°を向き、海底針の虚歩型の後脚の型を作ります。跟歩動作で前方に推掌の勁を表しながら勁を生み出す歩型が、次の動作に向けた動作をする事は、全く理に反した動作です。

是非、正しい歩法を身に付けて下さい。

③体軸が中間点に達し、右脚に重心が移行するのは、右脚のAの運動です。左掌は正中線に合わせて一緒に動きます。左掌は下方に押さえ、腹前まで降ろして摟膝の動作を行ない、右掌の挿掌を合わせます。

④歩法の変化は、左掌の摟掌の始まりでB+の運動が起きて、身体は正面(西北45°)、更に摟掌の進行に合わせてB+の運動を重ねて行ない、身体の方向を西に合わせます。海底針の定式時の上体の前斜姿勢(※探身タンシェン)は、腰の高さに合わせて20°~30°位が適切でしょう。

※探身タンシェン・・・海底針や摟膝栽捶の定式のような、前傾姿勢の身型を云う。