第二十八回「閃通臂の定式から転身搬攔捶」

「動作規格」

①閃通臂の定式から、左掌推掌を更に推す意識で前方に張り腰をゆるめる。

②眼線を180°真裏に向け、重心は左から右に移行させ、左足首扣脚は東から60°、右掌頭部横からやや上方に弧を画きながら、眼線に合わせて掌心は北東に向けて手首は肩の高さに、左掌は同じく上方に弧線を画き頭部左側上方に掌心斜め上向きで収める。

③右掌は「小指側尺骨」の内旋を使い、やや下方に弧を画きながら拳を握り始め、腰部前に拳眼は内向きに収める。左掌は右拳の中心部への引き込みに合わせ、高さは変えず、頭部の中心に合わせる。重心は右掌の移動に合わせて中間点から左足「Aの動作」で左足に乗せる。眼線は東北60°位に合わせる。(この動作で右足の踵が上がるのは不要)

④眼線を東に向け始め、左足「B+の動」で腰を開き、右拳は正中線に合わせて上方に上がり始め、胸前から橈骨側の外旋で拳心内向きで前方に打ち出す。右拳は肩前に合わせる。同時に右足はつま先を外60°位に開きながら東方向に踵を着地させる(擺歩)。左掌は右拳の打ち出しに合わせて下方に下ろし、身体の中心跨関節前に収める。重心は左足60%、右足40%で虚歩型の様にしない事(搬の動作)。

⑤打ち出した右拳は休む事無く、橈骨側の内旋で拳心を下方に向ける。続けて左掌は前方に張り出し、坐腕にして指先を上方に向け身体の中心に合わせる。この動作で左足は右足に寄せ、休まず前方に上歩、踵を着地させる。左掌の前方への張り伸ばしに合わせて右拳は引かれ、左掌の中心に合わせる動作で右拳は橈骨側の外旋で右跨関節に合わせる。拳心は、上向き(攔の動作)。

⑥右拳は尺骨側の内旋で前方に打ち出し、拳面を前方に向け胸の高さに合わせる。右拳の動作に合わせて、左掌引き合せながら指先を右手前腕の中心に添える(手首と肘の中間)。右拳の動きに合わせて、重心は右足から左足に移行した弓歩になる(捶の動作)。

「動作の要領と注意点」

①搬攔捶の動作は、搬と攔、捶の三つの内容を持った動作で成り立っています。それぞれの動作は単独での意味を持つ動作ですが、搬攔捶として一つの動作と考えて動作をしなければ行けません。特に搬の動作は単式で考えれば相手を打つ動作になりますが、ここでは搬の動作は受け払いの動作として考えます。動作規格③の項の動作で、しっかり勁の蓄勁を意識して、溜を作る事です。ここで溜を作らないと、搬の動作の擺歩で右足を踏み出した時に、動きが途切れてしまいます。

②この動作は簡化24式太極拳の動作の中で、扣脚の角度が120°と最大になります。攬雀尾の転身等では、扣脚の角度は90°に成ります。90°の扣脚は、つま先の入れ込み等でごまかす事も出来ますが、120°の扣脚はつま先でごまかす事は出来ません。扣脚の要領は、『眼・身・歩』の正しい太極拳根幹動作でしか出来ません。「動作規格」②の動作で180°眼線の移動を一番先に書いたのは、扣脚動作は眼法が正しく作って呉れると云う事です。眼線の動きは、腰向きの変化を作り出し、腰向きの変化が足の変化となり、正確な扣脚動作が出来るのです。搬攔捶では、眼線の動き角度は180°。攬雀尾では、135°で正確な扣脚が出来ます。「動作規格」③で、眼線の方向は、扣脚した左足先と同じ方向にします。眼線を北に向けてしまうと、左足に強くAの動作が表れて、大事な腰をゆるめて溜を作る事が出来ません。「動作規格」④搬攔捶の動作では、2回溜を作る必要が有ります。一つは、前述の搬の前の引き込みの溜め。二つ目は定式前の攔の動作で、左足を上歩した後に左掌(攔の手)を坐腕にして立掌にする動作で腰をゆるめて、定式捶の勁の溜めを作る動作です。