第九回「左摟膝拗歩から手揮琵琶」

「動作規格」

①左摟膝拗歩の定式から、右推掌の勁を継続して前方に推し出し、左脚胯関節にAの運動を起こして右脚を跟歩します。

②右足のつま先が着地し跟歩が完了したら右掌と肩を開き、指先がやや内側に45°位傾き、人差し指の付け根が正中線に合わさります。体軸は前脚と後脚の中間点に移動します。押さえていた左掌はやや浮き上がりながら前方に移行します。

③開いた右掌を中心から胸肩肘と正中線から外す事無く内側から張り続ける事で腰はゆるみ、重心は中間点から右脚に移り始めます。右胯関節にAの運動が起きて、胸の向きは動作進行方向から右に45°位に向き重心は右脚に乗ります。左掌は進行方向に伸ばされ、左脚膝頭も進行方向に張り出します。

④右脚胯関節のAの運動が完了した後に、もう一つ手法を張り続ける事。腰が右に回り、右掌手首の辺りにあった目の方向を左掌に向けて行きます。

この眼法と同時に右45°位にあった胸の向きが、右脚に起きるB+の運動で進行方向に戻り始めます。右脚に起きたAの運動、B+の運動で右体軸が完了し、腰のゆるみで左足つま先が床から離れます。床から離れた左足を踵で着地させ、虚歩の歩型を完成させます。

右掌は胸の向きの変化に応じます。左足踵の着地後に、右掌虎口を左腕肘の下方に合わせる事で、左掌の前方への張り出しに合わせます。

「動作要領と注意点」

①跟歩の注意

軸脚のAの運動が反対の足を半歩、軸脚に引き寄せるのが跟歩法です。軸脚のAの運動が効果的に行なわれる為には、軸足裏にしっかりと負荷をかけて行なう事が肝要です。特に手揮琵琶の跟歩は弓歩軸脚のつま先・膝先の方向と推し込む右掌の方向とが同じです。しっかり左足裏に負荷をかけなくてはなりません。

右掌を進行方向に推し込む時に、左膝頭が前方にずれ易い動作です。膝頭が前方にくずれてしまうと、左脚のAの運動が不十分になり、正しい軸の移動が出来ません。その結果、定式時の虚歩型の右膝頭を内側に潰してしまう原因になります。

②右胸右肩前を開いて、右掌を正中線に合わせた後、右掌を正中線から外して、掌だけを右斜め後方に開いてしまわない事です。右脚への重心移動時に正中線から外さない事です。

③右脚にAの運動が充分に行なわれた後、もう少し張り続けます。そうする事で胯関節の運動完了後、腰(ウエスト部分)を廻す事で、後方から重心移動にUターンする動きが生まれます。動作の流れを滑らかなものにして連貫性を高めます。

④虚歩型の完了と同時に手法の動きを止めてはいけません。足先が上がって着地した時は、虚歩型の完了であって定式の完了ではありません。歩型の完了後、手型にもう一つ掤と云う張りが表れて定式です。左掌と右掌を合わせた後に、前方に送り出す動きが必要です。掌で前方に送り出すのではなく、合わせる掌で腰をゆるめ、両掌が前方に張り出されるように行ないます。

⑤両掌を合わせる位置も重要です。

肘をわずかに落した左腕の肘下に、開いた右掌の虎口を合わせて右に少しずらします。両掌の間には、腕が一本入る位の感覚が必要です。

両掌の位置は左胸の前。左掌の高さは、鼻の高さに合わせましょう。左掌の位置が高すぎたり低すぎたりさせない事。右掌の位置間隔がずれると両掌の協調が生まれず、勁力を発揮する事が出来ません。