第三回「準備姿勢から開歩」

「動作と規格」

“並歩で立つ準備姿勢” 肩、肘、手首の力を抜き、指先を自然に伸ばします。指先を側線に合わせたり大腿前に置いたりせず、肩の力を抜いて自然に垂らすようにします。沈肩、含胸、鬆腰鬆胯、立身中正の要求を満たす事です。呼吸は自然にし、眼は平視目の高さ、力まず前方に置きます。

“開歩” 両足裏に掛かる重心を静かに右足裏に移します。同時に左踵は床から離れます。この時腰向きはわずかに右向きになります。（右胯関節に小さなAの運動が起きます。）

右向きの腰向きを正面に合わせます。左踵は更に床から離れ完全に虚の状態になります。（腰向きを正面に向ける時に右股関節は開くBになり、同時に右膝はゆるみ、B+の運動が起きます。）

左足先を床から離し、左横に運び、足先を着地させます。「点起点落」「軽起軽落」の要求に合わせます。左足先が着地したら右足裏を踏み押さえ、重心を両足中間点に移動させ、左足裏が全面着地して開立歩になります。

「開歩動作要領」

両脚に掛かる重心を右脚に落し込むように移し、穏やかに行ないます。

左脚を開くときは無理に広くしたり狭く規制しない事です。B+の運動で腰はゆるみ自然に開けば、自身の体型に見合った位置に平行に着地させる事が出来ます。開立歩で足先がずれる人は、小さな“A”と“B+”を確実に行なえば足先がずれるような事は有りません。肩幅を越えず、腰幅より狭くならない事が肝要です。

「注意点」

安易に右脚に体重移動すると足裏のバランスが小指側に偏り,開歩の際に右脚軸が不安定になります。小さな幅の重心移動であっても丁寧に行なう必要があります。左足先を着地させた後の重心移動は、右脚に踏み押さえる負荷をかけて、右脚軸の働きで左足裏を着地させる事です。左足踵を下ろしてから左脚で体軸を引き寄せる動作は誤りです。

「開立歩から起勢」

「動作と規格」

開立歩で両足裏にかかる重心は落し込むようにし、両手指先を少し下げるようにして沈肩・含胸の状態を作ります。この動作で両手は前方に向かって張り出し始めます。前方に張り出す意識を継続させながら、徐々に人差し指を軸に内旋させた手首が肩の高さに達した時に、掌背がほぼ平らになるようにします。肩の高さに上げた掌の指先はやや下向きです。指先を少し上向きに前方に伸ばすようにし、沈めていた肩関節を元に戻し（０の肩）掌根に意識を集めて人差し指を軸に僅かに外旋させながら腹前に押さえ降ろします。

「動作の要領」

開立歩からの起勢は、太極拳を始める大変重要な動作です。両掌を前方に張り出し、肩の高さまで上げる手法はこれから始める太極拳動作の速度を決めます。下方に押さえて起きる腰の高さは套路中の腰の高さを決める動作です。「心静体鬆」の要求に合うよう注意しましょう。起勢の動作で動き始める勁を、収勢の動作まで持続させる事が套路練習の最重要項目です。

「注意点」

両手を前方に張り出す時に、肘を伸ばし切らないこと。肩を沈めながら行なう事で、肘の伸ばし過ぎをコントロールしましょう。両手を押さえる時、手の動きより先行して腰を落としてしまわないこと。

両手が押さえ始め、腰の位置が下がる時、まず胯関節の折り込みが先行しないこと。坐り終わった時の姿勢が反り身になったり、臀部を後方に突き出さないために、胸部をゆるめて腰部の緊張を作らないように注意しましょう。「立身中正」は総ての根源です。