第三十回「如封似閉から十字手」

「動作規格」

①如封似閉の定式、両掌の前按から右掌を内側から右斜め方向に分ける動作を始める。両腕の内側から肘を張る様にし、両掌の人差し指内側を斜めに倒し肩を開く。左弓腿『Bの動作』で重心を中間点に移行させる。

②眼線を先行させ、南西45°方向に向ける。眼線に合わせて腰向きが変化し、左足先の扣脚が生まれる。左掌は元の位置で張り続け、右掌は肩の高さを保ちながら、右斜め、南西45°方向に開く。右足重心の移動に合わせて擺脚、右掌と同じく南西45°に開く。右弓歩型になる。

③分け開いた右掌を下方に押さえる様に弧を画きながら腹部前に降ろし始め、同時に左掌も下方に弧を画き腹部前に。眼線は動作に先行して南西から南東方向に水平に移動する。歩法は右足の『Bの動作』で重心中間点、左足が『Aの動作』に絡がり、右足先扣脚、眼線・胸向き共に南東に向く。

④左足『B+の動作』で身体向きは、真南に。両掌は右掌を内側に腹部前で手首を交差させる。眼線は正面(南)。腰の高さは弓歩時と同じ高さに保つ事。

⑤交差した両掌を尺骨側の外旋で、掌心内向きで胸の前に合わせる(左掌が内側になる)。この動作に合わせて膝を伸ばし自然に立つ。両足は肩幅の開立歩で十字手の定式となる。

「動作の要領と注意点」

①十字手の動作では重心の移動に伴う扣脚、擺脚、蹍歩と連続して表れます。重心移動に遅れずに動作をする事が肝要です。

②分け開く手法と下半身の扣脚・擺脚の歩法はずれ易く、扣脚の後の擺脚は遅れ易いものです。この一つの原因は如封似閉の定式の弓歩型の正確さにあります。この弓歩が左つま先重心の弓歩であると、扣脚の際に右足先に力が入り、擺脚のタイミングにずれが生まれ、遅れた擺脚になります。どのような場面でも正確な歩型が、次の動作の正しさを作り出します。総ての動作で充分に気を付けましょう。

③皆さんもきっと一度位注意を受けた事がある動作は眼線です。途中の動作で右弓歩に成ってから、次の動作で重心が左足に移行する時に、多くの人が眼線を下げてしまう事です。

『立身中正』、眼線は水平移動を必ず心掛けましょう。

④両掌を腹部前で交差する動作は、身体が真南を向く時です。身体向きが南東に残っている内に交差させてはいけません。

⑤定式に至る際は、両掌は腹部前で交差させてから、膝を伸ばして外旋する両掌の動きに合わせて自然立ち十字手の定式の意をはっきり表現します。次の収勢の動作に流れない様に気を付けます。

※残りは収勢と全般的な注意でまとめたいと思っています。

加藤修三