第七回「白鶴亮翅から左摟膝拗歩」

「動作規格」

①白鶴亮翅の定式(ていしき)から両掌の位置を変えずに、両掌を胸を中心に内側から張り始めます。肩に「0」の変化が起き、腰がゆるみ、両掌は身体の中心である正中線に寄り始めます。眼は進行方向正面に向けます。

②右掌はわずかに外旋させながら正中線に沿って下方に下げます。眼は右掌を見ながら行います。右掌を下げる動きに合わせ左掌が上方に上がって来ます。右掌と左掌が胸前で水平に並んだら眼を左掌に移し、外旋させながら掌心を右に向け手首を顔の前、肩の高さにに合わせます。右掌は下方に掌心斜め上向きで、右胯関節前に収まります。

③顔前に有る左掌を、前方に張りながら右斜め方向に移行させます。右軸足先の位置に到達すると同時に右掌は右斜め上方に上げ始め、手首を右肩の高さに合わせます。掌心斜め上向き、この右掌の動きに合わせた左掌は、胸前で人差し指付け根を正中線に合わせます。この動作の完了する時、腰は緩み、左足は右軸足に寄ります。眼はこの段階で、左掌から右掌へ移します。

④眼は進行方向に向け、左脚は適切な横幅をとり足を送り踵を着地させます。上歩と同時に、左掌掌根に勁を集め、正中線に沿って腹部前を押さえます。この左掌の動きによって右掌は指先が右耳あたりに収まります。

⑤腹部前に押さえた左掌の位置を変えずに、前方に向けて張って行きます。この動作で右脚重心は中間に到達します。左脚に重心が移行し始めると同時に、右掌は手首をやや沈め座腕にして掌根に勁を集め、肩前よりやや内側中心方向に押し出します。右手の推掌によって腰向きが変化し、胸向きは正面に向きます。払った左掌は左大腿横に収まり、指先は進行方向に向き、勁は掌底に移行します。左摟膝拗歩の定式となります。

「動作要領と注意点」

①の動作で左掌が左方向にずれる動作が表れるのは、実の手「右掌」の手法に問題があります。手法は中心に合わせる時には腕の外側部を使い、背中が広がる感覚が無くてはなりません。腕の内側部を使ってこの動作をすると、右軸足が縒(よ)れてしまい、下半身が不安定になってしまいます。

②の動作では、右掌を下げると左掌が上がって来ます。両掌が水平に並んだら、左掌を上げる事で右掌が下がります。下げる(右掌)・上げる(左掌)→上げる(右掌)・下げる(左掌)の手法の虚実の転換の意志をしっかり持つ事が重要です。

③の動作に右掌を上方に上げる手法が有ります。この手法は斜め後方に開くのでは無く、上方への動きは下からすくい上げる意志が必要です。右掌が肩の高さに到達した時に、左掌の指先は右掌手首の方向に合わせてください。両掌の位置が正しいと摟掌で左掌を下げた時、右掌の位置が耳傍に寄って来ます。右掌の指先を右掌の意識で耳傍に動かしてしまうのは良くない動作です。

もう一つ③の動作で左掌を正中線腹部に下ろした時、座腕にした左掌の指先が進行方向から見て90度方向に置く事が大切です。指先が斜め後方を向いていたり、座腕が不完全では摟膝の動作を正しく行なう事は出来ません。左軸脚で右手に勁が有る場合の拗弓歩型は強い勁力を発揮する歩型です。左脚を上歩する時の適切な横幅は、身体に合った横幅を取る習慣をつけてください。

④の摟膝拗歩の動作内容は、左掌で払って右掌で推すと云う動作です。摟掌の勁は右脚から発揮し、推掌は重心が移行してからの右脚の踏み押さえから表れる勁力です。

正確な重心移動と軸脚の使い分けの意識を持つ事が重要です。