<質問>
『気を下げるとは、どう言う事ですか?』
方法が有りましたら、どうぞお教えください。
<答え>
気とは何なのでしょうか?
「心平気和」「気到力到」二十年くらい前、北京の中国武術院で練習する機会が有りました。練習場の壁面に、大変大きな文字で「心平気和、気到力到」の書が懸かっていました。心穏やかで気持ちが落ち着いている状態で、気が到る所に力が到達するという意味です。この書を見た時は、技術も未熟で意味は理解出来ても、身体で理解する事は出来ませんでした。「用意不用力」、意を用いて力を用いずの意ですが、共通する部分がある言葉です。
「意、気、力」まず意念が有り気が流れ、力になって表れると言う事です。このように太極拳の気に関わる熟語は数多く有ります。気と血は、一緒に流れる。こわばった力、稚拙な力は筋肉をこわばらせ血流を滞らせてしまう事になります。辞書には「気」の事を、「天地を満たし、宇宙を構成する基本と考えられるもの。またその動き。万物が生ずる根源。生命の原動力となる勢い。等など」大変大きな意味合いを持つものとして説明されています。
では、私達の身体に宿る気と、太極拳の運動の中にある気、どのように感じ取れば良いのでしょうか。臍下丹田、へそのやや下の腹部の事です。丹田に気が落ちれば気力がみなぎり、勇気が湧くと言われる部分です。
さて気を下げる方法を理解するためには、まず気を上げて見ましょう。足を揃えて立ち、肩を上にあげて息を吸って見ましょう。上半身が緊張し、腰もこわばり、足元も不安定な感じになります。反対に肩を沈めて、息を静かに吐いて見ましょう。上半身の緊張はゆるみ、足元の不安定感も消えます。揃えていた足を肩幅に開いて、同じ事をして見ましょう。足を揃えていた時よりも、更にゆるんだ感じがすると思います。足を開く事で、バランスが良くなり、腰のゆるみもはっきり感じ取れます。整理すれば、肩を沈め、胸をゆるめ(含胸)息を吐く事で気は下げられます。ただ気を下げる事は大切な事ですが、それだけでは太極拳的には十分とは言えません。下腹部「丹田」を上に引き上げるようにし、その後に、後背筋が引き下げられ、臀部が巻き込まれる「収臀」が起き、含胸が表れるようにした時、気力が充実して勇気が湧いて来ます。このような状態になって初めて武術的な意味合いを持った、「気を下げる」ことが出来たと言えるでしょう。