<質問>
『蹬脚を高く上げたいのですが、どうしたら良いですか?』
『もう一つ仆歩を低く行いたいのですが、コツなどが有るのでしょうか?』
どうぞ、お教えください。
<答え>
今回の質問は、蹬脚を高く上げたい、仆歩を低く決めたいと言う事です。太極拳をしている人のほとんどが望んでいる事かも知れません。
太極拳を始める以前の運動経験で、苦もなく脚を上げられ、仆歩を低く決める事が出来る人もいます。質問者が太極拳を選手指向で考えていて、大会で高い採点の評価を望んでいる人なのか、一般的な健康志向で考えている人なのか分かりませんが、高さに対する要求は次の通りです。
蹬脚の一般的な要求は、踵の位置が胯関節のラインより高い位置にあれば満たされます。武術的には、踵の位置が肩の高さ或はそれ以上高い事は必要ないと言われています。伝統楊式を例に取れば、蹬脚・分脚は腰の高さ、擺蓮脚も相手の腹部を攻撃出来る高さが要求されます。それ以上の高さは不必要と言われます。
ただ、大会などに出場する選手は、蹬脚・分脚が高いと有利な採点を得る事が有るかも知れません。
選手指向であってもなくても腿法の要求に合う練習訓練は、一般的には圧腿(ヤートイ)・柔軟運動・背筋腹筋の強化と下半身の強化を図る事をしている筈です。脚を高く上げたければ、圧腿のあとに控腿(コントイ)をする。柔軟運動の中に前後開脚時に前脚を胸の下に引き入れて、後に伸ばした脚の方に身体を預けるようにして大臀筋をストレッチする(これは効果的)。これらの運動を確実に根気良く続ける事が必要です。
それと私の指導経験の中で、脚が高く上がるのに効果が有る事に気が付いた事は、歩法の練習を沢山する事で脚の高さが上がる事がわかりました。しっかり軸脚に体重をのせる歩法、訓練はすべての動作の基本になる事なのです。上げる脚の柔軟さ強さと、支える脚の強さのバランスが良くなる事が必要です。
長拳の訓練をしている若い選手の人達の殆どが、脚を高く上げる事が出来ます。これは長拳の人達の訓練の中にある踢腿(ティイトゥイ)や弾腿(タントゥイ)などの訓練に有るのかも知れません。これは長拳の人に答えを聞く事が出来ればと思います。
次の『仆歩を低く決めたい。』、これは脚力と柔軟性、それと一番大切な事は仆歩の歩型を作る為の方法を確実に行なう事です。簡化二十四式太極拳の仆歩は転身左蹬脚の後に行ないますが、蹴った脚を収めた後に、腰の位置を低くして開歩をします。この時、身体の向きは軸脚の足先方向、眼法は鉤手(こうしゅ)の方向に合わせ、左掌を腹前に下げる時に、重心を更に右軸脚に移行させる事、ここまでは皆さんしている事だと思います。この後、腹前に下げた左掌の指先を左に開く時、右脚の胯関節を開く事(開胯)。この時体軸は、より右足踵に近づきます。
この動作で右膝を足先方向に張り出す動きを適切に行なえるかによって、仆歩の低さが決まります。この動作で膝の向きが足先に対して、内側にずれてしまうと、高い低いに関係なく歩型の強さは失われます。
蹬脚の高さも、仆歩の低さも、正しい方法を学び繰り返しの練習が必要です。太極拳の運動・動作は繰り返しの中で、初めて体得出来るものだと思います。練習方法が間違っていると、身体を痛めたり、悪い癖を付けてしまいます。正しい指導の元で、正しい練習をしてください。