‪歩法の基本No.3‬

今回は前回までにお話ししたAの運動とBの運動、もう一つのB+の運動についてお話しします。

AとBの運動は、足首と膝の固定が共通する条件でした。B+の運動は、胯を開いて行く運動の中に、膝につま先方向への動きが有ります。

例を挙げれば起勢の動作、開立歩で次の左野馬分鬃に移行する時、最初の運動は右脚に体軸を移動させるAの運動です。次に行なうのは胯関節はBの運動開胯です。この運動に合わせて右膝がつま先方向に張り出され、体軸が踵の上、体軸を支えるポイントに乗り、腰がゆるみ、左脚が軸脚の右脚に寄ります(収脚)。

次に右軸脚先から90°方向に上歩する為に、胯関節は開き、同時に右脚膝が張り出されて右軸脚先から45°位左方向に上体が開きます。体軸の位置を変える事無く、腰向きを変化させる事が出来、スムーズに上歩する事が出来ます。

ここでも腰を左に向けて等の感覚だけで、この動作を行なうと軸脚の膝がゆれたり、上歩時に右脚膝が内側にずれてしまいます。こんな動作をしてしまう人は沢山居ます。

この様な状態を続けて練習をすれば、必ずと云っていい程、膝関節を痛めてしまいます。

歩法の中でB+の運動は、大変に重要な役割を果たしています。

腰向きを変化させるだけでは、正しい軸脚を保つ事は出来ません。B+の運動が使われる箇所を、いくつか見つけてみましょう。

起勢からの野馬分髪は前述した通りです。この動作は簡化24式太極拳の套路中に表われる、軸脚先から90°方向へ上歩する動作のすべてに同じ要領が使われます。左攬雀尾からの転身の動作、右攬雀尾から単鞭、雲手からの二回目の単鞭、左右の穿梭の上歩時など、手法や方向は異なっていても軸脚の正しい状態の保持に、B+の運動は使われています。

蹬脚の軸脚を確立するのもAの運動と、次に行なうB+の運動で作ります。

どの動作も大変に重要ですが、進歩の動作中に起きる弓歩の定式からの后坐動作で、B+の運動を正確に出来るかどうかは、最も重要な部分かも知れません。

野馬分鬃、摟膝拗歩は套路の初めの部分に出て来る動作ですが、后坐動作がきちんと出来ない為に起きる問題は大変に大きいと思います。

套路の中で早い段階で出て来るこの二つの動作は、太極拳を初めて教わる時には、重心を後脚に移してと云われて教わります。これは教える側からも、それ以上の動作の要領の伝えようが無いからです。

しかし套路を一通り教わり、一人で套路を通せる様になったら、一つ一つの動作の動きに不自然な部分が無いか気を配る必要が有ります。

身体の持つ各部位の働きに関心を持たず練習を積み重ねて行くと、膝関節を痛めたりしてしまうのです。

身体の各部位の持つ状態を、自然に無理無く使っていても、自身の身体の動きを聴き取らなければ、内容の良い太極拳運動の修得は有り得ません。

太極拳を始めて十年位、否それ以上長い間練習している人でも、始める時に教わった体重を後ろにの言葉の摺込みのままに動作をしている人を沢山見て来ました。正しい自然な身体の使い方が出来るよう是非実行して見て下さい。