そけいヘルニア入院記録
私
はつゆき船長です。 はつゆき は愛艇。カナダ製のシーカヤック。名前の由来は複雑ですので省略しますが、時々これで琵琶湖を彷徨っています。48歳。 サラリーマンで管理職。
この歳で初めて手術を経験しました。大した手術ではありません。日帰りOKなんてホームページもあったりします。(ほんまかいな と思いますが) 同様の痛みの最中の皆様に、お役に立てればと記録を思い立ちました。
病名は そけいヘルニア(鼠径ヘルニア)です。 脱腸です。いまいち、ドン臭い感じです。 腰ではありません。(腰、もう良いのですか? と随分言われましたが・・・)
出会い
私が 「そけいヘルニア」 と出会ったのは、1年位前でした。 何か時々お腹が痛いなそれも右下腹ばかり。 しばらくするとケロッとするので盲腸じゃないし、ま 判らんなで済ませていました。 3ヶ月経った頃でしょうか、駅までの通勤に支障が出てきたので思い切って病院へ。
は 「右下腹が時々痛いです。お腹の中で髪の毛を引っ張られるみたいな痛さ・・・ 時々中でずりずりっとします」
Dr 「今 痛いの?」
は 「いえ、今は何ともないです」
Dr 「うーん、盲腸ちゃうしなあ・・・ また痛くなったらお出で」
体よくあしらわれてしまいました。痛いとき、すぐに来れへんっ ちゅうに・・・。それから3ヶ月、仕事で徹夜し30数時間ぶりに外の空気を吸って、最寄り駅まで歩いていたところ、途中で動けなくなってしまいました。その場で休憩15分、恥ずかしかったのでさりげなくじっとしていました。その週末、なんと朝から痛い! これはチャンスと病院へ。
は 「今 痛いです」
Dr 「ほー うーん これは外科や。脱腸ちゃうか。今日は外科の先生居るんで、外科に並んで」
少し、頼りない気がしましたが、1歩前進と外科へ。
Dr 「はい、ズボン下ろしてねー。ちょっと触るよ。 あーヘルニアですね」 明るく言われた。
Dr 「手術しかないですね。放っておいても変わりませんけどどうします? 生死には関わりませんよ」
これをインフォームド・コンセント と言うのだろうが、なんか割り切れないと思うのは私だけだろうか。 ともあれ、変わらないは困るので、その場で1ヶ月先の手術を予約した。 でもその1ヶ月間は結構大変だった。駅まで歩くだけで激痛。電車に乗っても立っていられない。(けど座れないので、吊革にぶら下がるのみ。恥ずかしいから普通にしていたいけど痛みで汗は出るし耐えるだけ) 出社しても痛くて口聞けず、1時間位は大人しい有様でした。 座ると元気になってゆくのですよ。この病気?の不思議なところは。
入院1日目
入院した日は元気、病棟ナースはユリちゃん(勿論 仮名)。 結構かわいい。 OP室付ナースが説明に来てくれる。女忍者みたいだ。目しか見えない。でもきれいっぽい。 内容はいまいち判らん・・・。
ユリちゃん 毛剃りに来る。とても書けない。後は毛だらけ (げっ)。とても みじめー な感じの仕上がり。シャワーにも入れた。車椅子対応でだだっ広い。寒々しい。
夜から絶食。4人部屋で「全国の変わったもの 食べたか?」で盛り上がる。長女が突然やってきて ”ウォーリーを追え 歴史版”の絵本を残して去る。「可愛い娘さんですやん」 「ちゃんと父娘の会話、ありましたやん」 外野はうるさい。
入院2日目
朝はヒマ。腹減って頭痛い。ユリちゃんいろいろ説明に来る。が、10時過ぎ、ユリちゃん突然 『浣腸』に来る。(そんなこと言ってたっけ・・?)
ユ 「浣腸しまーす」
は 「えーーっ?!」
ユ 「ハイ 横になってー」 ブチュブチュー ぐおー
は 「いたたー、 いたー」
ユ 「うーん 痛いかなあ じゃあゼリー塗りますねー」
は 「いたたー、 いたー」 ブシュー ブブブ
ユ 「ハイ 5分我慢してくださいねー。トイレ、リザーブしてあるから大丈夫ですよお」
我慢 と言われても限界あるわな。結局 3分で降参しました。11時過ぎ、ユリちゃん 手術用点滴に来る。
ユ 「手術用なんで、針 太くて 痛いんです!」
は 「はあ」
念入りに私の左腕をチェック。 ひっくり返したり、斜めに見たり・・・。
ユ 「うーん 難しい手やなあー」
は 「そう言われても・・・」 で、
① 手首外側でトライ → 点滴が流れるとズキズキ痛む。
ユ 「ずーっとするから、痛かったら拙いですねえ」
② 手首内側でトライ → もっと痛くなった・・・
③ 手首内側上流でトライ → OK、全然違う。
ユ 「これが最後の動脈やったんですう。下手でごめんねー」
でも、結果的に この痛かったのが、いろいろ救ったのだ! ユリちゃん 恐るべし。間もなく手術着が届く。マジックテープで分解出来るようになっていて、便利だけどすぐバラバラとはだけるには参った。
30分後、ドクターの説明 with点滴。今まで入院したことなかった私にとって、点滴連れての散歩は一種、憧れでした。勿論、今ではイヤです。
ドクターは隠密の棟梁のような風貌。器用な人で(外科医ですから不器用は困るけど)右でも左でも字が書ける! どう使い分けているのか見極めようとしたけど判らんかった。
病室に帰り、筋肉注射する。麻酔の効きを良くする為とか。 痛いですよー と言われたけど、ユリちゃん点滴に較べたら屁でもない。
12:55 車椅子に乗って出発進行。赤ちゃん帽子?みたいなのも被ったけど、何のためだったんだろー? 何だか新鮮。
OP室
OP室に着いて、そこからは歩いて入る。 名前・手術名 を確認喚呼。手術台には歩いていって、自分で上ります。きれいなOP室ナースさんが あーしてこーしてと説明。 OP室 広い! 明るい! UFOの船内みたい!
取り敢えず、仰向けに寝る。毛布とか、いろいろ掛けてくれる。
「手術着 取りまーす」 「ハイ」 ベリベリベリッ
「ちょっと背中浮かせてー」 「ハイ」 ベリベリベリッ
「前の方も 取りまーす」 「ハイ」 → 何のために着たんだろう・・・。
「帽子も取りまーす」 「ハイ」 → 益々 ?。 この時点でパンツ一丁!。
ドクター棟梁 登場。
Dr 「船長さん じゃあ 予定通り、ヘルニア根治術 行いますね。 何かあったら言って下さいねー。」
ヘルニア根治術?、 やっぱ忍術か? 執刀ドクターは2名。 Dr.棟梁と若手の忍者ではなくドクター。
OPナース 「麻酔しますんで、横向いて下さい。でんぐり返りの格好ですよー」
は 「ハイ」
OPナース 「落ちないようにねー」
は 「ハイ?」
数名がかりで押さえつけられて丸くなる。 「背中 消毒します」 随分念入りに消毒する。
Dr 「目印 付けまーす」
は 「はい (なんのこっちゃ?)」 しばらくして、
Dr 「じゃあ麻酔します。痛いです。ちくっとします。」
ちくっ ぶすっ くそっ 何の、ユリちゃん点滴に較べたら楽勝よ・・・。(注:実際は、結構痛いです。背骨の間に打つみたいで)
2,3分ずっと麻酔注射が続く。なんぼ程入れんねん・・・。
Dr 「今 入ってますからねー」
は 「ハイ (判ってま)」
再び、ねんね。左腕には点滴、右腕には血圧計。 「心電図も付けまーす」 とベタベタ電極貼られる。手術台には電気毛布が敷かれていて、上半身にも掛けてくれるが、寒くなってくる。左右の掌の下には、点滴液をレンジでチンして暖めたものを敷いてくれる。
Dr 「じゃあ 下着取りまーす」
は 「ハイ (ご自由に)」
スーッと遠くで脱がされる感覚。麻酔が効いてきて足が痺れてくる。
Dr 「お腹に衝立、立てますね」
は 「???」 仕切り板みたいなのが本当にお腹に立てられた。
Dr 「では麻酔チェックします」 COOL! 外科医はカッコいいな。
「これ感じますか?」 針で胸からお腹をツンツンされる。
は 「いてっ」 「あまり感じません」 「よく判りません」
この頃からとても寒くなり、歯の根が合わない。
は 「すみません、寒いです。肩とか」
OPナース 「寒くなる人居るんですよ。大丈夫ですよ。電気毛布の温度上げますね。」
肩にも掛けてくれる。 やさしいなー。
Dr 「また麻酔チェックします」 ツンツン 「これ、どうですか」
は 「感じません」 「ちょっと感じます」
この後、ツンツン攻撃が5分くらい続く。 Dr 「良く効いてますよ」
Dr 「シート被せますね」
は 「? はい」 衝立に布が被せられる。意味不明。
Dr 「下半身 どうですか」
は 「臍から下が、遠くに行っちゃったみたいです」
OP開始
お腹のところがどんな状態か皆目判らないけれど、医師2名、ナース3名が集合。「ライト付けまーす」 「OP台ちょっと上、 動きますよー」 「じゃあ、始めます」 テレビでやってるみたいに、みんな顔を見合わせて「お願いします」 ライト カッ カッ!かっこいい~。
やっぱ、寒い。OP開始時には、やさしいナースさんが手を握ってくれたけど、忙しいらしくすぐ離れてしまった・・・。
は 「すみません、手が寒いです」
OPナース 「あー じゃあもっとチンしましょうね」
と 点滴液ホット を二つ掌に載せてくれた。 ま、いいか・・・ あったかいし。OP室には ピン ピン ピン ポーン と機械の規則音とOPナースが血圧等を読み上げる声が響く。 「115 68、2500・・・」
「はい ○×△」 「はい 消毒」 医師同士の会話は聞き取れないけど進んでいる。血圧計が1分おきに右腕を締め上げるのが結構痛い。お腹の上を握りこぶしでグイグイ押さえつけられている感覚。遠くの出来事のような。ふと時計を見ると、もう 13:40 早っ。
OPナース 「順調ですよ」
は 「はい」
ピン ピン ピン ポーン, 105 61 2040 ・・・ 時が流れる。血圧の上限が90位で行ったり来たり。
は 「こんな低いの初めてです」
OPナース 「まあ多分 大丈夫ですよ」
は 「ふむふむ ・・?」
「○△×」 「はい 消毒」 「今、切ったとこ 縫ってるとこですよ」「ハイ」相変わらず、グイグイ押される感覚のみ。13:55 定刻。
Dr 「船長さん、予定通り 終わりました」
は 「有難うございました」
Dr 「どんな感じですか」
は 「何も感じません」
OPナース 「ほんなら今のうちに拭いときましょう」
と、多分、お腹を清掃してくれる。
は 「今、足ってまっすぐですか? 膝が立ってる感じですけど」
Dr 「まっすぐですよ。 曲がってるとか落ちてるとかいろんな事言う人居ますけどね」
血圧計外れる。やれやれ・・。 心電図も外れる。 で、これからどうするんだろー と私は思った。とても立てない、歩けない。
移送
OPナース 「横に ホニャララ(台車みたいなやつ)来ますから、そこに移しますね」
は 「ハイ (どうやって?)」
実際は横付けした台車?に、手術台に敷いていたパットごと、ドクター・ナース総掛かりで持ち上げて移すだけだった。
は 「重いっすよー」
OPナース 「大丈夫ですよ、力! ありますから」
せーの よっ 、せーの よっ 、 おっと そっち! よっしゃ! OK! 極めて原始的でした。
Dr 「船長さん、予定通り、きれいに出来ましたので大丈夫です。お疲れ様でした」
は 「(そちらこそお疲れで) 有難うございました」
で、そのまま外にゴロゴロ、カミさん、ユリちゃんお出迎え、ゴロゴロ 天井しか見えん。
再び病棟
基本的にどうすることもできない。足があるのかどうかさえ判らない。動かすと言う感覚も解らない。因みに、台車からベッドに移すのも せーの よっ せーの よっ よっしゃ でした。ナースは力仕事です。約2時間後、 シャーベットの一角が溶けるように、左の膝頭が動き始めた。時間とともに少しずつ、左足が溶けてくる。右はまだ感覚なし。背中がとても強張る。嫌な感じ。動かしたい。 結局左右とも動くようになったのは3時間以上あと。この間が一番辛かったかも。
病棟ナース(ユリちゃんではなく、ややパワフルな人)からその後をいろいろ説明。17:30頃、ユリちゃんがお茶を飲ませてくれる。18時には「おかゆ定食」が出たけど、とても食べる気にならず、半分カミさんに食べてもらった。カミさんは、この日、朝から夜までずっと居てくれた。ありがとう。
夜
20時頃、痛み止め注射をお願いする。(座薬は丁重にお断り) 痛いですよーと言われたけど何のこれしき、本日6本目の針刺しはどうって事なかった。でも、痛み止め、あまり効いた気がしない。一度自力でトイレに行こうとしたけど、立ち上がってみたら足に力が入らず、パワフルナースさんに止められた。
痛みは変わらないけど、強烈な眠気。20時過ぎから夜中まで1時間単位でぐっすり睡眠を繰り返す。夜半前に再度 トイレチャレンジ。 行き着いて用は足せたものの、紙オムツが上手くつけられない。 結局パワフルナースさんにレスキュー依頼。とても恥ずかしく、情けなかった・・。
入院3日目
術後、ワンピース風パジャマ+紙オムツ でしたが、何か変なので朝着替え。パンツ穿くのが大変。痛み止め注射は、やっぱ少しは効いていたんだ と実感。リハビリと思って、5階病室から1階まで降りて、階段で上ったりしたけど、結構痛い。ナースさんには 「それ結構高度な技です。寝てた方がいいですよ」 と言われた。頭も痛いし。
回診時に、傷口を透明フィルム貼りに変更。初めて傷口見た。昨日のOP室ナースさんがフォローに来てくれた。「どうですか?」
は 「あの暖かい点滴液 助かりました」 やさしーな、いーな。
薬剤師さんも説明に来る。点滴と薬について。 いろんな人が入れ代わり立ち代わり来てくれる。 ここは結構、よい病院かも知れない。病棟ナースさんも必ず、「ちょっと傷口見せてねー」と私のパンツの中を覗いて行く。「きれいですよー(でもちっちゃいわねー)」 と言われる(ようだ)。 この日の当番はなんと、病棟看護師長だった。食事まで持って来てくれたので「恐れ入ります」と言ってしまった。
入院4日目
朝、巡視のナースさんに、「足の付け根のここ 痛いです」と申告したら、「ふーん 、印つけときますねー」 とマジックで × 付けられた。 うーむ。回診のドクター棟梁に、何とか退院OKもらって、この日の夕刻、退院できました。皆様、有難うございました。
その後
翌日から出勤を目論んでいたのですが、到底歩ける状態ではなく、週末と絡めて、結局術後、6日目に出勤となりました。ただ、縫ったところは(7,8センチ)結構痛いので、登山用のポータブルステッキを使って歩き、時間は普段の倍以上かかりました。お腹にメッシュみたいなのを入れたそうで、3ヶ月くらいは中でごわごわした感じが残っていました。今は丁度半年くらいになりますが、たまに「やっぱ入ってる」と感じる程度で違和感ありません。運動もOKです。ただ、根本的に治療したわけではないので、時々痛みはあります。手術前ほど、酷くはないといった感じです。
どういう条件で腸やら何やらが「脱して」ゆくのか解りませんが、経験上、過労状態のとき、長時間立ちっぱなしのとき、力仕事したとき になり易い気がします。個人差もあるようで、同病室に同じ手術の人も居ましたが、その方は、痛みは全くないと仰っていました。腸やら何やらの「脱し方:落ち方?」で随分症状が変わるようです。
痛みを堪えている方がいらっしゃる場合、是非、手術をお勧めします。放っておいても改善はしません。
また、私が言うまでもないですが、ドクター・ナースの仕事は大変です。私が「先生」と呼ぶのは「医師」と「教師」だけですが、ドクターやナースには本当に「師」を付けて良いと思います。改めて感謝したいと思います。
IT関係の仕事をしている割には、工夫のない雑なコンテンツで恐縮ですが、最後までお付き合いくださり、有難うございました。
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