Coplanar waveguideを用いたESR
PPMSを外部制御して測定するためのプログラム(C#)(測定器が壊れても、一切の責任を負いません)
測定にはKeysight technologiesからデモ機として借りたE5080Bと、OISTの共有装置であるPPMS Dynacool 9を使いました。
当方ではKeysightのVisaを使っていますが、IVIが策定・作製した共通のものしか使っていないので、他社の出しているものでも使えるはずです。
ライブラリはVisual studioだったら、ソリューショネクスプローラー内参照から追加して使用可能になります(入門書にはそういった事が書いてなくて、半年ぐらいプログラムの勉強を塩漬けした記憶があります)。
Quantum DesignのPharosから制御プログラムのライブラリ(QDInstrument.dll)をダウンロードできます。
path: browse » folders » customer area » integrating 3rd party instruments onto qd systems
file name: QDInstrument_LabVIEW.zip
PPMS側では、サーバーを立ててLAN経由で制御信号を受け取るようにします。
localhostで接続すれば、PPMS制御コンピュータだけで閉じた測定系になると思います。
サーバーのプログラムは、QDInstrument_LabVIEW.zip内のQDInstrument_Server.exeです。
C#を使っているので.NETのサンプルを見ていたのですが、LabVIEWのサンプルの中にしかサーバープログラムがないという罠に3日ぐらい引っかかていました。非常に不親切。
単電子の操作
幅サブミクロン長さ 20 umのGaAs系二次元電子系を微細加工しその細線上に幅 100 nm程度の金属細線を成膜して、tunable barrier pumpと呼ばれる量子ドットの離散準位を用いた単電子源を作製しました。
測定には師匠である荒川さんが作ったdipping probeと自作のI-V converter、発振器、Digital Multi Meterを使って測定しました。
400 MHz程度の高周波でも動作します。もっと高い周波数でも試してみるんだったと今では少し後悔しています。
高周波を用いた単電子遷移の検出
研修で、単電子操作とフィードバック制御をもとにした電流一次標準の実現を目指したプロジェクトに参加していました。
量子電気標準研究グループのホームページに解説有り: https://unit.aist.go.jp/ripm/qelec-std/ (自分のサンプルが載っていて嬉しい!)
研修期間は、二重量子ドットにおけるファノ効果の実験と同期間です。
測定セットアップは二重量子ドットにおけるファノ効果の際とほぼ同様ですが、下の方にも電極があります。
下部の量子ドットやQPCの抵抗は上部の二重量子ドット内の電荷の影響を受けるので、電荷遷移の検出が可能です。
PCB上の共振回路と合わせて、高周波動作する電荷計の実現を目指して研究を行っていました。
最終的には、高周波の反射を測定することで単電子の遷移を検出しました。
他所様かつ論文化されていない結果なので、図は不掲載(博士論文に載せてたり、学会発表していたりはしますが)。
二重量子ドットの電気伝導に現れるファノ効果
リーディング大学院と中村秀司氏(師匠)から資金援助を頂き、産総研の量子電気標準研究グループ(当時研究室長:金子晋久氏)で半年弱研究生活をさせていただきました。
その際にGaAs系二次元電子系からなる二重量子ドットの電気伝導にファノ効果という電子の干渉に起因する現象を初めて観測しました。
Shota Norimoto, Shuji Nakamura, Yuma Okazaki, Tomonori Arakawa, Kenichi Asano, Koji Onomitsu, Kensuke Kobayashi, and Nobu-hisa Kaneko, ``Fano effect in the transport of an artificial molecule'', Physical Review B 97, 195313/1-8 (2018). [https://doi.org/10.1103/PhysRevB.97.195313]
測定系について
Lock-in Ampにて測定された電気伝導度
左側が通常の二重量子ドットの電気伝導で、
右側がファノ効果が観測される領域(ファノ領域と呼称することにする)での二重量子ドットの電気伝導である。
違いはゲート電極に印加されている負電圧の大きさ。
通常の領域ではポテンシャルバリアによる電子の閉じ込めが強いのに対し、ファノ領域では比較的閉じ込めが弱い。
弱い閉じ込めによりSourceとDrainを直接繋ぐような結合の強い準位(連続準位)が存在し、離散準位を透過した波動関数と結合の強い準位を透過した波動関数が干渉しファノ効果が発現したと考えられる。
量子ドットにおけるファノ効果は、東大物性研の勝本研大塚氏(現東北大准教授)による解説があるのでそちらを読むと理解しやすい。
https://kats.issp.u-tokyo.ac.jp/research/FewElectronFano.html
大塚氏の系では離散準位と連続準位が空間的に離れているのに対し、我々の系では同じ空間を共有していて波動関数の空間的な広がり方が異なる。
我々の系の物理的描像が下図であり、閉じ込められた電子の波動関数と二重量子ドット全体に広がった波動関数が存在すると考えた。
物理的描像をもとにモデル化したものが上図の下部である。
このモデルをもとに計算を行って得られた伝導度の表式をつかって実験データの再現を試みたのが下図である。
なお、計算は当時阪大で准教授をされていた浅野氏(現在は阪大の教授)にしていただいた。
計算を追って丁寧に間を埋めたものが博士論文に記載されている(論文化を行っている箇所があるため、2020年3月時点で未公開 論文化されたので、博士論文公開中!)。
定性的な一致をしており、想像した物理描像(二つの離散準位と全体に広がった一つの連続準位)は実験データを説明できた。