前回までは夫側からの記録であったが、今回は妻側から見たペルー出張の記録を書いてみる。
ペルーへの出張は子供が1歳4ヶ月の時だった。Wさんのペルーのフィールドに共同研究者として参画することになった。私の専門は古人骨などの遺物のDNA分析だが、結果を解釈する上で、実際にフィールドに赴いて遺跡や現場を見、また実際に様々な資料を観察することは重要である。現地に行きますか、とWさんから聞かれ、子連れでも良いですか、とうかがってみたのがこの出張の始まりだった。
もちろん、出張は大人だけで行くのが楽だし仕事も沢山できる。わざわざ子連れ出張する意味はあるのか、という意見も聞いたことがある。しかし子供を置いていくなら、誰が面倒を見るのだろう?誰かが面倒を見てくれる時もあるが、様々な理由で親や配偶者の助けが得られなかったりと、家庭にはそれぞれの、その時々の状況がある。特に授乳中の母親は、授乳を急にやめると胸が張ったり乳腺炎になったりするため、子供から長期間離れるのは難しい。また、ミルクや搾乳などで対応することで、子供を置いて出張することも不可能ではないが、子供側がおっぱいなしの生活を受け入れられない場合もある。大変になると分かっていても、子連れで出張に行くか、あるいは出張に行かないかの選択を迫られることがあるのだ。私達は夫婦で研究者のため、様々な事情を考慮して、今回は子供を連れて、家族でペルーの出張に行くことにした。
ペルーへの出張が決まってから、練習も兼ねて台湾、ベトナムへと旅行した。子供は生後5ヶ月でパスポートを取得した。台湾は当時住んでいた沖縄から1時間と、沖縄ー東京間より近く、気候や文化も日本に近いので、旅行の大変さは国内旅行とほとんど変わらなかった。ただ子供から感染った風邪のため夫の体調が悪くなってしまい、ほとんど部屋と周辺で過ごした1日もあった。近場の台湾ですら、体調が悪ければ大変な旅になってしまう。当たり前だが出張や旅行は親と子の体調によって大きく左右される。対策としては日頃から睡眠を良く取るなど、できる範囲で備えるしかない。台湾と比べてペルーは遠く時差も大きく、苦労するだろうなということが予感された。
ベトナムでは現地に住む友人が同行し、旅程を考えたり通訳をしたりしてくれたほか、一緒に同行してくれた運転手も赤ちゃんの扱いに慣れており、比較的快適な旅だった。この旅行の際は子供があまり現地の食事を食べない時もあり、レトルトの離乳食は必ず沢山持っていくべし、ということがよく分かった。また、ペルー出張の際もそうだったが、出張・旅行の際には現地に詳しい人が同行してくれると本当に助かる。何かと不安要素の多い子連れ出張の難易度がぐっと下がる。特に私達は現地の公用語(ベトナム語)が話せなかったので、友人を頼りにしきりだった。
2つの海外旅行を終え、本番の目的地ペルーへの最初の難関は飛行機だった。日本からペルーへの直行便はないので、ロサンゼルスで乗り換えで、滞空時間は10時間+9時間というほぼ1日がかりのフライトになる。機内でアニメや映画などを見せても、私たちの子供は (まだ年齢が若かったこともあってか) 集中力がそれほど続かず、ずっと見続けてはくれなかった。飽きてぐずっては、抱っこされたり歩いたりして機内を行っては戻ってきたり、お菓子を少しずつあげて間をもたせたり、授乳して大人しくさせたり、あの手この手で機嫌を取った。どうやって時間を過ごしたのか詳しくは思い出せないけど、まさに「時間を潰す」という感じで、あと何時間あるのか…早く到着してくれ…!と思いながら過ごしていた。同行者のNさんが差し入れてくれた、子供向けの雑誌には本当に救われた。私達もこういう雑誌を何冊か買い込んでおけば良かった…と後悔した。子供の年齢にもよるが、子供向けアプリをいくつかインストールしたiPad、新しい雑誌数冊、おもちゃ、食べるのに時間のかかるお菓子(ひとつずつつまんで食べるぼうろ、サッポロポテト、ベビーラーメンなど)は持って行った方が良いなと感じた。機内では騒音が大きいので、子供の声やおもちゃで遊ぶ音があまり響かなかったのは良かった。また、私たちの子供はおっぱいが大好きで、授乳すればともかく泣き止むし眠ってくれるので、そういう意味では助かった(が、なんでも授乳で解決するのが果たして良いのかは分からない)。バシネット(赤ちゃん用の吊り下げベッド)がある席を予約したので、寝てからは使うこともできたが、機内の揺れのためシートベルトマークが点灯し、寝ている途中でバシネットが使えなくなったり、寝返りがうまく打てなくて子供が起きてしまったりと、不便な部分もあった。結局は子供が眠っている間も抱っこしながら過ごす時間が多かったように思う。
首都リマに着いてからは現地に慣れたWさんが案内してくれ、時差ボケがありながらも比較的ゆったりと過ごすことができた。リマからは次の日また1時間程度飛行機に乗ってカハマルカに移動し、そこから車で半日移動してクントゥルワシに着いた。同じ車に乗っていたのは私と夫とKさん(女性)だったので、車中での授乳もしやすかった。クントゥルワシでは博物館の目の前の宿泊施設に泊まり、ようやく長旅が終わった。(つづく)
宿泊施設の前でほうきとちりとりを持って遊ぶ子供