(2025年6月25日)
京都大学大学院農学研究科 神川龍馬の個人ホームページになります。研究内容や論文、学会発表などの記録に使用しています。研究室のホームページはトップページ | 海洋分子微生物学研究室 (kyoto-u.ac.jp) です。
contact: kamikawa.ryoma.7v[アット]kyoto-u.ac.jp *[アット]を@に変換してください
NEWS
250901 卒業生の武部紘明博士を筆頭著者とする論文「Viral infection to the raphidophycean alga Heterosigma akashiwo affects both intracellular organic matter composition and dynamics of a coastal prokaryotic community」がmSystems誌にアクセプトされました。神川は共著者として参画しています。藻類のウイルス感染は細胞内の代謝産物組成を改変するため、海洋の生態系に影響を与えます。本研究では赤潮藻H. akashiwoのウイルス感染により、周囲の細菌群集がどのように影響を受けるのかミクロコズム実験により検証しています。
250705 University of East Anglia(UK)のLongji Deng氏を筆頭著者とする論文「A genetic transformation system for the heterotrophic diatom Nitzschia putrida (Bacillariophyceae)」がJournal of Phycology誌にアクセプトされました。神川は共著者として参画しています。非光合成性珪藻Nitzschia putridaのゲノム解読論文(Kamikawa et al. Science Adv 2022)に続いて、本藻の遺伝子操作技術の開発を行いました。これにより、さらに光合成能喪失後のオルガネラ機能進化を実験的に検証することが可能となります。
250615 日本学術振興会特別研究員RPD(京都大学)の石井悠博士を筆頭著者とする論文「Positive selection of a starch synthesis gene and phenotypic differentiation of starch accumulation in symbiotic and free-living coral symbiont dinoflagellate species」がGenome Biology and Evolution誌にアクセプトされました。神川は責任著者&最終著者として参画しています。サンゴは刺胞動物と光合成する褐虫藻と呼ばれる藻類が共生して成立しています。しかしその共生関係成立によってどのようなゲノム進化・遺伝子進化が褐虫藻に生じたのか、結果的に細胞機能がどのように進化したのかはまだ良く分かっていません。今回、複数の共生性褐虫藻のゲノムと自由生活性褐虫藻ゲノムの相同遺伝子を網羅的に解析したところ、共生種のデンプン合成遺伝子を含む35遺伝子が正の選択を受けていました。そこで共生している時の条件に類似する酸性・低窒素条件下で共生性種と自由生活性種のデンプン量を比較したところ、自由生活性種ではデンプン量が大きく変動した一方、共生性種では培養条件を変化させても安定したデンプン量を保持しており、共生性種特異的な表現型を示すことが明らかになりました。
250505 ダルハウジー大学(カナダ)の原田亮博士を筆頭著者とする論文「Complete mitochondrial genomes of ancyromonads provide clues for the gene content and genome structures of ancestral mitochondria」がJournal of Eukaryotic Microbiology誌にアクセプトされました。神川は責任著者&最終著者として参画しています。真核生物の祖先的な形質を推定することは、我々がどのような生物から進化したか遡る上で非常に重要です。今回、我々は深い分岐から進化したと考えられているアンキロモナス類のミトコンドリアゲノムを複数解読し、これまでに調べられたミトコンドリアゲノムのいずれにもコードされていなかった遺伝子やInverted Repeatsを含むゲノム構造を明らかにしました。本解析をもとに、祖先的な真核生物が有していたミトコンドリアゲノムの遺伝子組成と構造について議論しています。
250424 オンラインで公開済みであったWilliamson et al. 「A robustly rooted tree of eukaryotes reveals their excavate ancestry」が無事に誌面に掲載されました (Nature 640, 974–981)。ただNature highlight (https://www.natureasia.com/ja-jp/nature/highlights/130319)での日本語要約は神川が書いたものでも編集したものでもありませんが、大事な点が間違っています。「腹側に特徴的な捕食溝を持つ原生生物群(現生ではギアルディアやトリコモナスなどの寄生生物が含まれる)から出現した」ではなく正しくは「腹側に特徴的な捕食溝を持つ原生生物群(現生ではギアルディアやトリコモナスなどの寄生生物が含まれる)と同様の細胞構造をもつ祖先から出現した」です。
250409 元京都大学の西田志穂博士(2024年学位取得、現RITE)を筆頭著者とする論文「Microbial compositions in carbon monoxide anaerobic enrichment cultures using sediment from freshwater lake, Lake Biwa」がLimnology誌にアクセプトされました。神川は共著者として参画しています。琵琶湖は日本最大の面積を誇る湖であり、水温躍層の形成により夏場は底層が貧酸素となり、冬場は表層から底層まで好気的な環境となります。そのような環境下における一酸化炭素資化菌の存在を検証するため、琵琶湖湖底試料を培養およびメタゲノム解析に供し、潜在的CO酸化菌を検出することに成功しています。
250312 カナダ・ダルハウジー大学のKelsey Williamson博士を筆頭著者とする論文「A robustly rooted tree of eukaryotes reveals their excavate ancestry」がNature誌に掲載されました。神川は共著者として参画しています。真核生物はヒトなどの多細胞動物、陸上植物、その他多様な単細胞種を含みますが、真核生物の共通祖先が何に近いのかわかっていませんでした。本論文では、真核生物の共通祖先で既にもっていた(と考えられる)ミトコンドリア由来の遺伝子を用いて、真核生物の「根本」がどこにあるのか検証しています。最も可能性が高い「根本」の位置をもとに、真核生物の共通祖先がどのような細胞であったか議論しています。
250204 京都大学人間・環境学研究科のWang Feiさんを筆頭著者とする論文「A new type of photoacclimation to far-red light found in a newly isolated Neochloris sp. (Chlorophyceae, Chlorophyta) from Lake Biwa, Japan」がPhycological Research誌にアクセプトされました。神川は共著者として参画しています。太陽光は様々な波長の光が含まれますが、その中でも遠赤色光は多くの藻類にとって光合成に利用できない波長になります。本論文では、琵琶湖で単離されたNeochloris sp.が緑藻綱で初めて遠赤色光を唯一の光源として増殖可能な種であることが示されました。
250108 Charles University in PragueのTomáš Pánek博士を筆頭著者とする論文「An expanded phylogenomic analysis of Heterolobosea reveals the deep relationships, non-canonical genetic codes, and cryptic flagellate stages in the group」がMolecular Phylogenetic and Evolution誌にアクセプトされました。神川は共著者として参画しています。HeteroloboseaはDiscobaに属する単細胞真核生物系統であり、従属栄養性/寄生性、好気性/嫌気性といった多様な生態学的特性を示す種が含まれます。今回は本系統全体をカバーするように複数の培養株を世界中の研究者が持ち寄り、ゲノム・トランスクリプトームデータをまとめて解析することで系統関係を明らかにしました。