今年度のプログラムはこちらからご覧ください。
※ 28日最後に予定していたUlrich Kortenkamp先生の講演がキャンセルとなり,西浦孝治先生の講演が追加となりました。(8/21)
環境によってはプログラムが表示されない場合があるようです。その場合は,ブラウザを変更するなどしてお試しください。
あるいは,野田(noda@c.sci.toho-u.ac.jp)まで請求いただければメールでお送りいたします。
日時:2025 年 8 月 27 日(水)13:00 ∼ 8 月 29 日(金)12:30
場所:京都大学数理解析研究所 111 号室(ハイブリッド開催)
(発表者名の前の※はオンライン講演であることを示す)
12:45∼13:00 オープニング
13:00∼13:30 飯島康之(愛知教育大)
動的幾何ソフトやプログラミングを利用したときの「多角形の内角の和」についての探究事例
概要:「三角形の内角の和は180°」という命題を分度器で測定すると180°にならないことがあっても,それは「誤差」として処理してしまう。しかし,動的幾何ソフトを使うと,整数値で表示し,四捨五入するときには必然的に起こる現象として認識され,179,180,181となる確率を考えるきっかけとなる。3月にこれを中学生を対象とした提案授業を行った。これを四角形などに一般化するとどうなるかを検討してみると,中高生向きの興味深い数学的探究の事例として位置づけられる可能性を実感できたので,その様子を報告する。
13:30∼14:00 阿原一志(明治大)
マルコフ過程による安島=マルファッティの円の収束について
概要:本講演では、三角形の安島マルファッティ円の図に収束するような定常マルコフ過程を考え、その収束するための条件について考えます。今回はその第1段階として、三角形の内接円で同じ問題を考え、この場合には大部分解決できたことを報告します。
14:00∼14:30 前田陽一(東海大)
観るものと観られるものの双対性 — 簡単に描けて深い意味のある focal conics —
概要:2025年3月号の数学セミナーの「エレガントな解答をもとむ」のコーナーに出題した問題を取り上げ、問題の発端, 様々な解答や出題後の顛末についてGeoGebraを用いて紹介する. ものの見え方の中に美しい双対性が存在することも紹介する.
14:30∼15:00 大西俊弘(龍谷大)
三角形の諸心の軌跡や存在領域に関する探究
概要:三角形の頂点がある曲線上を動くときに、三角形の諸心がどのような軌跡を描くかについて考察する。また、1つの頂点と諸心の1つ(例えば重心)の座標が分かっているとき、他の諸心(例えば内心)の存在領域について考察する。
15:15∼15:45 ※ 松本昌也(市川中学・高校),清水克彦(東京理科大)
生成AIを用いた発展的に考える授業の考察 — What if not方略と実験数学を見据えて —
概要:中学校・高等学校において問題を発展的に考えることが重要視されているが、問いを立てる難しさが課題となっている。そこで、What if not方略において生成AIを使用し、問いを立てる活動を検討することで、実験数学や探究活動への支援への可能性を考えていく。
15:45∼16:15 ※ 木村桂馬,佐々木秀馬(日大理工院),丸山 晃汰,齋藤 耕太,利根川聡,平田典子(日大理工),鷲尾勇介(日大豊山女子)
Gamma values related to certain volume and heuristic trials via ICT
概要:Gamma 関数の値の比を,ある立体の体積に帰着させ,先行研究で示されたそれらの代数的独立性に帰着させて比の数論的性質を考究すること,及び,視覚化によって予想を立てることに数学ソフトウェアを活用した事例について論ずる.
16:15∼16:45 ※ 柴山将一,一瀬陽雲(日大理工院),齋藤耕太,鷲尾夕紀子,鈴木潔光,古津博俊,平田典子(日大理工)
The three distance theorem and a trial to show a proof relying on continued fractions by Mathematica
概要:The three distance theorem と呼ばれる数学の定理があり,様々な方法で証明されている.連分数という整数論の一分野における諸定理を組み合わせた証明に関し,数学教育の視点からの考察及び,その証明自体を数学ソフトウェアで説明する試みについて紹介する.
9:00∼ 9:30 渡辺信(生涯学習数学研究所)
グラフを描くことから読むことへ — カリキュラムの改革 —
概要:微分積分(数学Ⅱ)において関数のグラフを増減表を用いて描くことが重要な課題であり、グラフを描くことが目標となっている。現在グラフは数学ソフトによって関数を入れることによって見ることが可能になった。このグラフを見ることを出発点としたカリキュラムを作る。グラフを見て、そのグラフが語ることを読み取ることが重要になる。現在のカリキュラムはグラフを描くことが目標になっているが、この目標から出発するカリキュラムを提案する。
9:30∼10:00 芝辻正(芝浦工大柏中学・高校),牧下英世(大和大),高村真彦(東京工芸大)
数学教育における生成AI活用の可能性に関する一考察
概要:中学・高校における数学の学びの場面を対象に、生成AIの活用可能性を検討する。 学ぶ側に限らず、教える側の視点も踏まえて具体的な活用場面を考察する。
10:00∼10:30 横山重俊(国立情報学研究所)
実験数学を AI とやってみる
概要:近年、数学の研究・教育の双方において、実験数学の重要性が増している。とりわけ、SageMathやLMFDB、Jupyter Notebookといったオープンな数学ソフトウェア群に、大規模言語モデル(LLM)を組み合わせることで、数式処理と自然言語理解を統合した新しい研究スタイルが実現しつつある。本講演では、数論を題材に、数体に関する具体的な数値実験を、AIとの協調的な対話を通じて構築・検証する手法を紹介する。さらに、教育応用への展望などを含めて、「AIと共に数学を探究する」実践の可能性を論じる。
10:40∼11:10 ※ 増井貴明(雲雀丘学園中高)
高校数学における生成 AI を活用した moodle 小テストの効果検証について
概要:従来の紙媒体小テストをmoodle小テストに切り替えることで,授業進度や学習到達度の異なる生徒への柔軟な個別アプローチが可能となる。本稿では,生成AIを活用して作問した高校数学のmoodle小テストについて,同僚の複数教員から得られた問題や選択肢の妥当性および,生徒の学習動機づけや学力向上の効果検証について,ARCS モデルを参考にした質問紙調査の結果を報告する。
11:10∼11:40 ※ 清水克彦(東京理科大)
Invarianceの考えを育てる数学教育における数学ソフトウエアの活用
概要:数学における不変性(Invariance)は、数学の定理のほとんどに潜み、数学的考え方として、重要であるが、その価値に見合うほどの注目がされてきていない。ある変化に対して、不変な性質(Invariance)を見出すこと、変化の一方向での変化で不変な性質(Monovariance)を体験するために、数学ソフトウエアやグラフ電卓は適した環境を与えている教材を検討する。
11:40∼12:10 関口昌由(木更津高専)
数学学習アプリの開発
概要:高専低学年の数学における様々な単元をゲーム感覚で学べるアプリ開発に着手したので、その構想とプロトタイプを2,3紹介したい。
13:30∼14:00 小野恭輔,小林牧子,田中剣之介(熊本大),根上春(千葉大),堀哲郎(熊本県立盲学校),山川遼空(熊本大),簗島瞬(東京都立大)
Auditory Graphs for Stochastic Processes: A Case Study on Mathematical Accessibility
概要:The demand for data scientists has been rapidly increasing in recent years. However, visually impaired individuals face significant challenges in interpreting stochastic process data, which are frequently used in various fields such as finance. Addressing these barriers through auditory graph techniques could help expand career opportunities for visually impaired individuals. In this study, we evaluate whether auditory graphs, which map the vertical values of functions to variations in audio pitch, enable five visually impaired students from grades 5, 8, and 12 to differentiate between graphs of Brownian motion. Experimental results suggest that auditory graphs effectively convey the distinguishing features of Brownian motion, indicating their potential for supporting mathematical accessibility in stochastic contexts. Due to the small number of participants, this study should be regarded as a pilot study, and further research with larger sample sizes is required to confirm generalizability.
14:00∼14:30 安野史子(国立教育政策研究所),朝倉僚,宮澤寛,堀江利彦,土田洋一,伊藤雅充,山本高廣(株式会社ワコム),中川正樹(東京農工大)
電子コンパスの開発とそれを用いた作図調査
概要:電子コンパスの改良とそれを用いた作図問題の調査を実施した。その実践報告を行う。調査で得られたInk Markup Language (InkML)の分析結果にも触れたいと思っている。
14:30∼15:00 藤本光史(福岡教育大)
初等幾何 AI AlphaGeometry と Newclid の教育利用
概要:2024年2月に公開されたGoogle DeepMindによる AlphaGeometry と、2024年11月に公開されたLMCRCによる Newclid は、グレブナー基底やWu's methodなどの代数的手法でなく、公理的手法を採用した初等幾何AIであり、Human-readable な証明を出力する。ただし、利用には特殊な命題記述言語が必要である。講演ではこの命題記述言語と具体的な利用方法について紹介する。また、これらを用いた福岡県高校入試問題の証明生成実験および GeoGebra との連携についても解説する。
15:15∼15:45 鈴木正樹,鈴木朝陽(沼津高専)
KeTCindyJS と Maxima との連携
概要:KeTCindyJSは数学的可視化に優れたHTML教材を作ることができますが,演算が数値計算のため,実際は計算しているように見せているだけという場合があります.そこで,演算部分を数式処理システムであるMaximaに任せる形で,KeTCindyJSによるHTML教材を作成しました.本発表ではそれらの教材例と活用事例を紹介します.
15:45∼16:15 高遠節夫(KeTCindy センター)
Maxima と KeTCindy による和算の図形問題の教材化
概要:和算の図形問題は,図は美しいが実際に解くのは難しいものが多い.そのため,授業等で和算を取り上げる場合,学習者が実際に解くには至らず,歴史の講義を聞くだけの受動的な活動になってしまうことも少なくない.また,座標幾何によって立式した連立方程式を数式処理システムで解くにしても,通常の方法では長大な式になって,まず解を得ることはできない.そこで,報告者は,三角形についてm=tan(B/2), n=tan(C/2), 内接円の半径rの有理式で諸量を表して解くMNR法を考案した.この方法は高校1年レベルの知識がある学習者であれば,Maximaと報告者が開発したKeTCindyで多くの問題を解くことができる.ただし,円周角の定理や内角の二等分線の定理をMNR法で証明するなどして,ある程度習熟する必要がある.本講演では,MNR法とKeTCindyを用いた授業プランについて一つの提案をしたい.
16:15∼16:45 ※ 西浦孝治(福島高専)
数式処理を活用した算額問題教育プログラムの構築
概要:算額は江戸時代に額や絵馬に和算の問題や解法を記し,神社や仏閣に奉納したものである.福島県では最も多くの算額が現存している.学生がこのような身近にある算額の問題をMNR法で解くことによって,数学的思考力,表現力,プログラミング能力などを育成することが期待される.本講演では,算額問題教育プログラムの構築へ向けての実践報告をする.
9:00∼ 9:30 野田健夫(東邦大),北本卓也(山口大),金子真隆(東邦大)
HTML ベースのコンテンツによる数学協調学習のオンラインと対面での差異に関する分析の試み
概要:発表者はこれまでHTMLベースのインタラクティブなコンテンツを用いた探究学習について、学習者の活動から発生する活動のログデータを用いて学習プロセスを把握することを試みてきている。今回は、数理統計に関する学習コンテンツの状態をネットワークを通じて2名の学習者が共有する環境を構築し、オンラインでの協調学習を実施した。このデータを対面で同じ教材を用いたときのものと比較し、環境の違いによる学習プロセスの差異について検討する。
9:30∼10:00 菰田智恵子(久留米高専),高遠節夫(KeTCindy センター)
関数グラフ描画の自動採点システム:オンライン教育への応用
概要:数学教育において、学生は与えられた数式を正確に表現するグラフを描く課題によく取り組みます。本講演では、学習管理システム(LMS)内で学生が描いたグラフを自動採点するための新しい方法を提案します。本研究では、ベジェ曲線と大島スプライン曲線(ベジェ曲線から派生した変種)を特に活用し、動的幾何グラフソフトウェア「KeTCindy」を用いて評価問題を作成しました。
10:00∼10:30 長坂耕作(神戸大)
擬似対話型教材の設計と実践:階層型演習と AI 活用 FAQ 演習による深い学びの促進
概要:線形代数の授業においてLMS(Moodle)を活用し擬似対話型教材を用いた学習支援の実践を報告する。具体的には,Pythonで自動生成した問題をMoodleのLesson機能で段階的に提示し,選択肢に応じた助言を与える階層型MCQと,生成AIとの対話を通じてFAQを作成する演習を組み合わせている。発表では,教材設計の工夫,問題提示の例,学生アンケート結果,FAQの傾向,授業での活用方法を紹介し,深い学びを促す可能性について考察する。
10:45∼11:15 柴田季実花,福井哲夫(武庫川女子大)
大学基礎数学のための三次元グラフ作成ツールの開発
概要:数学教育にICTを用いることは学生の数的感覚を養うのに有用であり、文部科学省も推奨している。特に関数グラフを活用することは、抽象的な高次関数や空間図形の理解促進に繋がる。しかし、関数グラフ作成ツールは現在でも複数存在するが、数式入力に手間がかかるという課題がある。我々は、数式入力の手間を軽減するUIを導入した数学eラーニング環境を構築しており、大学基礎数学の授業で活用している。その環境は数学文書エディタや関数グラフ作成ツールおよび数学オンラインテスト機能を備えており、特に数式入力操作が一貫していることに意義がある。しかし、現在関数グラフ作成ツールは2次元グラフの作成課題にしか活用できていない。そこで本研究では、そのツールを3次元にも対応できるように拡張することを目指す。
11:15∼11:45 久保康幸(弓削商船高専),西浦孝治(福島高専),高遠節夫(KeTCindy センター,日本数学教育学会名誉会員)
KeTLTS への Algebrite の組込みと有効活用
概要:KeTLTS(KeTCindy学習データ送受システム)で作成するKeTTaskに,オンラインCASであるAlgebriteを組込み,学生が提出前の回答を単純な文字列一致や数値の一致でなく,式として判定できる機能を追加した。また,そのような提出前の判定がどんな教育効果を与えるのか考察する。
11:45∼12:15 亀田真澄(元山口東京理科大),宇田川暢(名古屋大)
Moodle STACK テストの学習データを用いた生成 AI(OpenAI API / ChatGPT)によるフィードバック・コメント生成の試行
概要:本発表では,高等教育における数学 Moodle 小テストを対象に,STACK により作成された自動採点問題の学習データを用い,生成 AI ツール「OpenAI API(ChatGPT)」によって自動生成されたフィードバック・コメントの試行的分析について報告する.特に,STACK 型 formative assessment(形成的評価)の学習履歴を活用し,総括的評価(summative assessment)における AI 活用の可能性を探るとともに,学生に対する個別的かつ有益なコメント提示の実現可能性について考察する.
12:15∼12:30 クロージング