Photon Block Project

■ はじめに(Introduction)

子供のころブロック玩具に夢中になった記憶はありませんか?我々はブロックの持つ機能は玩具にとどまらず、もっと様々な応用の可能性があるのではないかと考えました。例えば、有名なデンマークのブロック玩具であるレゴブロックは、すでに建築模型やロボット教育などに広く活用されています。

我々は専門の光科学分野におけるブロックの活用の可能性を探索する研究をはじめました。我々はこの光のブロックを「フォトンブロック」(光子ブロック)と名付けました。光子は光の量子のことで、英語ではフォトン(photon)といいます。フォトンブロックには2種類あります。一つはレゴブロックを用いた光学マウントシステム、もう一つは独自開発の光る透明ブロックです。

我々は2009年からフォトンブロックの世界展開を開始しました。現在、Nature Photonics, Optics & Photonics Focusなど欧米専門メディアを通じて、世界中の研究者に情報を発信しています。また、全国の大学や研究所とも連携をはじめています。世界中の人々にレゴブロックで簡単に光学実験を行ってもらえるようにしたいと考えています。ご協力いただける方は高原まで電子メールで連絡してください。

■ ブロック玩具の特徴(About Bricks)

ブロック玩具はゲームや人形遊びなどと異なり、一般に目的がなく自由度の高い玩具です。ブロックで何を構築するか、どのように遊ぶか、その人の自由にまかされています。ブロックを教育玩具に応用するにあたり、その点が科学実験キットとの大きな違いとなります。科学実験キットでは実験目的があらかじめ定められ、実験手順とともに提供されます。一方、我々が独自に開発している「光のブロック」は、目的のない玩具の一例といえます。我々は2つのタイプのフォトンブロックを開発してきましたが、(1)レゴブロックを用いた光学マウントシステムはブロックを科学実験キットとして用いる例です。また、(2)光る透明ブロックは教育玩具といえます。

科学教育で大切なことは知識の羅列ではなく、はじめに素朴な疑問をもたせ、それを理解したいと思わせるきっかけを作ることです。赤いプラスチックが赤く光っても、それはあたりまえです。フォトンブロックは透明なプラスチックが様々な色に光ることにより、色が予測できない意外性を通じて、「なぜ」という疑問をもたせます。

■ レゴブロックを用いた光学マウントシステム(Optical Mount System Using LEGO Bricks)

レゴブロックを利用して安価で軽くて持ち運びに便利な光学マウントシステムを提案しています。我々は特殊な部品を自作することなく、レゴブロックの基本的部品を用いて、直径1inchの光学部品を固定できることを示しました。レゴブロックがあれば世界中どこでも直径1inchの光学部品を固定でき、安価に光学素子のマウントが可能です。ちょっとした光学実験ならこれで十分です。下の写真はレゴブロック光学系の一例です。

手に入りやすいブロックとプレートだけを用いて1インチレンズのマウントが可能です。以下のリンクにPDFマニュアル(英語版)を公開しましたので、どなたでもご自由にダウンロードして利用いただくことができます。ただし、レゴブロックと光学部品は自分でご用意ください。現在ではインターネット上でレゴブロックを1個単位から購入が可能です(いい時代になったものです)。マニュアルでは組み立て方法はもちろんのこと、レゴの用語やレゴブロックを部品単位で購入できるサイトも紹介しています。

manual download

■ フォトンブロック 光のブロック、光の積み木

文字通りの光のブロックを開発しました。共同研究者の長谷川と萬関らによって開発された希土類錯体を用いて発光するブロックが完成しました(下の写真参照)。希土類錯体は発光効率が高く、毒性もほとんどなく、様々な透明プラスチックに混ぜることができます。希土類錯体を入れた透明ブロックは発光前はクリスタルガラスのように透明で、ブラックライト励起により発光させると、全体が均一に発光します。色素と違い、ブラックライト励起前には発光色がわからず、意外性や驚きがあります。

写真は近紫外LEDにより励起されて、発光するフォトンブロックです。光の3原色のブロックはキューブ状に組み合わせると混色がおこり、予期しないような色を示します。フォトンブロックの発光の写真が応用物理学会学会誌2007年1月号の表紙に採用されました。

■ 文献 (Papers)

"LEGO-Optics" in Optics & Photonics Focus Volume 6, Story 5 (web magazine).

"LEGO lightens photonics" in news & views, Nature Photonics, Vol.3, 7 (2009) 377-378.

高原淳一、萬関一広、小西毅,”フォトンブロック・プロジェクト” 応用物理, 76(1), (2007) pp.34-38. https://doi.org/10.11470/oubutsu.76.1_34

高原淳一、”光子ブロックを創る~プロトタイピングの試み”、大阪大学ベンチャービジネスラボラトリー、平成15年度年報(2004)pp.9-10.

高原淳一、川畑弘、長谷川靖哉、長山智男、小西毅、細川陽一郎、兼松泰男、小林哲郎、”光子ブロックって何?”OPTRONICS、No.254 (2003) pp.150-156.

高原淳一、”PBL奮闘記”、生産と技術、Vol.55 No.3(2003)pp.23-26.

■ 講演 (Presentations)

高原淳一:「博士のアウトリーチ活動~フォトンブロック・プロジェクトからみえるもの」、大阪大学OSA/SPIE学生チャプター 1st JS-NetS (Japan SPIE Network of Students) (開催地:大阪大学フォトニクスセンター) 平成23年6月11日(招待講演).

高原淳一:「レゴブロックを用いた光学マウントシステムII」、第57会応用物理学関係連合講演会 18a-J-3 (開催地:東海大学)平成22年4月18日 (2010).

高原淳一:「フォトンブロック~ブロックを用いた光学教育」、レーザーEXPO2009 レーザー技術特別セミナー 「LE-4 一日でわかる!光学素子入門」(開催地:パシフィコ横浜)2009年4月23日.

高原淳一:「フォトンブロック~ブロックを用いた光学教育の試み」、レーザーEXPO2008 レーザー技術特別セミナー 「LE-6 レーザー実用へ」(開催地:パシフィコ横浜) 2008年4月24日.

「輝く三原色 均一発光の透明プラ開発~阪大 理科教育向け」、日刊工業新聞 2007年7月30日.

(取材記事、”近紫外線照射で蛍光発光~野外広告や看板などへ期待”、総合報道2面(サイン・ディスプレイ専門誌)、2006年4月5日(水).

高原淳一、川畑弘、長谷川靖哉、長山智男、小西毅、兼松泰男、小林哲郎、「レゴブロックを用いた光学マウントシステム」、第50会応用物理学関係連合講演会 講演予稿集、No.1 (2003) 28a-P7-14, pp.1490.

(取材記事)”Back To The BLOCK~ブロックから広がる世界”、阪大ウォーカー、No.72(2003)p.23.

■ 現研究スタッフ(Staffs)

高原淳一 大阪大学 大学院工学研究科、フォトニクス先端融合研究センター

■ プロジェクトに参加いただいた方(The Former Staffs)

萬関一広 岐阜大学 (元大阪大学 ベンチャービジネスラボラトリー)

川畑弘 北海道大学 (元大阪大学 ベンチャービジネスラボラトリー)

長谷川靖哉 北海道大学 (元大阪大学 大学院工学研究科)

長山智男 大阪大学 大学院工学研究科

小西毅 大阪大学 大学院工学研究科

兼松泰男 大阪大学 産学連携本部(元大阪大学 ベンチャービジネスラボラトリー)

小林哲郎 大阪大学 名誉教授

上のコアメンバーのほか、多くの学部の大学生の協力を得て、フォトンブロックが完成しました。ここに記して感謝いたします。

■ サポート(Financial Supports)

2002-2003年度 阪大フロンティア研究機構(阪大FRC) プロトタイプ開発

2004-2005年度 経済産業省:中小企業地域新生コンソーシアム 光の三原色の発光するブロックを開発

2006年度 リフレッシュ理科教室(応用物理学会関西支部主催)での展示(8月および11月) link

2006-2008年度 日産科学振興財団 UV-LEDを用いたライトボックスの開発 link

2009年度 基礎工学研究科 未来研究ラボシステムに採択 LEGO光学系の開発