最終更新日:2025年4月13日
2025年度は一橋大学経済学部と慶應義塾大学商学部でゼミを開講しています。
来年度からは慶應義塾大学のみでの開講になります。
若森直樹研究会を検討していただき、ありがとうございます!
このページでは、若森研究会の概要や選考方法について解説しています。右に各項目へのリンクを記載しておきますが、選考方法以外にも重要な事項を多数含んでいますので、参加を希望する人は全て読んだ上で応募して下さい。
(参考情報:一橋大学の若森ゼミのゼミ生によるWebsiteはこちらをご覧ください。)
私の詳しいプロフィールについては、こちら(日本語)のページを参考にしてください。
もし皆さんが政府の方から「Yahoo!Japan が PayPay との合併を無条件で許してもいいでしょうか?」、もしくは、メーカーの方から「この新しく作った製品に価格をつけたいのですが、どのような価格が良いでしょうか?」などの質問・依頼を受けたら、どのように答えるでしょうか?
若森研究会で扱う実証ビジネスエコノミクス(一般的には実証産業組織論、Empirical Industrial Organizationと呼ばれる分野です)とは、上のような問いに対して、データを用いてある一定の回答を導き出す分野です。そのように聞くと、今はやりのデータ・サイエンティストと一体何が違うのだろう?と思われるでしょうが、私は明確に違うと考えています。と言うのも、(経済学で扱う)経済のデータは、実験できないという意味で自然科学のデータとは異なりますが、決してランダムに生成されているわけではなく、(消費者や企業という)経済主体が「効用最大化」や「利潤最大化」といった最適化という意思決定を行った結果として生成されています。よって、経済のデータには癖があり、それをうまく読み解くためには、背後に存在している経済主体がどのように意思決定を行っているのか?まで深く考える必要があります。
例えば、上の例の前者の問いであれば、Yahoo!Japan が PayPay が合併する際に、「誰が」「どのような」影響を受けるかをモデルを用いて考える必要があり、さらに、その影響をどのようなデータを用いて定量化するのかを考えなければなりません。後者であれば、目的関数(利潤の最大化)は明確なものの、その製品の業界ではどのような競争が行われているのか(価格競争なのか?ライバル企業はどの程度いるのか?競合している製品は何か?新商品の投入でライバル企業は価格を変えてくるのか?)などを理論的に考察し、データを用いて定量化する必要があります。
そのようなわけで、実証産業組織論を正しく理解するためにはミクロ経済理論(特に産業組織の理論)と計量経済学の深い理解が必要不可欠です。そこで、まず3年次には(と言っても、1年でマスターできるものではありませんが)、理論と実証分析の基礎の習得を行うことを目標に活動を行ってもらいます。ただ、それだけだと、筋トレだけを行い続けるのと変わりがない味気のない作業になってしまうので、まず夏合宿では経済学の一流の実証論文を読むことに挑戦してもらいます。その上で、3年次の後半には、(習得した理論と実証分析の能力を発揮できるような)論文をグループで執筆してもらい、11月末の三田祭でで発表してもらいます。
ただ、社会に出ると(もしくは研究者になると)問題意識やテーマを自分自身で設定する必要が出てきます。そこで、4年次にはそのような能力を高めるために、自分でトピックやデータを探して卒業論文を書いてもらいます。夏合宿で中間報告、年末には卒論発表をしてもらおうと考えています。
ゼミでの学習・研究スケジュール(2年間)
3年次4月~7月:基礎準備期間
産業組織論(理論)と計量経済学の基本を習得するために教科書の輪読を行う
実証分析のためプログラミング言語の最低限度の習得
3年次8月~9月(1泊2日程度):夏合宿
3年時前期で培ってきた基礎体力(ミクロ経済学と計量経済学の理解)をもとに、一流誌に掲載されている論文を読む
3年次9月~11月:応用
3年時前期で培ってきた基礎体力(ミクロ経済学と計量経済学の理解)をもとに、論文を輪読する
グループで論文を執筆し三田祭で発表する
4年次4月~7月
卒業論文執筆のためのトピック選定とデータ探し(夏休みに中間報告を行う)
4年次8月~9月(1泊2日程度):夏合宿
4年次9月~12月
卒業論文の執筆を行う(年末から年明けに最終報告を行う)
と、ここまでかなり硬く書いてきてしまいましたが、学習・研究だけではなく、飲み会(2カ月に1回程度)・合宿(年1回)・社会科見学(年1回)を通じて親睦も図っていければと考えています。上記のようなことを大学生活後半の目標に設定してみたい、という皆さんと楽しく一緒に研究をして行ければと思います。
〇選考基準について
実証ビジネスエコノミクス(実証産業組織論)を究めるようと思うと、ミクロ経済理論と計量経済学の手法を幅広く学ぶことが要求されます。それらを本当の意味で習得する(自由自在に使いこなせるようになる)ためには、質の高い学習だけでなく時間もかかります。これは、スポーツやゲームで繰り返し練習するのと同じで、経済学も自分の頭を使いながら繰り返し練習する必要があるからです。最終的に(研究者を目指さないにせよ)高いレベルでそれらを習得してもらいたいので、ゼミ活動に対する強いコミットメントを期待します。
そのようなことから、以下のような観点で総合的に選考を行います:
経済学的な思考を既に身に着けているのか?(大学の2年次までの成績、特に経済学基礎I・II、統計学基礎、ゲーム理論基礎、微積分、線形代数など)
データを扱った経験があるか?(プログラミングなどの経験、コンピューターに関する知識)
成績が微妙だとしても、それをカバーできるエネルギーがあるのか?(今までの人生で何にどのくらいの情熱を傾けてきたのか?)
リーダーシップを発揮した経験(部長や生徒会長や、起業の経験など)
また、上述の観点のバランスよくあることも重要ですが、どれか(もしくは複数)突出したものがあることも重視します。特に、3番目のエネルギー(何かに打ち込んだことがあるか)は面接の際に重要視しているポイントです。
〇選考方法について
具体的な選考方法ですが、(1)共通ES、(2)事前課題(word pdf)、(3)成績表、および(4)面接です。(1)と(2)、(3)は、それぞれ1つのPDFファイルにして、2025年1月7日(火)23:59までにこちらのgoogle formから提出してください(締切りを過ぎると自動的に受付できなくなるので、時間に余裕をもって提出してください!)。
面接は2025年1月11日(土)11時頃から三田キャンパスにて対面で行います。一人当たり15-20分程度を予定しており、時間と教室については前々日である1月9日18時までにメールにて連絡しますので、メールに返信のうえ、指定された時間までに会場にお越しください。合否発表は、合否に関わらずメールで通知する予定です。
募集人数は、1次で2名合格しましたので、2次では8名程度募集します。また、3次選考は現時点では行わない予定です。
ゼミは基本的にゼミ生の発表で構成されます。2026年度からは、水曜日限3年生(5限)と4年生(4限)の2コマありますが、どちらの学年も両方のゼミに参加してもらいます。この背後には、3年次に4年生のゼミに参加することで、卒論の取り組み方・執筆過程を見ることができま、また4年次に3年生のゼミに参加することで、産業組織や計量経済学の一次元高い理解が得られるためです。ただ、2025年度は3年生のみですので、4限をどのように活用するかは、みなさんに決めて頂く予定です(サブゼミの時間にするもよし、余分にやるもよし)
2025年度の教材は以下を予定しています:
春夏学期
(3年生):計量経済学の第一歩(田中)
(3年生):実証ビジネス・エコノミクス(上武・遠山・若森・渡辺)
秋冬学期
(3年生):
また、本ゼミだけでは学習時間が不足しますので、自主的に「サブゼミ」を行って頂く予定です。サブゼミの教材についても、みなさんの興味や学習進度に応じて、どのような教材が良いかのおすすめをします。
さらに、実証産業組織論では、一つの産業を詳しく知ることも非常に大切な要素になってきます。ということで、学期(もしくは年)に1回程度工場見学や社会科見学を実施したいと考えています。(前職の一橋では2023年度は府中にあるサントリーのビール工場見学をしました。)卒業論文執筆のための一つの動機づけになることを期待しています。
教材
2025年度(慶應):「計量経済学の第一歩」(田中)、「実証ビジネス・エコノミクス」(上武・遠山・若森・渡辺)
2025年度(一橋):「競争政策論」(小田切)
2024年度(一橋):「Discrete Choice Methods with Simulation」(Kenneth Train)、「因果推論の計量経済学」(川口・澤田)
2023年度(一橋):「計量経済学」(西山・新谷・川口・奥井)、「産業組織のエッセンス」(明城・大西)
2022年度(一橋):「計量経済学の第一歩」(田中)、「産業組織 理論と実証の接合」(石橋)
夏合宿
2025年度(慶應):赤坂(4月5日~4月6日)、TBA
2025年度(一橋):TBA
2024年度(一橋):相模湖(8月29日~8月30日)
2023年度(一橋):河口湖(9月4日~9月5日)
2022年度(一橋):奥多摩(8月30日~8月31日)
社会科見学
2025年度(慶應):TBA
2025年度(一橋):TBA
2023年度(一橋):サントリー<天然水のビール工場>東京・武蔵野
メンバーと卒業論文(青字は大学院進学者)
慶應1期生(2025年度~2026年度)
5名
一橋3期生(2024年度~2025年度)
河本亮:TBA
窪田昌平:TBA
佐々木信太郎:TBA
佐々木陸:TBA
中村耕史郎:TBA
西野景一朗:TBA
根岸彪人:TBA
濱口愛菜:TBA
松浦慶英:TBA
村山志音:TBA
山下玲央:TBA
一橋2期生(2023年度~2024年度)
米田成寿:TBA
西野颯真:天候要因がプロ野球観客動員数に与える影響 ―屋内球場と屋外球場の比較分析―
森谷高太:J1リーグにおけるダイナミックプライシング導入の効果
薮田尚希:日本酒の国外市場における需要推定 ―持続的な市場形成を目指した輸出戦略―
川端仁(副ゼミ):
一橋1期生(2022年度~2023年度)
久木元勇仁:YouTube における動画の収益の推定
田嶋友:「メルカリ」における状態に係る表示の信頼性と サービス利用者の効用に関する研究
仲川竜也:テキサスホールデムポーカーにおいてブラフを行うことでチップを稼ぐことはできるのか
南向祐吾:カードショップにおける価格決定の要因分析
藤井達也:ロジット分析による日本の一般家庭の金融資産の保有に対する要因分析
穂岐山統裕:歯科診療所の参入分析
山本修平:TBA
安田公大(宇井ゼミから編入):シェアサイクル導入の都市部通勤・通学者の交通手段選択に対する影響の分析
市川周(杉田ゼミから編入):地政学的リスクが及ぼすアジア・太平洋地域経済への影響分析
伊藤崇仁(杉田ゼミから編入):富山市のコンパクトシティ政策の評価 ~他都市と比較してどれほどの成果を収めているのか~
カオアインミンニャット(杉田ゼミから編入):技能実習制度から特定技能制度への変更による効果分析
角田悠悟(杉田ゼミから編入):SNS 上での迷惑行為の拡散が飲食店に与える影響の分析