エピソード記憶

佐藤研究室では現在,ラットにエピソード記憶を必要とする課題を学習させ,その上で脳損傷処置が課題遂行に与える効果を調べる実験や,課題遂行時のニューロン活動を記録・解析する実験が進行中です.

以下も参照して下さい.

http://www.jstage.jst.go.jp/article/janip/60/2/105/_pdf/-char/ja/

「記憶」というと,たとえば“昨日,友人と街中にあるコンサートホールにオーケストラの演奏を聴きに行った”というような出来事の記憶を指す場合が多い.このような,いつ(昨日),どこで(街中のホール)なにが起こったのか(演奏を聴く)という出来事に関する記憶をエピソード記憶と呼ぶ.

エピソード記憶には二つの特性があるとされている(Tulving, 2002; 2005).一つは,時間的情報(いつ),空間的情報(どこ),および対象の情報(なに)といった「複数の要素情報を統合した記憶」という点であり,エピソードを構成する情報内容の側面と言える.もう一つは,現在時点の意識状態から,時間を翻って過去の情報を意識的に思い出すという「内省的なプロセス」という点であり,意識的な心的時間操作の側面と言える(自己作用的意識 autonoetic awareness).

このような特性から,エピソード記憶は,自己認知やメタ認知(自己の認知状態の認知)などといった極めて高次な認知機能とも関連深く,人間の認知能力の根幹となるシステムだと考えられている.

Clayton & Dickinson (1998)のカケスでのエピソード的記憶の報告以降,動物でのエピソード記憶の可能性が議論されるようになった.