news

202月:論文発表名古屋大学との共同研究)

眼トキソプラズマ症の病態に 鉄を伴う細胞死であるフェロトーシスが関与していることを発見 

〜眼トキソプラズマ症の新規診断方法と治療法の確立へ〜

プレスリリース
https://www.med.nagoya-u.ac.jp/medical_J/research/pdf/Red_231004.pdf

https://www.qlifepro.com/news/20231005/ocular-toxoplasmosis.html


2023年4月13日


西川教授が日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」に取材協力しました

お知らせメディア掲載

西川教授が取材協力したテレビ番組,日本テレビ「カズレーザーと学ぶ。」が2023年4月11日(火)夜9時から放送されました。
『国民の2割は感染!?脳を操りキレさせる「トキソプラズマ」』のコーナーで,西川研究室の実験データが紹介されています。
見逃し無料配信動画サービスなどで視聴できます。

2023年3月7日


朝日新聞・「(学びの扉)寄生虫と人類:中 生物操り、都合のいい環境に 宿主の脳や免疫を制御、生態系に影響も」で西川義文教授のトキソプラズマ研究に関する記事が掲載されました。

https://www.asahi.com/articles/DA3S15570869.html


2023年2月2日


西川研究室が提供した「トキソプラズマの動画」を使用したドラマが放映されました

お知らせメディア掲載

テレビ朝日・木曜ドラマ「警視庁アウトサイダー」第一話の20分ごろに登場します。見逃し無料配信動画サービスなどで視聴できます。


実際の動画はこちら:

https://www.facebook.com/yoshifumi.nishikawa/videos/680832896795853


202年1月:論文発表

論文名:ネオスポラ感染による脳病変を抑える細胞群を発見

ネオスポラの感染は畜産業に多大な経済的損失をもたらすことから、その対策には病態発症機構の解明が重要となります。ネオスポラ症の主徴は流産と神経症状はであり、その病態には宿主の免疫応答が深く関わっています。今回、CXCR3ノックアウト(CXCR3KO)マウスを用いた感染モデルにおいてCXCR3の役割を解析し、CXCR3陽性制御性T細胞が脳病変の抑制に重要であることを見出しました。従って、過剰な炎症反応を適切に制御することで宿主動物の致死的な影響を回避できることが示され、新規ワクチンの開発につながることが期待されます。本研究は、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(21fk0108137h)、挑戦的研究(萌芽)(20K21359)、基盤研究(B)(21H02353)の研究費で実施しました。

Abdelbaky HH, Mitsuhashi S, Watanabe K, Ushio N, Miyakawa M, Furuoka H, Nishikawa Y.

Involvement of chemokine receptor CXCR3 in the defense mechanism against Neospora caninum infection in C57BL/6 mice. 

Front Microbiol. 2023 Jan 10;13:1045106. doi: 10.3389/fmicb.2022.1045106. PMID: 36704563

2022年12月7日


日本経済新聞・科学の絶景「オオカミ、寄生体がボス指名」で西川義文教授のトキソプラズマ研究に関する記事が掲載されました。


https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC291KE0Z21C22A1000000/


2022年7月21日


毎日新聞・科学の森「宿主操り生き延びる寄生生物」で西川義文教授のトキソプラズマ研究に関する記事が掲載されました。


https://mainichi.jp/articles/20220714/ddm/016/040/019000c


2022年7月21日


国立感染症研究所発行の病原微生物検出情報(Infectious Agents Surveillance Report)の〈特集〉トキソプラズマ 症(Vol.43 No. 3(No.505) 2022年 3 月発行)で潮奈々子研究員、西川義文教授の「〈特集関連情報〉トキソプラズマ感染とげっ歯類の行動変容およびヒトの精神・神経疾患」が掲載されました。


https://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-vol43/11052-idx505.html


2022年月:論文発表

論文名:砂漠に生息するエジプトの野生植物の抽出物は、試験管内でトキソプラズマ・ゴンディとネオスポラ・カニナムの増殖を阻害する

野生の薬用植物は、伝統的に抗菌剤として使用されてきました。今回、エジプトの砂漠の野生植物の抽出エキスからトキソプラズマとネオスポラの増殖抑制効果を持つ種類を見出しました。その中でもヨモギ(Artemisia judaica)、フウチョウソウ(Cleome droserifolia)のエキスについては強力な効果を示したため、これら感染症の代替治療薬の生物資源となる可能性が示されました。本研究はSouth Valley大学(エジプト)との共同研究の成果であり、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(21fk0108137h)と国際共同研究B(文部科学省:20KK0152)の研究費で実施しました。

Abdou AM, Seddek AS, Abdelmageed N, Badry MO, Nishikawa Y. 

Extracts of wild Egyptian plants from the desert inhibit the growth of Toxoplasma gondii and Neospora caninum in vitro. 

J Vet Med Sci. 2022 Jul 25;84(7):1034-1040. doi: 10.1292/jvms.22-0159. Epub 2022 Jun 6. PMID: 35661076

202月:論文発表

論文名:エジプトの野生薬用植物の抗マラリア作用

薬用植物は、感染症治療のための代替薬物資源として成功裏に使用されています。マラリアの新しい治療法を見つけることは困難であり、砂漠由来の野生植物の抽出物は、様々な薬用利用が報告されています。本研究では、エジプト砂漠の13種類の植物から抽出物を調整し、抗マラリア効力を評価しました。その結果、Trichodesma africanumの抽出物に最も効果的な抗マラリア活性を確認しました(IC50: 11.7 µg/ml、選択毒性:35.2)。今回の結果は、エジプトの砂漠に生息する植物は代替薬物資源として有用であることを示唆しています。本研究は、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(20fk0108137h)と国際共同研究B(文部科学省:20KK0152)で実施しました。

Ahmed M Abdou, Abdel-latif S Seddek, Noha Abdelmageed, Mohamed O Badry, Yoshifumi Nishikawa*. 

Wild Egyptian medicinal plants show in vitro and in vivo cytotoxicity and antimalarial activities. 

BMC Complement Med Ther. 2022 May 12;22(1):130. doi: 10.1186/s12906-022-03566-5. PMID: 35550108

医学書院「週刊医学界新聞」で西川義文教授の記事「難敵トキソプラズマ症に挑

む」が掲載されました。2022年3月


web版

https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2022/3462_03


PDF

https://www.igaku-shoin.co.jp/application/files/6216/4782/9552/3462.pdf

2022年3月:論文発表

論文名:トキソプラズマ由来ペルオキシレドキシンの病原性への関与

トキソプラズマはヒトに対して病原性を示し、畜産業にも莫大な経済的損失を与えています。本感染症を制御するためには、病原性の理解に基づいた科学的なアプローチが重要になります。我々の以前の研究で、トキソプラズマ由来ペルオキシレドキシンであるTgPrx1とTgPrx3の組換えタンパク質は免疫活性化作用があることが分かっていましたが(Fereig et al., PLoS One. 2017; Fereig et al., Parasitol Int. 2016)、生理的な役割は不明でした。本研究ではCRISPR-Cas9の遺伝子編集技術によりTgPrx1とTgPrx3の欠損原虫株を作出し、病原性解析を行いました。その結果、TgPrx3欠損株は親株原虫と比較して過剰な炎症反応を誘導し、マウスにおける病原性が増加していました。この結果は、TgPrx3特異的な免疫反応がトキソプラズマの病原性制御に重要であることを示唆しており、ワクチン開発への応用が期待できます。本研究はSouth Valley大学(エジプト)との共同研究の成果であり、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(21fk0108137h)と国際共同研究B(文部科学省:20KK0152)の研究費で実施しました。

Fereig RM, Nishikawa Y. 

Genetic Disruption of Toxoplasma gondii peroxiredoxin (TgPrx) 1 and 3 Reveals the Essential Role of TgPrx3 in Protecting Mice from Fatal Consequences of Toxoplasmosis. 

Int J Mol Sci. 2022 Mar 12;23(6):3076. doi: 10.3390/ijms23063076. PMID: 35328497

2022年3月:論文発表

論文名:ネオスポラのデンスグラニュル7は垂直感染に関与する

ネオスポラは牛の流産の原因となり、その対策には妊娠期の原虫感染による垂直感染の仕組みを理解することが必要です。我々の以前の研究で、ネオスポラのデンスグラニュル7(NcGRA7)を欠損させるとマウスにおける原虫の病原性が低下することが明となっています(Nishikawa et al., Appl Environ Microbiol. 2018)。今回、妊娠期感染モデルを用いて、垂直感染におけるNcGRA7の役割を解析しました。親株原虫と比較して、NcGRA7欠損株の垂直感染率の低下が認められました。組織学的および生化学的解析により、NcGRA7欠損株の感染では胎盤領域での炎症反応が亢進しており、原虫が障害を受けていたことが推測されました。従って、NcGRA7は原虫の垂直感染を成立させる重要な分子であることが示唆されます。本研究はSouth Valley大学(エジプト)との共同研究の成果であり、基盤B(一般)(文部科学省:21H02353, 18H02335)、挑戦的研究(萌芽)(文部科学省:20K21359)の研究費で実施しました。

Abdou AM, Ikeda R, Watanabe K, Furuoka H, Nishikawa Y. 

Role of dense granule antigen 7 in vertical transmission of Neospora caninum in C57BL/6 mice infected during early pregnancy. 

Parasitol Int. 2022 Mar 15;89:102576. doi: 10.1016/j.parint.2022.102576. Epub ahead of print. PMID: 35301119



2022年月:論文発表

論文名:抗生物質スパルソマイシンの抗マラリア作用

ペプチジルトランスフェラーゼ阻害剤として作用する抗生物質スパルソマイシンの抗マラリア活性を解析しました。熱帯熱マラリア原虫(Plasmosium falciparum 3D7株およびK1株)に対して,スパルソマイシンはそれぞれ12.07および25.43 nMのIC50値を示しました。P. falciparum 3D7をスパルソマイシンで処理すると、形態変化が起こり、リング期の原虫が阻害され、化合物を除去した後でも増殖阻害を維持しました。マウスマラリア原虫(P. yoelii 17XNL株およびP. berghei ANKA株)を用いたマウス感染実験でも、スパルソマイシンの治療効果を確認することができました。今回の結果により、スパルソマイシンをリード化合物とした新たな抗マラリア薬の開発が期待されます。本研究は微生物化学研究所との共同研究の成果であり、特別研究員奨励費(文部科学省:20F20402)、原虫病研究センター共同研究費(2020-joint-14, 27-joint-6, 28-joint-3, 29-joint-4)で実施しました。


Ariefta NR, Pagmadulam B, Nihei CI, Nishikawa Y. 

Sparsomycin Exhibits Potent Antiplasmodial Activity In Vitro and In Vivo. 

Pharmaceutics. 2022 Feb 28;14(3):544. doi: 10.3390/pharmaceutics14030544. PMID: 35335918

2022年2月:論文発表

論文名:フィリピンのヒト血清を用いたトキソプラズマのデンスグラニュル抗原(TgGRA6, TgGRA7, TgGRA14)の抗原性解析

トキソプラズマ症の制御には、信頼性の高い診断系の開発が必須です。トキソプラズマは細胞内寄生原虫であるため、簡易検査としては抗体検査が有効です。以前の我々の研究では、フィリピンにおけるトキソプラズマ感染の実態を明らかにしました(Ybañez et al., PLoS One. 2019)。今回、フィリピンのヒト血清を用いたトキソプラズマのデンスグラニュル抗原(TgGRA6, TgGRA7, TgGRA14)の抗原性解析を行いました。TgGRA7に加えて、TgGRA6にも診断用抗原としての有効性が確認できました。今後、これらの診断用抗原を利用した簡便な検査系の開発が期待できます。本研究はセブ工科大学(フィリピン)との共同研究の成果であり、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(21fk0108137h)と国際共同研究B(文部科学省:20KK0152)の研究費で実施しました。

Ybañez RH, Nishikawa Y.

Comparative Performance of Recombinant GRA6, GRA7, and GRA14 for the Serodetection of T. gondii Infection and Analysis of IgG Subclasses in Human Sera from the Philippines. 

Pathogens. 2022 Feb 21;11(2):277. doi: 10.3390/pathogens11020277. PMID: 35215219

2022月:論文発表

論文名:脂質ナノ粒子を基盤技術としたトキソプラズマのデンスグラニュル15搭載DNAワクチンの感染防御効果

トキソプラズマはヒトと家畜動物に感染し公衆衛生的にも問題視されており、安全で有効なワクチンの開発が望まれています。今回、細胞質で自己崩壊するようデザインされた脂質ナノ粒子を基盤とし、トキソプラズマ用DNAワクチンの開発を試みました。以前の我々の研究で免疫活性化能を有する原虫遺伝子としてデンスグラニュル15(TgGRA15)を見出しており(Ihara et al., Front Immunol. 2020)、前述のナノ粒子にTgGRA15遺伝子を搭載してマウスの感染実験系で評価しました。本DNAワクチン接種により抗原特異的な免疫反応が誘導され、ワクチン接種マウスは感染抵抗性を示しました。本結果により、新型DNAワクチン開発への展開が期待されます。本研究はChattogram Veterinary and Animal Sciences University(バングラデシュ)、千葉大学との共同研究の成果であり、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(21fk0108137h)と国際共同研究B(文部科学省:20KK0152)の研究費で実施しました。

Hasan T, Kawanishi R, Akita H, Nishikawa Y. 

Toxoplasma gondii GRA15 DNA Vaccine with a Liposomal Nanocarrier Composed of an SS-Cleavable and pH-Activated Lipid-like Material Induces Protective Immunity against Toxoplasmosis in Mice. 

Vaccines (Basel). 2021 Dec 24;10(1):21. doi: 10.3390/vaccines10010021. PMID: 35062682

2021年12月:論文発表

論文名:モンゴルの薬草由来化合物ライブラリーを利用した抗原虫薬開発への可能性

生物多様性を有する国では有望な天然生物資源が存在します。モンゴルの薬草は創薬資源として大きな可能性を秘めており、今回はモンゴルの薬草由来化合物179種のマラリア原虫とトキソプラズマ に対する増殖阻害活性を評価しました。マラリア原虫を阻害する化合物として、brachangobinan A (IC50 2.62 μM)、oxazole (IC50 3.58 μM)、 chrysosplenetin (IC50 3.78 μM)、4,11-di-O-galloylbergenin (IC50 3.87 μM) 、2-(2′ ,5′ -dihydroxyphenyl)-5-(2′′ - hydroxyphenyl)oxazole (IC50 6.94 μM)が同定されました。また、トキソプラズマを阻害するricin (IC50 12.94 μM)も同定されました。今後は、これら化合物をリード化合物とした創薬展開が期待されます。本研究はモンゴル国立大学、獣医学研究所(モンゴル)、東北医科薬科大学との共同研究の成果であり、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(20fk0108137h)と科研費(20KK0152)で実施しました。

Banzragchgarav O, Ariefta NR, Murata T, Myagmarsuren P, Battsetseg B, Battur B, Batkhuu J, Nishikawa Y. 

Evaluation of Mongolian compound library for potential antimalarial and anti-Toxoplasma agents. 

Parasitol Int. 2021 Dec;85:102424. doi: 10.1016/j.parint.2021.102424. Epub 2021 Jul 22. PMID: 34302982

2021年12月

論文発表

論文名:モンゴル植物由来エキスのマラリア原虫とトキソプラズマに対する抑制効果

生物多様性を有する国では有望な天然生物資源が存在します。モンゴルの薬草は創薬資源として大きな可能性を秘めており、今回はモンゴルの薬草由来エキス43種のマラリア原虫とトキソプラズマ に対する増殖阻害活性を評価しました。マラリア原虫を阻害する植物エキスとして、Galatella dahurica leaf + flower, Leonurus deminutus leaf + flower, Oxytropis trichophysa aerial part, Schultzia crinita whole plant, Leの6種が同定されました。また、トキソプラズマを阻害するAmaranthus retroflexus rootも同定されました。今後は、これら植物エキスをシーズとした創薬展開が期待されます。本研究はモンゴル国立大学、獣医学研究所(モンゴル)との共同研究の成果であり、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(20fk0108137h)と科研費(20KK0152)で実施しました。

Banzragchgarav O, Batkhuu J, Myagmarsuren P, Battsetseg B, Battur B, Nishikawa Y. 

In Vitro Potently Active Anti-Plasmodium and Anti-Toxoplasma Mongolian Plant Extracts. 

Acta Parasitol. 2021 Dec;66(4):1442-1447. doi: 10.1007/s11686-021-00401-8. PMID: 34023977

2021年11月論文発表

論文名:トキソプラズマ感染に対するマウス脳組織の免疫反応におけるケモカイン受容体CXCR3の役割

トキソプラズマは脳内に感染して脳機能に様々な障害を与えると考えられていますが、その全貌は解明されていません。以前の我々の研究では、マウス脳組織を用いた網羅的トランスクリプトーム解析により、感染依存的にケモカイン受容体CXCR3とそのリガンドCXCL10の発現が上昇することが明らかにされています(Tanaka et al., Infect Immun. 2013)。今回、CXCR3欠損マウスを用いて、トキソプラズマ感染に対する脳細胞の応答性を解析しました。野生型マウスと比較して、CXCR3欠損マウスは感染による臨床症状が増悪し、脳内原虫数と脳組織の炎症が増加していました。ミクログリアとアストロサイトの初代培養細胞を作製し、原虫感染による遺伝子発現の解析を実施しました。その結果、CXCR3かつ原虫感染依存的な遺伝子として、免疫反応に関与する一連の遺伝子が見出されました。今回の結果は、脳内原虫のコントロールにはグリア細胞のCXCR3依存的な免疫反応が一定の役割を担っていることを示しています。本研究はSouth Valley大学(エジプト)、東京大学との共同研究の成果であり、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(21fk0108137h)と科研費(2011/LS003, JP24880006, JP17K17570, JP15K15118, 17K19538, 20KK0152, 20K21359, 21H02353で実施しました。

Umeda K, Goto Y, Watanabe K, Ushio N, Fereig RM, Ihara F, Tanaka S, Suzuki Y, Nishikawa Y. 

Transcriptomic Analysis of the Effects of Chemokine Receptor CXCR3 Deficiency on Immune Responses in the Mouse Brain during Toxoplasma gondiiInfection. 

Microorganisms. 2021 Nov 12;9(11):2340. doi: 10.3390/microorganisms9112340. PMID: 34835465

2021年11月:論文発表

論文名:トキソプラズマ感染に対する新たな薬剤:ポリエーテルイオノホア・キジマイシン

ポリエーテル系抗生物質は反芻動物の飼料に広く用いられ、寄生虫病のコクシジウム症やマラリアに効果があるとされている。今回、ポリエーテル系抗生物質のキジマイシンについて、トキソプラズマ症に対する効果を検証した。キジマイシンは宿主細胞内と宿主細胞外のトキソプラズマに対する殺滅効果を示し(IC50:宿主細胞内45.6 ± 2.4 nM、宿主細胞外216.6 ± 1.9 pM)、原虫の膨化を誘導した。別のポリエーテル系抗生物質のモネンシンと同様に、キジマイシンは原虫のミトコンドリア膜電位を減少させ、活性酸素種の産生を増加させることで障害を与えることが明らかとなった。また、キジマイシンは感染マウスに対する治療効果を示した。今回の結果により、キジマイシンが家畜のトキソプラズマ症の治療薬として有効である可能性が示された。本研究はマヒドン大学(タイ)、微生物化学研究所との共同研究の成果であり、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(21fk0108137h)、科研費(20KK0152, 26670204)、原虫病研究センター共同研究費(2020-joint-14, 27-joint-6, 28-joint-3, 29-joint-4)で実施しました。

Leesombun A, Nihei CI, Kondoh D, Nishikawa Y. 

Polyether ionophore kijimicin inhibits growth of Toxoplasma gondii and controls acute toxoplasmosis in mice. 

Parasitol Res. 2022 Jan;121(1):413-422. doi: 10.1007/s00436-021-07363-w. Epub 2021 Nov 9. PMID: 34750652.

2021年1月:論文発表

論文名:ウシのネオスポラ感染に対する血清診断法の開発:ネオスポラ抗原を搭載したイムノクロマトテストの有効性の検証

ネオスポラ感染はウシの流産を引き起こすことから、畜産業に経済的な損失を与えます。ネオスポラ感染を制御するためには、迅速簡便な検査系を開発することが重要です。今回、ネオスポラの組換え抗原(NcSAG1, NcGRA6, NcGRA7、可溶性ライセート)を搭載したイムノクロマトを作製し、マウスとウシの血清を用いて有効性を評価しました。その結果、NcSAG1を搭載したイムノクロマトが最も優れた特異性と感度を示しました。今後は、この結果をもとにした診断系の実用化が望まれます。本研究はSouth Valley大学(エジプト)との共同研究の成果であり、科研費(18H02335, 20K21359, 21H02353)、JSTバリュープログラム (VP29117937665)、伊藤記念財団、旗影会、畜産ニューテック協会の研究助成で実施しました。

Fereig RM, Abdelbaky HH, Nishikawa Y. 

Comparative Evaluation of Four Potent Neospora caninumDiagnostic Antigens Using Immunochromatographic Assay for Detection of Specific Antibody in Cattle. 

Microorganisms. 2021 Oct 11;9(10):2133. doi: 10.3390/microorganisms9102133. PMID: 34683454

2021年10月:論文発表

論文名:Toll様受容体2(TLR2)は妊娠後期のトキソプラズマ 感染により引き起こされる異常妊娠に関与する

妊娠期のトキソプラズマ感染は流産、死産、早産の原因となることが知られていますが、その発症メカニズムの詳細は明らかにされていません。Toll様受容体2(TLR2)は免疫細胞や胎盤に発現していますが、トキソプラズマの妊娠期感染におけるTLR2の役割は分かっていません。妊娠後期のトキソプラズマ感染マウスモデルで解析したところ、野生型マウスでは異常妊娠が認められますが、TLR2欠損マウスでは異常妊娠が有意に減少しました。TLR2欠損マウスでは感染に対する炎症性反応が減弱しており、胎盤への障害が起こりにくいことが推測されました。今回の結果により、妊娠期のTLR2への刺激はトキソプラズマ 感染病態を悪化させ、胎盤の機能低下につながると考えられます。従って、先天性トキソプラズマ症に対するTLR2の阻害による新たな治療法の開発につながることが期待されます。本研究はSouth Valley大学(エジプト)との共同研究の成果であり、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(21fk0108137h)と科研費(20KK0152, 20K21359, 21H02353)で実施しました。

Ikeda R, Ushio N, Abdou AM, Furuoka H, Nishikawa Y. 

Toll-Like Receptor 2 is Involved in Abnormal Pregnancy in Mice Infected with Toxoplasma gondiiDuring Late Pregnancy. 

Front Microbiol. 2021 Oct 5;12:741104. doi: 10.3389/fmicb.2021.741104. PMID: 34675905

2021年月:論文発表

論文名:北海道の流産胎仔由来ネオスポラの集団遺伝解析

ネオスポラ感染による牛の流産は日本でも発生していますが、原虫の集団遺伝構造は不明です。今回、北海道の流産胎仔由来ネオスポラを対象にマイクロサテライト解析を行い、遺伝構造を決定しました。これまでに報告されている世界のネオスポラ遺伝子型とは異なる集団となる日本特有の集団が見つかりました。今回の結果は、日本国内でネオスポラが垂直感染、水平感染により独自に維持されていることを示しています。本研究はマンスーラ大学(エジプト)との共同研究の成果であり、科研費(18H02335, 20K21359)で実施しました。

El-Alfy ES, Ohari Y, Shimoda N, Nishikawa Y. 

Genetic characterization of Neospora caninum from aborted bovine fetuses in Hokkaido, Japan. 

Infect Genet Evol. 2021 Aug;92:104838. doi: 10.1016/j.meegid.2021.104838. Epub 2021 Apr 2. PMID: 33819682


Parasitology International誌のゲストエディターとして編集した "Organelle Biology in Protozoan Parasites"特集がonlineで出版されました。        2021年8月

2021年1月:論文発表 https://iai.asm.org/content/89/2/e00253-20.long

論文名:トキソプラズマによる流産の病態発症メカニズムの解明

トキソプラズマ症は偏性細胞内寄生性原虫であるトキソプラズマ(Toxoplasma gondii)によって引き起こされる人獣共通感染症であり、世界中で発生しています。先天性トキソプラズマ症の症状は胚死・吸収から不顕性感染まで多岐に渡りますが、発症機序は不明です。C-X-Cモチーフのケモカイン受容体3(CXCR3)は主にTh1関連免疫細胞に高発現し、免疫細胞の遊走と活性化や妊娠維持にも関与しています。しかし、トキソプラズマの妊娠期感染におけるCXCR3の役割や分子機構についてはまだ十分に理解されていません。本研究ではCXCR3欠損マウス(CXCR3-/-)を用いて、妊娠初期のトキソプラズマ感染に対するCXCR3の役割を調べました。妊娠3.5日目(Gd3.5)にCXCR3-/-マウスと野生型マウスへトキソプラズマを腹腔内接種しました。両感染群ともに妊娠日の進行とともに壊死を呈する胚が増加し妊娠率が低下しましたが,CXCR3-/-感染マウスではより顕著な胚の喪失が認められました。またGd10.5において、胎盤組織の原虫感染量はCXCR3-/-マウスで有意に増加しました。更にGd13.5の胎盤組織では、野生型感染マウスと比較しCXCR3-/-感染マウスにおいて誘導性一酸化窒素合成酵素 (iNOS)とCD8のmRNA発現量が有意に減少しました。これらの結果は、妊娠初期のCXCR3依存的な宿主免疫応答がトキソプラズマ感染に対する妊娠維持に重要な役割を果たしていることを示唆しています。本研究結果は、科学雑誌Infection and ImmunityのSpotlight Selectionに選出されました。本研究は、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(19fk0108047h0003, 20fk0108137h0001)で実施しました。

Nishida A, Ikeda R, Furuoka H, Nishikawa Y. 

CXCR3-Dependent Immune Pathology in Mice following Infection with Toxoplasma gondii during Early Pregnancy. 

Infect Immun. 2021 Jan 19;89(2):e00253-20. doi: 10.1128/IAI.00253-20. PMID: 33199353


2021年1月:論文発表 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jvms/83/1/83_20-0458/_article

論文名:天然物からの抗原虫薬の探索

近年、ハーブ抽出物は創薬にとって重要な天然資源となっています。今回エジプトの植物に着目し、それら抽出物のトキソプラズマに対する阻害効果を検証しました。コロシント(Citrullus colocynthis)とゲッケイジュ(Laurus nobilis)のメタノール抽出物、レモングラス(lemon grass)とマジョラム(marjoram)の天然油はin vitroにおける抗トキソプラズマ効果を示しましたが選択毒性は10未満でした(それぞれのIC50値:22.86 µg/ml、31.35 µg/ ml、4.6 µg/ ml、26.24 µg/ml)。一方で、カモミール(Matricaria chamomilla)のメタノール抽出物とシトロネラ油(citronella oil)は選択的にトキソプラズマ増殖を阻害しました(それぞれのIC50値:3.56 µg/ml、2.54 µg/ml、それぞれの選択毒性:130.33、15.02)。以上により、カモミールやシトロネラは抗トキソプラズマ薬の創薬に有用な天然資源になることが示唆されました。本研究はエジプト・マンスーラ大学との共同研究の成果であり、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(JP19fk0108047)で実施しました。

Elazab ST, Soliman AF, Nishikawa Y. 

Effect of some plant extracts from Egyptian herbal plants against Toxoplasma gondii tachyzoites in vitro. 

J Vet Med Sci. 2021 Jan 14;83(1):100-107. doi: 10.1292/jvms.20-0458. Epub 2020 Dec 1. PMID: 33268605.



2021年2月:論文発表 https://www.mdpi.com/2076-393X/9/2/155

論文名:免疫賦活抗原を用いた病原性原虫に対するワクチン開発

ワクチンは様々な感染症を制御するための重要な手法になります。ネオスポラの感染はウシやヒツジに流産を引き起こすため、畜産業会に経済的な損失をもたらします。我々は、ネオスポラのデンスグラニュルタンパク質6(NcGRA6)は免疫賦活能を有していること、非妊娠マウスへの免疫で感染防御効果を誘導できることを確認しています。今回は、妊娠マウスを用いてNcGRA6ワクチンが原虫の垂直感染を抑制できるか検証しました。PBSあるいは対照抗原を接種したマウスと比較して、NcGRA6を免疫した母マウスは臨床症状が抑えられ、生まれた子マウスは生存率が高く、脳内原虫数も低く抑えられていました。以上の結果により、NcGRA6の単独投与で妊娠期のネオスポラ感染を制御できる可能性が示唆されました。本研究はSouth Valley大学(エジプト)との共同研究の成果であり、基盤研究B(一般)(文部科学省:18H02335)、挑戦的研究(萌芽)(文部科学省:20K21359)の研究助成で実施しました。

Fereig RM, Abdelbaky HH, Nishikawa Y. 

Vaccination with Neospora GRA6 Interrupts the Vertical Transmission and Partially Protects Dams and Offspring against Neospora caninum Infection in Mice. 

Vaccines (Basel). 2021 Feb 15;9(2):155. doi: 10.3390/vaccines9020155. PMID: 33671937


2021年4月:論文発表 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1383576920302178?via%3Dihub

論文名:天然物からの抗原虫薬の探索

メタサイトフィリンは昆虫病原糸状菌メタリジウムから分離され、我々の研究によりトキソプラズマ感染に対する治療効果が確認されています。今回、メタサイトフィリンのマラリア原虫に対する阻害作用を検証しました。メタサイトフィリンは熱帯熱マラリア原虫3D7株とクロロキン耐性K-1株に対して増殖抑制効果を示し(それぞれのIC50値:666 nM、605 nM)、特にリング期の原虫に効果的でした。以上より、メタサイトフィリンはマラリア治療薬のリード化合物になる可能性が示されました。本研究は微生物科学研究所、タイ・マヒドン大学との共同研究の成果であり、公益財団法人・寿原記念財団、帯広畜産大学原虫病研究センター共同研究費(27-joint-6, 28-joint-3, 29-joint-4)の研究助成で実施しました。

Leesombun A, Iijima M, Pagmadulam B, Orkhon B, Doi H, Issiki K, Sawa R, Nihei CI, Nishikawa Y. 

Metacytofilin has potent anti-malarial activity. 

Parasitol Int. 2021 Apr;81:102267. doi: 10.1016/j.parint.2020.102267. Epub 2020 Dec 8. PMID: 33307212.

2020年7月:論文発表 https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fimmu.2020.01709/full

論文名:トキソプラズマ由来因子による宿主免疫撹乱メカニズムの解明

トキソプラズマは、宿主細胞に侵入するとロプトリー(ROP)またはデンスグラニュル(GRA)と呼ばれる細胞小器官から様々なタンパク質を分泌し、その一部は宿主の免疫応答を撹乱することが知られています。寄生虫分子による宿主免疫の制御メカニズムを明らかにすることで、新たな治療法の開発につながることが期待されています。本研究では、Th1型免疫応答を誘導するNFκB経路に焦点を当て、レポータープラスミドを用いてNFκBを活性化する分子のスクリーニングを行い、II型原虫のGRA7、GRA14、GRA15の過剰発現が強い活性を示すことを見出しました。そこで本研究では、これら3つの分子の比較分析を行い、トキソプラズマ症の病態におけるNFκBの関与を理解することを目的としました。トキソプラズマのGRA7、GRA14、GRA15はNFκBを活性化することで宿主免疫応答を活性化し、寄生虫の増殖を抑制的に制御することが明らかとなりました。また、II型原虫でのGRA14の寄与は限定的なものでしたが、活性型GRA15を持たないI型RH株を用いて、マウスに原虫を足蹠内接種したところ、親株では80%以上のマウスが生存したのに対してGRA14欠損株で全てのマウスが4週間以内に死亡しました。トキソプラズマの病原性は遺伝子型によって大きく異なりますが、その違いは免疫撹乱分子の遺伝子多型性によって規定されます。このことから、GRA15の活性の低い株では、GRA14による免疫活性化が宿主の生存に必要であることが示唆されました。トキソプラズマは、感染慢性期に宿主の脳や筋肉内にシストを形成し潜伏感染へと移行します。感染初期に宿主免疫を活性化させ宿主の死を阻止することは、新たな宿主へ伝播する機会の拡大に役立つことから、GRA7、GRA14、GRA15によるNFκB経路活性化はトキソプラズマの寄生戦略に重要な役割を持つことが示されました。本研究は大阪大学微生物病研究所、エジプト・South Valley大学との共同研究の成果であり、日本医療研究開発機構 (AMED)の研究助成(19fk0108047h0003, 20fk0108137h0001)で実施しました。

Ihara F, Fereig RM, Himori Y, Kameyama K, Umeda K, Tanaka S, Ikeda R, Yamamoto M, Nishikawa Y. 

Toxoplasma gondii Dense Granule Proteins 7, 14, and 15 Are Involved in Modification and Control of the Immune Response Mediated via NF-κB Pathway. 

Front Immunol. 2020 Jul 31;11:1709. doi: 10.3389/fimmu.2020.01709. eCollection 2020. PMID: 32849602.

2020年2月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=PMID%3A+31573038

論文名:メタサイトフィリン:新規トキソプラズマ症治療薬の候補

プレスリリース:https://www.obihiro.ac.jp/facility/protozoa/news/18494

トキソプラズマの感染により引き起こされるトキソプラズマ症は、胎内死亡、流産、網脈絡膜炎、小眼球症、水頭症などの原因となります。現在市販されている抗トキソプラズマ薬は治療効果が限定的であり、重篤な副反応が懸念されます。そのため新規の治療薬開発が必要とされ、今回我々は有望な候補化合物としてMetarhizium 属糸状菌から産生されるメタサイトフィリン(MCF)を見出しました。MCFはトキソプラズマの宿主細胞侵入と増殖を阻害し、原虫自体を直接殺傷する効果を有していました(IC50: 1.2 μM)。MCFの選択毒性は139.8であり、既存薬より高値を示しました。構造活性相関により、MCFのメトシキ基およびヒドロキシ基が抗原虫活性に重要であることが示唆されました。MCFの作用機序を解析するためにトキソプラズマ感染細胞を用いたRNAseq解析を行ったところ、MCFは宿主細胞の遺伝子発現変化には影響せず、原虫のDNA複製を阻害しRNA分解を促進していることが示されました。実験マウスでの薬物動態試験を実施したところ、MCFの腹腔内投与および経口投与で、MCFの血中への移行が確認されました。急性期感染モデルではMCFの腹腔内投与および経口投与でトキソプラズマ感染に対する治療効果を確認できました。そこでMCFの経口投与による妊娠期感染に対する治療効果を検証しました。妊娠マウスへのMCFの投与は催奇形性と胎児毒性は認められず、原虫感染が及ぼす流産あるいは垂直感染を効果的に抑制させることができました。今回の研究結果によりMCFがトキソプラズマ感染症に対する新たな治療薬の候補になることが示され、今後の臨床応用的な研究が期待されます。本研究は微生物化学研究所、マヒドン大学・獣医学部(タイ)などとの共同研究の成果であり、寿原記念財団、新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 (AMED:JP19fk0108047)、挑戦的萌芽研究(日本学術振興会:26670204)、帯広畜産大学原虫病研究センター共同研究費(27-joint-6, 28-joint-3, 29-joint-4)の研究助成で実施しました。

Leesombun A, Iijima M, Umeda K, Kondoh D, Pagmadulama B, Abdou AM, Suzuki Y, Ohba S, Isshiki K, Kimura T, Kubota Y, Sawa R, Nihei C, Nishikawa Y. 

Metacytofilin is a potent therapeutic drug candidate for toxoplasmosis. 

J Infect Dis. 2020 Feb 18;221(5):766-774. doi: 10.1093/infdis/jiz501. PMID: 31573038




2020年6月:論文発表 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0014489420300400?via%3Dihub

論文名:ネオスポラの診断方法の開発

ネオスポラの感染は病態が慢性化するため、感染急性期に診断する手法の開発が重要となります。今回、尿サンプルからネオスポラ感染を判定できるかを検証しました。ネオスポラ抗原NcGRA7とNcSAG1を用いたELISAでは、急性感染期と慢性感染期のマウスの尿サンプルから特異的なIgG1やIgG2を検出することができました。今回の結果により、血液サンプルに加え、尿サンプルもネオスポラ抗体検査に有用であることが示されました。本研究はSouth Valley大学(エジプト)との共同研究の成果であり、基盤研究B(一般)(文部科学省:18H02335)、JSTバリュープログラム (VP29117937665)、伊藤記念財団の研究助成で実施しました。

Fereig RM, Nishikawa Y. 

Urological detection of specific antibodies against Neospora caninum infection in mice: A prospect for novel diagnostic approach of Neospora. 

Exp Parasitol. 2020 Sep;216:107942. doi: 10.1016/j.exppara.2020.107942. Epub 2020 Jun 26. PMID: 32598889.


2020年2月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=PMID%3A+32092466

論文名:トキソプラズマのデンスグラニュル抗原TgGRA7を搭載したイムノクロマトテストを用いたヒトにおけるトキソプラズマ感染の抗体検出

トキソプラズマは世界で最も一般的な寄生虫症の一つであるトキソプラズマ症を引き起こします。本原虫はその生存に必要なデンスグラニュル抗原を非常に多く分泌します。TgGR7は、宿主細胞の細胞膜や細胞質、寄生胞膜やその内腔に多く存在します。急性感染期と慢性感染期において、TgGRA7は抗体産生を強力に刺激します。TgGRA7は酵素結合免疫吸着測定法 (ELISA) の抗原として利用されてきましたが、イムノクロマトテスト(ICT)への応用はブタでの使用が試されたのみです。今までにTgGRAを搭載したICT(TgGRA7-ICT)がヒトのトキソプラズマ症に使用されたことはありません。今回、ヒト血清88検体を用いてTgGRA7-ICTの有効性を評価しました。TgGRA7を搭載したELISA、市販のELISAキット、ラテックス凝集試験(LAT)で得られた結果を比較し、感度、特異性、一致度から判断してTgGRA7-ICTは標準試験と同等の反応性を示すことが明らかとなりました。TgGRA7-ICT上に検出されるバンドの濃さはELISAの結果で得られる抗体レベルの値と性の相関を示しました。今回の結果は、TgGRA7-ICTがヒトのトキソプラズマ症の診断に効果を発揮し、本感染症の定期的な検査に有効であることが示唆されました。本研究結果の一部は、新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 (AMED: JP19fk0108047)の研究助成で実施しました。

Ybañez RHD, Nishikawa Y.  

Serological detection of T. gondii infection in humans using an immunochromatographic assay based on dense granule protein 7.

Parasitol Int. 2020 Feb 21;76:102089. doi: 10.1016/j.parint.2020.102089. 

PMID: 32092466


2020年2月:論文発表  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=PMID%3A+32037381

論文名:トキソプラズマのデンスグラニュル抗原TgGRA7を搭載したイムノクロマトテストを用いたネコにおけるトキソプラズマ感染の抗体検出

トキソプラズマは世界で最も一般的な寄生虫症の一つであるトキソプラズマ症を引き起こします。トキソプラズマのGRA7タンパク質(TgGRA7)は寄生胞や寄生胞膜及びシスト壁に必要な構成要素です。TgGRA7は酵素結合免疫吸着測定法 (ELISA) の抗原として利用されてきましたが、イムノクロマトテスト(ICT)への応用はブタでの使用が試されたのみです。今までにTgGRAを搭載したICT(TgGRA7-ICT)がネコのトキソプラズマ感染の診断に使用されたことはありません。今回、ネコの血清100検体を用いてTgGRA7-ICTの有効性を評価しました。TgGRA7あるいは原虫ライセートを搭載したELISA、市販のラテックス凝集試験(LAT)で得られた結果を比較し、感度、特異性、一致度から判断してTgGRA7-ICTは標準試験と同等の反応性を示すことが明らかとなりました。今回の結果は、TgGRA7-ICTがネコのトキソプラズマ症の診断に効果を発揮し、本感染症の定期的な検査に有効であることが示唆されました。本研究結果の一部は、新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業 (AMED:JP19fk0108047)の研究助成で実施しました。

Ybañez RHD, Kyan H, Nishikawa Y. 

Detection of antibodies against Toxoplasma gondii in cats using an immunochromatographic test based on GRA7 antigen. J Vet Med Sci. 2020 Feb 7. doi: 10.1292/jvms.19-0654. [Epub ahead of print] PMID: 32037381


2020年4月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=PMID%3A+31881363

論文名:ウシネオスポラ症の血清学診断に有効な原虫抗原の評価

ネオスポラ感染により引き起こされる流産や繁殖障害はウシなどの家畜産業に大きな経済的損失を与えます。これまでにネオスポラ感染による流産を調べることのできる血清診断方法は報告されていません。本研究では、各種ネオスポラ抗原のウシの流産に関連する診断への有効性を評価しました。5つの候補抗原 (NcGRA6, NcGRA7, NcGRA14, NcCyP, NcSAG1) を酵素結合免疫吸着測定法 (ELISA) へ搭載し、ネオスポラを実験感染させたマウス及びウシの血清を用いて比較解析を行いました。そこで選択された3つの抗原 (NcSAG1, NcGRA7, and NcGRA6) については、ネオスポラ症発症により流産を起こしたウシ由来の血清を用いて追加の解析を実施し、NcSAG1とNcGRA7の診断用抗原としての有効性が確認されました。ネオスポラ症による流産が発症した農家では、流産発生牛におけるNcSAG1とNcGRA7の抗体レベルは優位に高くなっていました。牛妊娠期における特異抗体レベルの変動を追跡したところ、分娩前後におけるNcSAG1とNcGRA7の抗体レベルの急上昇が確認されました。その一方で、子牛の神経症状の有無によるNcSAG1とNcGRA7の抗体レベルの差は認められませんでした。以上の結果により、NcSAG1とNcGRA7はネオスポラ感染によるウシの流産に関与する何らかのマーカー分子であることが推測されました。本研究はJA士幌町、北海道家畜保健衛生所、South Valley大学(エジプト)などとの共同研究の成果であり、基盤研究(B)(一般)(日本学術振興会:15H04589, 18H02335)、JSTバリュープログラム (VP29117937665)、伊藤記念財団の研究助成で実施しました。

Abdelbaky HH, Nishimura M, Shimoda N, Hiasa J, Fereig RM, Tokimitsu H, Inokuma H, Nishikawa Y. 

Evaluation of Neospora caninum serodiagnostic antigens for bovine neosporosis. 

Parasitol Int. 2020 Apr;75:102045. doi: 10.1016/j.parint.2019.102045. PMID: 31881363


2020年2月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=PMID%3A+31634631

論文名:モンゴルにおけるヒツジとヤギのトキソプラズマ感染の血清疫学調査

トキソプラズマ症はトキソプラズマ原虫の感染により引き起こされます。生肉や加熱不十分な食肉を摂取することは、ヒトにおける大きな感染要因となります。モンゴルでは、ヤギやヒツジ由来の肉製品が主に消費されますが、これら小型反芻獣におけるトキソプラズマ感染の疫学調査は進んでいません。本研究では、トキソプラズマ抗原TgGRA7を搭載した酵素結合免疫吸着測定法 (ELISA)によりモンゴルにおけるヤギとヒツジのトキソプラズマ感染を調査しました。ヤギ(首都と17県から1,078検体)とヒツジ(首都と21県から882検体)の血清サンプルを解析したところ、トキソプラズマ抗体の陽性率はヤギで32%、ヒツジで34.8%でした。ヤギの感染率は西部(42.7%)と東部(45.6%)で高く、ヒツジの感染率は東部(55.4%)で高い結果が得られました。ヤギにおける感染要因は年齢であることが推測されましたが、ヒツジでは年齢や性別は感染要因とはなりませんでした。今回の結果はモンゴルの小型反芻獣においてトキソプラズマの感染が蔓延している可能性を示しており、全国レベルでの感染コントロールの必要性が示唆されました。本研究はモンゴル生命科学大学・獣医学研究所(モンゴル)などとの共同研究の成果であり、the Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development (SATREPS)(AMED/JICA:17jm0110006h0005)、伊藤記念財団の研究助成で実施しました。

Pagmadulam B, Myagmarsuren P, Yokoyama N, Battsetseg B, Nishikawa Y. 

Seroepidemiological study of Toxoplama gondii in small ruminants (sheep and goat) in different provinces of Mongolia. 

Parasitol Int. 2020 Feb;74:101996. doi: 10.1016/j.parint.2019.101996. PMID: 31634631.

2019年9月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=PMID%3A+31506064

論文名:マウス初代脳細胞におけるトキソプラズマ感染へのCCR5依存的応答に関するトランスクリプトーム解析

CCケモカイン受容体5(CCR5)を含むケモカイン系は、細胞の遊走や活性化だけでなく神経機能への作用も近年明らかになりつつあります。トキソプラズマ感染時、CCR5欠損(CCR5KO)マウスでは野生型(WT)と比べ、死亡率や脳内シスト数の増加が報告されています。当研究室でも、マウス脳組織の網羅的発現解析により、CCR5とそのリガンドCCL5の発現が感染に応答して上昇することを報告しています。本研究では、原虫感染へのCCR5依存的応答の詳細を調べるため、マウス胎仔脳からアストロサイト、ミクログリア、ニューロンを分化誘導し、原虫感染後24時間で細胞種ごとにRNA-seqを実施しました。さらに、原虫感染マウスの脳組織を用い、初代脳細胞の解析で見出されたCCR5依存的な感染応答遺伝子の発現、および脳内原虫数の定量を行いました。RNA-seqでは、ニューロンでは他の細胞種に比べその数は少なかったものの、各細胞種とも免疫関連遺伝子を含む遺伝子群にCCR5依存的な発現上昇が認められました。これらの遺伝子のほとんどは、脳組織の解析では感染による発現変動はあってもCCR5欠損の影響は見られず、脳内原虫数にもマウス系統間で有意差は見られませんでした。その中で、炎症性タンパク質の一種、血清アミロイドA3(Saa3)のみCCR5依存的な発現上昇を示しました。これは脳内の炎症がCCR5の欠損によって一部抑制されたことを示唆しています。また、その他の遺伝子で、初代脳細胞に見られたCCR5依存的な発現変動が脳組織で見られなかったことは、脳細胞種同士や末梢からの浸潤細胞の作用により細胞種特異的な反応が隠蔽されたことを示唆しています。これらは局所的な病態の制御にCCR5が一定の役割を果たす可能性を示し、本研究によって原虫感染時の脳におけるCCR5の機能の一端が明らかになりました。本研究は東京大学大学院新領域創成科学研究科などとの共同研究の成果であり、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会:2011/LS003)、挑戦的萌芽研究(日本学術振興会:JP15K15118), 挑戦的研究(萌芽)(日本学術振興会:JP17K19538)、若手研究(B) (日本学術振興会:JP17K17570)、新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(AMED、17fk0108120h0001)の研究助成で実施しました。

Kobayashi K, Umeda K, Ihara F, Tanaka S, Yamagishi J, Suzuki Y, Nishikawa Y. 

Transcriptome analysis of the effect of C-C chemokine receptor 5 deficiency on cell response to Toxoplasma gondii in brain cells. 

BMC Genomics. 2019 Sep 11;20(1):705. doi: 10.1186/s12864-019-6076-4. PMID: 31506064


2019年8月:論文発表

論文名:クリプトスポリジウム・パルバム感染子牛の腸内細菌叢におけるフソバクテリウム属細菌の特異的な増加

腸内環境は動物の健康に重要な働きをしますが、腸内環境の構成成分の変化は下痢症と関連します。しかしながら、ウシの下痢症を引き起こすクリプトスポリジウム原虫の感染は腸内環境を変化させるのかについては分かっていません。本研究では、クリプトスポリジウム・パルバム(Cryptosporidium parvum)が感染した子牛の腸内細菌叢の変化を解析しました。クリプトスポリジウム感染群、ロタウイルス感染群、これら病原体非感染群の糞便サンプルをメタゲノム解析により比較したところ、フソバクテリウム属細菌の割合がクリプトスポリジウム感染により増加することが示されました。さらに、クリプトスポリジウムとフソバクテリウム属細菌が共存することにより、下痢症状が悪化していました。地理的に離れている場所(北海道、岩手、沖縄)からのサンプルを解析しても、フソバクテリウム属細菌とクリプトスポリジウム感染の相関性が認めれられました。今回の結果により、腸内細菌叢内のフソバクテリウム属細菌の増加はクリプトスポリジウム症の悪化要因になることが示唆されました。本研究は岩手大学農学部、大阪大学微生物病研究所などとの共同研究の成果であり、帯広畜産大学原虫病研究センター共同研究費 (27-joint-2, 28-joint-6)、大阪大学微生物病研究所共同研究費の研究助成で実施しました。

Ichikawa-Seki M, Motooka D, Kinami A, Murakoshi F, Takahashi Y, Aita J, Hayashi K, Tashibu A, Nakamura S, Iida T, Horii T, Nishikawa Y. 

Specific increase of Fusobacterium in the faecal microbiota of neonatal calves infected with Cryptosporidium parvum. 

Sci Rep. 2019 Aug 29;9(1):12517. doi: 10.1038/s41598-019-48969-6. PMID: 31467354

2019年8月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=PMID%3A+31404078

論文名:トキソプラズマ慢性感染期の脳病態と宿主の行動変化におけるToll-like receptor 2の関与

トキソプラズマの慢性感染は宿主の中枢神経系を障害し、さまざまな行動の変化を引き起こします。我々は最近、Toll-like receptor2(TLR2)が急性期の神経炎症の誘導に重要であることを報告しましたが、慢性期の脳病態への関与は依然不明です。そこで本研究では、野生型(WT)およびTLR2欠損(TLR2KO)マウスを用いて、トキソプラズマ感染によるマウスの脳病態や行動への影響を比較することで、慢性期におけるTLR2の役割を明らかとすることを目的としました。WTおよびTLR2KOマウスに非感染群、トキソプラズマ(PLK株)感染群を設定し、感染群における病理組織学的な病変、脳内原虫量、および脳組織中の炎症性サイトカイン類の遺伝子発現量を比較しました。次に、感染30日後からマウスの行動を評価する3種の行動実験を実施しました。病理学的な解析の結果、慢性期における脳組織の病変はWTとTLR2KO間で同程度に観察されましたが、感染30日後の脳内原虫量はTLR2KOマウスで有意に増加していました。また、炎症性サイトカイン類(インターロイキン12p40、iNOSなど)の発現量に差は認められませんでした。行動実験の結果、非感染群間の比較ではTLR2の欠損により、不安の増強と恐怖記憶の亢進が示されました。一方、感染群間ではTLR2KOマウスにおいて、感染による恐怖記憶障害の部分的な回復が認められました。以上のことから、TLR2は慢性期の脳内の炎症レベルや組織障害への関与は少ないが、原虫数を抑制する働きを持つことが示されました。また、トキソプラズマ感染による宿主の恐怖記憶障害は部分的にTLR2依存的な応答によることが示唆されました。慢性的な神経炎症は核内因子κB経路を活性化させ、恐怖記憶を阻害することから、トキソプラズマ感染による慢性期の神経障害にTLR2が一定の役割を担っていることが考えられました。本研究は最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会:2011/LS003)、挑戦的萌芽研究(日本学術振興会:JP15K15118), 挑戦的研究(萌芽)(日本学術振興会:JP17K19538)、スタートアップ(日本学術振興会:24880006)、若手研究(日本学術振興会:15J03171, 18K14577, JP17K17570)、新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(AMED、17fk0108120h0001)の研究助成で実施しました。の研究助成で実施しました。

Ihara F, Tanaka S, Fereig RM, Nishimura M, Nishikawa Y. 

Involvement of Toll-like receptor 2 in the cerebral immune response and behavioral changes caused by latent Toxoplasma infection in mice. 

PLoS One. 2019 Aug 12;14(8):e0220560. doi: 10.1371/journal.pone.0220560. PMID: 31404078


2019年6月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=PMID%3A+31188858

論文名:フィリピン・セブ島におけるトキソプラズマ感染の疫学調査と感染要因の解析

トキソプラズマの感染は世界中に広がっていますが、フィリピンでの感染の実態は分かっていません。今回、フィリピン・セブ島におけるトキソプラズマ感染の血清疫学調査を行いました。ヒト、ネコ、ブタを対象に疫学調査を実施し、トキソプラズマの感染実態を明らかにしました(抗体陽性率:ヒト(26.3%)、ネコ(42.3%)、ブタ(13.4%))。ヒトへの感染リスク要因として、ネコとの接触、豚肉など屋台の食べ物の摂食が推測されました。今回の結果はフィリピンにおけるトキソプラズマ感染のリスクを示しており、今後の公衆衛生的なコントロールの必要性が示されました。本研究はフィリピン大学・セブ校、セブ工科大学、Visayas大学との共同研究の成果であり、寿原記念財団の研究助成で実施しました。

Ybañez RHD, Busmeon CGR, Viernes ARG, Langbid JZ, Nuevarez JP, Ybañez AP, Nishikawa Y. 

Endemicity of Toxoplasma infection and its associated risk factors in Cebu, Philippines. 

PLoS One. 2019 Jun 12;14(6):e0217989. doi: 10.1371/journal.pone.0217989. PMID: 31188858

2019年6月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=PMID%3A+31194962

論文名:ヒトコブラクダに感染している原虫とトリコストロンギルス属線虫の分子同定

ラクダに感染する寄生虫の多様性についてはほとんど分かっていないのが現状で、一般的には形態学的な解析がなされています。今回、エジプトのヒトコブラクダ由来の心臓組織と糞便からDNAを抽出し、寄生虫の検査を行いました。PCR検査の結果、Toxoplasma gondii (1.1%)、Sarcocystis spp. (64.4%)、Cryptosporidium spp. (5.9%)、Trichostrongylidae nematodes (22.7%)の感染が確認されました。線虫の中では、Haemonchus spp. (95.6%)、Trichostrongylus axei (26%)、Trichostrongylus colubriformis (65.2%)、Cooperia oncophora (60.8%)の感染が認められました。今回の結果により、ヒトコブラクダには様々な種類の寄生虫が感染していることが明らかになりました。本研究はMansoura大学獣医学部(エジプト)との共同研究の成果です。

El-Alfy ES, Abu-Elwafa S, Abbas I, Al-Araby M, Al-Kappany Y, Umeda K, Nishikawa Y. 

Molecular screening approach to identify protozoan and trichostrongylid parasites infecting one-humped camels (Camelus dromedarius). 

Acta Trop. 2019 Jun 10:105060. doi: 10.1016/j.actatropica.2019.105060. [Epub ahead of print] PMID: 31194962


2019年4月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=PMID%3A+31437553

論文名:モンゴルの土壌サンプルから分離された放線菌を用いた抗原虫活性を有する化合物の同定と解析

天然生物資源は感染症に対する様々な治療薬の源になっており、その中でも放線菌は土壌や海に存在しています。本研究ではモンゴルの土壌サンプルから分離された4種類の放線菌を用いて、抗原虫活性の解析を行いました。その中で、Streptomyces canus N25株の粗抽出サンプルに抗トキソプラズマ活性と抗マラリア活性があることが明らかとなりました。高分解能LC/MSを用いた解析により活性画分からphenazine-1-carboxylic acid(PCA)を同定し、トキソプラズマ(IC50: 55.5 µg/ml)および熱帯熱マラリア原虫(IC50: 6.4 µg/ml)に対する増殖阻害効果を確認しました。本研究により、モンゴルでの土壌放線菌は抗原虫薬の有望な生物資源であることが示唆され、PCAの今後の詳細な解析が期待されます。本研究は微生物化学研究所との共同研究の成果であり、寿原記念財団の研究助成で実施しました。

Pagmadulam B, Tserendulam D, Rentsenkhand T, Igarashi M, Sawa R, Nihei CI, Nishikawa Y. 

Isolation and characterization of antiprotozoal compound-producing Streptomyces species from Mongolian soils. 

Parasitol Int. 2019 Aug 19;74:101961. doi: 10.1016/j.parint.2019.101961. PMID: 31437553

2019年4月:論文発表 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S138357691830165X?via%3Dihub

Development of CpGP15 recombinant antigen of Cryptosporidium parvum for detection of the specific antibodies in cattle.

Parasitol Int. 2019 Apr;69:8-12. doi: 10.1016/j.parint.2018.10.013. Epub 2018 Nov 1.

PMID: 30391553

論文名:ウシにおけるクリプトスポリジム・パルバム特異抗体を検出するためのCpGP15組換え抗原の作製

子牛におけるクリプトスポリジム・パルバム(Cryptosporidium parvum)の感染は激しい下痢症を引き起こし発育不良につながることから、経済的損失が大きい疾患です。本疾病対策には早期診断による衛生管理が必須であり、汚染地域を把握するためには血清疫学調査が有効です。これまでにCpP23が診断用抗原として知られていますが、実際の感染牛に対する反応性が認められな場合も存在していました。そこで本研究では有用な診断用抗原の同定を目的に、CpP23に加えてCpGP15, CpP2 そしてCpGP60についてELISAによる抗原性の比較解析を行いました。CpP23 とCpGP15はクリプトスポリジム・パルバム感染の標準牛血清に対し優れた反応性を示し、2つの抗原の結果を組み合わせると特異性が100%に上昇しました。今回の結果は野外血清サンプルを用いた解析の際に疑陰性の可能性を回避できることになり、CpP23 とCpGP15を用いたELISAによる農場の検査の有用性を示唆しています。本研究結果はエジプト・South Valley大学などとの共同研究の成果であり、一部は帯広畜産大学原虫病研究センター共同研究経費(27-joint-2, 28-joint-6)、基盤研究(B)(海外学術調査)(文部科学省:26304037)、研究成果最適展開支援プログラム A-STEP(科学技術振興機構:AS242Z03137P)の研究助成で実施しました。

Ichikawa-Seki M, Fereig RM, Masatani T, Kinami A, Takahashi Y, Kida K, Nishikawa Y.

2019年3月:学生表彰

当研究室所属の西田朱里さんが大学表彰、森高智弥君が日本獣医師会表彰を受けました。

Neospora GRA6 possesses immune-stimulating activity and confers efficient protection against Neospora caninum infection in mice.

Vet Parasitol. 2019 Mar;267:61-68. doi: 10.1016/j.vetpar.2019.02.003. 

PMID: 30878088

2019年3月:論文発表 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304401719300457?via%3Dihub

論文名:免疫活性化能を有するネオスポラGRA6はネオスポラ感染に対する防御免疫を誘導する

牛ネオスポラ症の対策にはコストの面からもワクチン開発が重要とされていますが、現在市販されているワクチンはありません。今回、新しいワクチン開発戦略の一つとして免疫活性化能を有するタンパク質を用いたサブユニットワクチンの検証を行いました。ネオスポラ(Neospora caninum)のデンスグラニュルタンパク質6(NcGRA6)をマウスマクロファージに作用させると、炎症性サイトカインIL-12の産生を誘導しました。そこでNcGRA6の免疫活性化能に着目し、アジュバントを使用することなくNcGRA6の単独免疫で感染防御効果を得ることに成功しました。NcGRA6の免疫により抗原特異的な抗体産生と細胞性免疫を誘導することが可能で、マウスの感染実験において90%以上のマウスが生存する結果を示しました(コントロールの生存率は16.7%)。従って、NcGRA6はネオスポラのワクチン開発に有望な抗原であることが示されました。本研究結果はエジプト・South Valley大学との共同研究の成果であり、一部は基盤研究(B)(一般)(日本学術振興会:15H04589, 18H02335)の研究助成で実施しました。

Fereig RM, Shimoda N, Abdelbaky HH, Kuroda Y, Nishikawa Y.

Critical role of TLR2 in triggering protective immunity with cyclophilin entrapped in oligomannose-coated liposomes against Neospora caninum infection in mice.

Vaccine. 2019 Feb 8;37(7):937-944. doi: 10.1016/j.vaccine.2019.01.005. 

PMID:30660401

2019年2月:論文発表 https://link.springer.com/article/10.2478%2Fs11686-019-00036-w

論文名:タイ薬草エタノール抽出物のマラリア原虫とトキソプラズマに対する増殖抑制効果の検証

タイでは健康のために伝統的な薬草が使われています。本研究では7種類のタイの薬草からエタノール抽出エキスを調整し、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)とトキソプラズマ(Toxoplasma gondii)に対する薬効を培養試験で評価しました。K. parviflora, P. palatiferum と A. muricataの抽出エキスは熱帯熱マラリア原虫に対し効果を示し、K. parviflora と M. sapientum (ripe fruit peel) の抽出エキスはトキソプラズマの増殖を阻害しました。今回の結果はタイの薬草は抗原虫薬の創薬シーズになる可能性を示しています。本研究はタイ・マヒドン大学獣医学部との共同研究であり、一部は寿原記念財団の研究助成により実施しました。

Leesombun A, Boonmasawai S, Nishikawa Y.

Ethanol Extracts from Thai Plants have Anti-Plasmodium and Anti-Toxoplasma Activities In Vitro.

Acta Parasitol. 2019 Feb 28. doi: 10.2478/s11686-019-00036-w. 

PMID: 30820881

2019年2月:論文発表 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0264410X19300362?via%3Dihub

論文名:サイクロフィリン封入オリゴ糖リポソームはTLR2依存的にネオスポラ感染に対する防御免疫を誘導する

ネオスポラ(Neospora caninum)はウシの流産を引き起こす病原性原虫です。ネオスポラの蔓延は畜産業に経済的損失をもたらしますが、ワクチンや治療薬などは開発されていません。我々のこれまでの研究により、ワクチン抗原をオリゴ糖リポソーム内へ封入することで効果的な防御免疫を誘導できることが明らかとなっています。今回、ネオスポラのサイクロフィリンを封入したオリゴ糖リポソーム(NcCyp-OML)を作製し、ワクチン効果を検証しました。NcCyp-OMLをマクロファージに作用させるとNF-κBを活性化し、炎症性サイトカインIL-12の産生を促進させるました。NcCyp-OMLの免疫により抗原特異的な抗体産生と細胞性免疫を誘導することが可能で、マウスの感染実験において感染マウスの生存率を優位に向上させました。このワクチン効果はToll様受容体2(TLR2)欠損マウスでは認められなかったことから、NcCyp-OMLの効果を発揮させるためにはTLR2が必要であることが明らかとなりました。今回の結果は、ネオスポラのワクチン開発にはTLR2依存的な免疫誘導が重要であることを示しています。本研究結果はエジプト・South Valley大学との共同研究の成果であり、一部は基盤研究(B)(一般)(日本学術振興会:15H04589, 18H02335)の研究助成で実施しました。

Fereig RM, Abdelbaky HH, Kuroda Y, Nishikawa Y.

Outbreak of toxoplasmosis in four squirrel monkeys (Saimiri sciureus) in Japan.

Parasitol Int. 2019 Feb;68(1):79-86. doi: 10.1016/j.parint.2018.10.008. Epub 2018 Oct 19.

PMID: 30347233

2019年2月:論文発表 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1383576918301612?via%3Dihub

論文名:日本で飼育されているリスザルでのトキソプラズマ症の流行事例

新世界ザルへのトキソプラズマの感染は致死的であり、リスザルにおけるトキソプラズマ症の流行事例が多数報告されています。今回、日本で飼育されているリスザルの死亡例からトキソプラズマ症を同定しました。病理組織学的検査により全身臓器に原虫が認められ、肺水腫と診断しました。感染個体の脳組織から乳剤を作製し、免疫不全マウスへ接種することで原虫株の分離に成功しました。分離株の遺伝子多型解析を行い、タイプII型と一部タイプI型の遺伝子マーカーが検出されました。マウスの病原性試験の結果、標準のタイプII(PLK株)と比較して分離株の病原性の低下が認められました。今回の結果は、日本で初のリスザル由来分離株の解析結果となります。本研究結果はおびひろ動物園、エジプト・South Valley大学、Mansoura大学との共同研究の成果であり、一部は最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会:2011/LS003)、新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(AMED、JP18fk0108010)の研究助成で実施しました。

Nishimura M, Goyama T, Tomikawa S, Fereig RM, El-Alfy EN, Nagamune K, Kobayashi Y, Nishikawa Y.

平成30年12月:メデイア

http://shochou-kaigi.org/interview/interview_61/

国立大学附置研究所・センター会議

【インタビュー】

未踏の領野に挑む、知の開拓者たち vol.61

宿主を支配する微生物 ヒトに蔓延する「顧みられない感染症」の実態に迫る

平成30年12月:論文発表 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1383576917305305?via%3Dihub

論文名:ELISAによるネオスポラのデンスグラニュルタンパク質7の抗原性領域の同定

ネオスポラのデンスグラニュルタンパク質7(NcGRA7)は有用な診断用抗原の一つですが、その抗原性領域については明らかにされていません。本研究では、NcGRA7(全長217アミノ酸)を次の5つの断片として作製し、それぞれの抗原性をマウス、イヌ、ウシの抗ネオスポラ血清を用いて評価しました(NcGRA7m (27-217アミノ酸), NcGRA7m3 (27-160アミノ酸), NcGRA7m4 (27-135アミノ酸), NcGRA7m5 (161-190アミノ酸), and NcGRA7m6 (188-217アミノ酸))。NcGRA7m、NcGRA7m3 とNcGRA7m4はマウスとイヌの抗ネオスポラ血清との反応性を示しました。一方で、ウシの抗ネオスポラ血清と反応したのはNcGRA7mでした。本結果は動物種によって抗原性を示す領域が異なることを示唆しており、免疫学的な解析には対象動物種を考慮する必要があることを示しています。本研究結果はエジプト・South Valley大学との共同研究の成果であり、一部は基盤研究(B)(一般)(日本学術振興会:15H04589)、地域産学バリュープログラム(科学技術振興機構:VP29117937665)、伊藤記念財団(514)の研究助成で実施しました。

Abdelbaky HH, Fereig RM, Nishikawa Y.

Identification of the antigenic region of Neospora caninum dense granule protein 7 using ELISA.

Parasitol Int. 2018 Dec;67(6):675-678. doi: 10.1016/j.parint.2018.06.012. Epub 2018 Jun 27.

PMID: 29959092

平成30年10月:メデイア https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181104-00551094-shincho-life

寄生虫感染で自殺率1・5倍… 成人にもリスクがある「トキソプラズマ」レポート(デイリー新潮)

コメントしています。

平成30年9月:梅田剛佑さんが日本獣医学会学術集会において「獣医寄生虫学奨励賞」を受賞

9月11~13日につくば国際会議場で開催された第161回日本獣医学会学術集会の日本獣医寄生虫分科会において、 当研究室所属の梅田剛佑さん (特任研究員)が、 第9回日本獣医寄生虫学奨励賞を受賞しました。

http://www.obihiro.ac.jp/~protozoa/topics20180925.html

平成30年9月:論文発表 http://aem.asm.org/cgi/pmidlookup?view=long&pmid=30006392

論文名:ネオスポラのデンスグラニュルタンパク質7は宿主の免疫反応を制御することでネオスポラ症の発症に関与している

西川義文准教授が9月7日(水)に開催された第159回日本獣医学会学術集会において,「2016-2017年度日本獣医学会賞」を受賞しました。 

日本獣医学会(中山裕之理事長)は明治18年(1885)に創立された大日本獣医会にその源を発している歴史ある学会です。本学会は獣医学に関する学術研究を振興し,感染症,各種の代謝障害,栄養障害,繁殖障害,公衆衛生などについて多くの業績が挙げられ、近年では野生動物分野ならびに地球生態系保全に関する研究も活発になされています。同学会における日本獣医学会賞は,獣医学領域において顕著な研究業績をあげた正会員に授与されるものです。 

西川先生の受賞研究課題は,「ネオスポラ症の病態発生機序と防御法に関する研究」であり,病原性原虫ネオスポラの病態発症機序を明らかにすることでワクチン開発につながる基礎・応用研究を展開していることが高く評価されたものです。

ネオスポラ症に対する有効な治療法・予防法は開発されていないのが現状であり、ネオスポラ(Neospora caninum)感染に対する治療薬やワクチンの開発は最重要課題の一つです。そのためには、原虫感染の病原性発症メカニズムを理解することが必要です。ネオスポラ感染により誘導される過剰な炎症反応は病態悪化につながることが示唆されています。そこで、過剰な炎症反応を誘発する原虫分子が病原性因子であるという仮説を立て研究を進めました。炎症反応を測定できるスクリーニング系を構築し20種類の原虫因子を調べたところ、3種類の候補分子を得ることができました。次にCRISPR/Cas9を用いた遺伝子編集技術を確立し、それぞれの候補分子を欠損させたネオスポラ原虫を作出しました。マウスの感染実験により、デンスグラニュルタンパク質7(NcGRA7)を欠損させた原虫株は病原性が著しく低下することが判明しました。NcGRA7の機能を解析したところ、NcGRA7は感染細胞内に放出され炎症反応の誘導に関わる様々な細胞応答を活性化していることが明らかとなりました。これらの結果から、ネオスポラから分泌されるNcGRA7が病原性因子として機能し、ネオスポラの病態発症に関与していることが明らかとなりました。ネオスポラの病原性因子の報告は世界初となります。本研究結果はエジプト・South Valley大学との共同研究の成果であり、一部は基盤研究(B)(一般)(日本学術振興会:15H04589, 18H02335)の研究助成で実施しました。

Nishikawa Y, Shimoda N, Fereig RM, Moritaka T, Umeda K, Nishimura M, Ihara F, Kobayashi K, Himori Y, Suzuki Y, Furuoka H.

Neospora caninum Dense Granule Protein 7 Regulates the Pathogenesis of Neosporosis by Modulating Host Immune Response.

Appl Environ Microbiol. 2018 Aug 31;84(18). pii: e01350-18. doi: 10.1128/AEM.01350-18. Print 2018 Sep 15.

PMID: 30006392

平成30年9月:論文発表 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0001706X18303565?via%3Dihub

論文名:クリプトスポリジム特異抗体を検出できるイムノクロマトテストの開発

クリプトスポリジウム(Cryptosporidium parvum)の感染はヒトと子牛の下痢症を引き起こすことから、健康被害と農業経済的な損失に繋がります。クリプトスポリジウムの診断は、糞便サンプルからのオーシスト、DNA、抗原の同定よりなされています。クリプトスポリジウム特異抗体の検出は感染の履歴を追跡できることから、本感染症のサーベイランスに適した方法です。今回、現場での使用を想定し、クリプトスポリジム特異抗体を検出できるイムノクロマトテスト(ICT)の作製を行いました。CpP23とCpGP15を搭載したICTを作製しウシ血清で反応性を評価したところ、クリプトスポリジム・パルバム感染の標準牛血清に対し優れた反応性を示し、同一抗原を用いたELISAと高い一致度を示しました。クリプトスポリジウム特異抗体を検出できるICTの作製は成果初の報告となり、フィールドでの応用が期待されます。本研究結果はエジプト・South Valley大学との共同研究の成果であり、一部は基盤研究(B)(一般)(日本学術振興会:15H04589)、伊藤記念財団(514)の研究助成で実施しました。

Fereig RM, Abdelbaky HH, Ihara F, Nishikawa Y.

Development and evaluation of the first immunochromatographic test that can detect specific antibodies against Cryptosporidium parvum.

Acta Trop. 2018 Sep;185:349-356. doi: 10.1016/j.actatropica.2018.06.019. Epub 2018 Jun 19.

PMID: 29932929

平成29年12月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29136637

Toll-like receptor (TLR) 2はTLRファミリーに属する受容体タンパク質で、トキソプラズマに対する防御免疫の作動に不可欠であることが知られています。また神経炎症等に関連し、中枢神経系におけるその病理学的な機能の研究も進みつつあります。本研究ではトキソプラズマ感染時、脳細胞でTLR2が担う機能の解明を目指し、TLR2欠損マウスを用いたトランスクリプトーム解析を行いました。TLR2欠損型および野生型マウスの脳組織からアストロサイト(AS)、ミクログリア(MG)、ニューロン(Neu)を採取、培養し、トキソプラズマ PLK株のタキゾイトを感染後、mRNAを抽出してRNA-seq解析を行いました。まず非感染細胞と比較して感染細胞で発現が変動した遺伝子を抽出し、さらにその発現変動遺伝子を細胞種ごとにTLR2欠損型と野生型で比較解析しました。ASおよびMGでは、野生型で感染により発現が変動した遺伝子の多くがTLR2欠損型では変動が見られなくなりました。一方Neuでは、他の細胞種に比べてTLR2の欠損により発現が変動しなくなる遺伝子の数が少なくなりました。発現変動が見られなくなった遺伝子に対してGene Ontology(GO)解析を行ったところ、ASとMGではともに免疫応答に関連したGOが上位を占めましたが、Neuでは核や代謝関連のGOが上位に現れ、免疫関連は順位を下げました。これらの結果から、ASやMGでは免疫細胞と同様、TLR2がトキソプラズマに対する防御免疫に重要であることが示されました。また、生体内でNeuには他の細胞種よりも原虫の感染が多いことが知られていますが、これはTLR2を介した原虫に対する防御経路をNeuが欠いているためであることが示唆されました。本研究の結果は、トキソプラズマ感染における脳神経系の役割の理解に貢献すると考えます。本論文発表は、以下の研究費による研究成果です。

This research was supported by the Japan Society for the Promotion of Science (JSPS) through the Funding Program for Next Generation World-Leading Researchers (NEXT Program), initiated by the Council for Science and Technology Policy (2011/LS003) (YN) and JSPS KAKENHI (Grant-in-Aid for Research Activity Start-up JP24880006 [ST], Grant-in-Aid for Young Scientists (B) JP17K17570 [KU], Grant-in-Aid for Exploratory Research JP15K15118 [YN] and Challenging Research (Exploratory) 17K19538 [YN]).

Umeda K, Tanaka S, Ihara F, Yamagishi J, Suzuki Y, Nishikawa Y*. 

Transcriptional profiling of Toll-like receptor 2-deficient primary murine brain cells during Toxoplasma gondii infection. 

PLoS One. 2017 Nov 14;12(11):e0187703. doi: 10.1371/journal.pone.0187703. PMID: 29136637 *Corresponding author

平成29年6月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=PMID%3A+28630065

細胞内寄生原虫トキソプラズマの妊娠期の感染は流産や胎児への先天性トキソプラズマ症を引き起こし、重篤化します。しかし、感染による流産発症メカニズムは明らかになっていません。今回、トキソプラズマ感染によるマウスの流産モデルを確立し、その病態について解析しました。妊娠子宮組織の遺伝子発現解析により、ケモカイン受容体CCR5の感染依存的な発現上昇が認められました。そこで、CCR5遺伝子欠損(CCR5KO)マウスと野生型マウスを用い、トキソプラズマ感染による妊娠期病態を比較しました。野生型マウスの妊娠3日めにトキソプラズマを感染させると、すべての個体で胚の発育不良とアポトーシスが認められました。一方、CCR5KOマウスでは胚の生存率が上昇し、妊娠10日めで約8割の個体で妊娠が維持されていました。この病態メカニズムにはCCR5とそのリガンドの相互作用が推測され、天然型リガンドのRANTES (CCL5)あるいは原虫由来リガンドCyclophilin-18の関与が示唆されます。これら受容体とリガンドの相互作用を標的とした創薬は、先天性トキソプラズマ症の対策に貢献すると思われます。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会:2011/LS003)の研究成果です。

Nishimura M, Umeda K, Suwa M, Furuoka H, Nishikawa Y*.

 CCR5 is Involved in Interruption of Pregnancy in Mice Infected with Toxoplasma gondii During Early Pregnancy. 

Infect Immun. 2017 Jun 19. pii: IAI.00257-17. doi: 10.1128/IAI.00257-17. PMID: 28630065 *Corresponding author

平成29年4月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28465107

トキソプラズマの感染は世界の公衆衛生の諸問題に大きな影響を与えています。トキソプラズマ症は精神疾患、神経疾患、視神経に傷害を与えることが知られています。トキソプラズマの感染は世界中に広がっていますが、その中でもインドネシアのヒトにおける感染率は50%を超えています。インドネシアは大小さまざまな島から構成されており、今回はスラウェシ島北部のヒト、ブタ、ウシにおけるトキソプラズマ感染状況を調査しました。ヒト血清サンプル(856検体)の58.5%がトキソプラズマ陽性で、男性と女性間での陽性率に差は認められませんでした。0〜9歳では感染率が10%以下でしたが、10歳以上から感染率が40%以上に増加していました。感染源として食肉に着目しブタとウシの感染率を調査したところ、それぞれ2.3%と14.9%でした。以上の結果は、スラウェシ島北部のヒトにはトキソプラズマ感染が蔓延しており、本地域の感染要因を特定する必要があることを示しています。本研究結果は、インドネシア・サムラトランギ大学との共同研究の成果です。また本論文発表は、基盤研究(B)(海外学術調査)(文部科学省)(26304037)の研究成果です。

Tuda J, Adiani S, Ichikawa-Seki M, Umeda K, Nishikawa Y*. 

Seroprevalence of Toxoplasma gondii in humans and pigs in North Sulawesi, Indonesia. Parasitol Int. 2017 Oct;66(5):615-618. doi:10.1016/j.parint.2017.04.011.PMID: 28465107 *Corresponding author

平成29年4月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28448521

病原性原虫トキソプラズマのワクチンを開発するためには、免疫活性化能をもつワクチン抗原を使用することが有効であると考えられます。本研究では、トキソプラズマのペルオキシレドシン1(TgPrx1)が免疫活性化能と防御免疫効果を持つことを見出しました。TgPrx1を免疫細胞マクロファージ作用させたところ、免疫活性化に重要なNF-kBシグナルを活性化し、炎症性サイトカインの産生を誘導しました。この結果は、TgPrx1が免疫活性化を誘導するアジュバント効果を持つことを示しています。TgPrx1をマウスに免疫すると、抗原特異的な抗体産生とリンパ球の活性化が認められました。さらに、TgPrx1を免疫したマウスはトキソプラズマの感染に対し抵抗性を示し、原虫の脳内感染を減少させマウスの生存率が増加しました。以上より、TgPrx1のような免疫活性化能をもつ抗原はワクチン開発に有効であることが示されました。本論文発表は、基盤研究(B)(文部科学省:15H04589)の研究成果です。

Fereig RM, Kuroda Y, Terkawi MA, Mahmoud ME, Nishikawa Y*. 

Immunization with Toxoplasma gondii Peroxiredoxin 1 Induces Protective Immunity against Toxoplasmosis in Mice. 

PLoS One. 2017 Apr 27;12(4):e0176324.  *Corresponding author

平成29年1月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28138019

細胞内寄生原虫のトキソプラズマの感染は、ヒトにおける精神疾患の発症に関与することが考えられています。我々の研究室では、トキソプラズマ感染がうつ様症状の発症を引き起こすことをマウス実験モデルで明らかにしています(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26554725)。今回の研究では、トキソプラズマに対する免疫応答がうつ様症状の発症を誘導することを明らかにしました。トキソプラズマに対する防御免疫反応には、炎症性サイトカインのインターフェロン・ガンマ(IFN-γ)が必要です。トキソプラズマ感染により、IFN-γが細胞に作用することでインドールアミン酸素添加酵素(Indoleamine 2,3-dioxygenase: IDO)が活性化され、トリプトファンの代謝が亢進してキヌレニンが産生されることを確認しました。キヌレニンはうつ病をはじめ様々な精神疾患全般の原因として考えられています。トキソプラズマ感染は上記の経路を誘導し、宿主動物にうつ様症状が発症すると示唆されました。さらに、このうつ様症状は抗炎症剤やIDO阻害薬で抑えることができました。宿主免疫応答は病原体の排除に重要ですが、その副反応の一つとして精神疾患の発症に関与することに注意しなければならないと考えられます。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会:2011/LS003)、挑戦的萌芽研究(文部科学省:15K15118)の研究成果です。

Mahmoud ME, Fereig R, Nishikawa Y*. 

Involvement of host defense mechanisms against Toxoplasma gondii infection in anhedonic and despair-like behaviors in mice. 

Infect Immun. 2017 Jan 30. PMID: 28138019. *Corresponding author

平成29年1月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28137670

細胞内寄生原虫ネオスポラは世界中に蔓延しており、特にウシに流産を引き起こすことから畜産業に多大な経済損失が生じます。未だにネオスポラに対する治療薬は開発されておらず、効果的で安全性の高い創薬が必要とされています。天然生物資源は創薬に高い可能性を秘めていることから、今回はタイ産コショウ科植物の抗ネオスポラ効果を検証しました。3種の植物(Piper betle, Piper nigrum, Piper sarmentosum)のエタノール抽出物における効果を比較したところ、Piper betleでin vitroのネオスポラ増殖を抑制しました(IC50: 22.1μg/ml)。次にネオスポラ感染マウスを用いて検証したところ、コントロール群では致死率100%に対し、Piper betleの投与で生存率の上昇が認められました(400mg/kg投与:83.3%、100mg/kg投与:33.3%)。以上より、Piper betleには抗ネオスポラ活性を有する成分が含まれており、将来的な創薬の可能性が示されました。本論文発表は、タイ・マヒドン大学との共同研究の成果です。

Leesombun A, Boonmasawai S, Nishikawa Y*. 

Effects of Thai piperaceae plant extracts on Neospora caninum infection. 

Parasitol Int. 2017 Jan 27. PMID: 28137670. *Corresponding author

平成28年12月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27644889

トキソプラズマ症はヒトや家畜動物に重篤な疾病であり、細胞内寄生原虫トキソプラズマの感染により引き起こされます。トキソプラズマ感染を予防するためにはワクチンの開発が必要とされています。最近の研究では、ワクチン抗原の候補分子として原虫由来酵素の有効性が示されています。本研究では抗酸化作用をもつペルオキシレドキシン(Peroxiredoxin)に着目し、免疫活性化能とワクチンとしての可能性を検証しました。トキソプラズマ由来Peroxiredoxin 3(TgPrx3)の組換えタンパク質を作製し、マクロファージへ作用させたところ、免疫活性化に重要なインターロイキン12の産生を誘導しました。この結果は、TgPrx3の単独接種により、効果的な免疫反応を誘導できる可能性を示唆しています。そこでマウス感染モデルによるワクチン評価試験を実施したところ、TgPrx3接種マウスはTgPrx3特異的な抗体産生と細胞性免疫を誘導し、トキソプラズマ感染に対してマウスの生存率を増加させる結果を得ることができました。今回の結果により、TgPrx3が新規のワクチン抗原になる可能性が示されました。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会:2011/LS003)、基盤研究(B)(文部科学省:15H04589)の研究成果です。

Fereig RM, Nishikawa Y*. 

Peroxiredoxin 3 promotes IL-12 production from macrophages and partially protects mice against infection with Toxoplasma gondii. 

Parasitol Int. 2016 Dec;65(6 Pt A):741-748. PMID: 27644889 *Corresponding author

平成28年10月:論文発表 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27789159

ウシに重篤な病気を引き起こし、節足動物(ダニやハエなど)により媒介される病原体にバベシア(Babesia bovis, Babesia bigemina)、トリパノソーマ(Trypanosoma evansi)、アナプラズマ(Anaplasma marginale)が挙げられます。近年、エジプト北部で上記病原体の高い感染率が明らかにされていますが、エジプト北部での実態は明らかでありません。そこで本研究では、エジプト北部のウシを対象に血清学診断法による抗体調査を行いました。301検体中、B. bovis 陽性が27検体 (9.0%)、B. bigemina陽性が100検体 (33.2%)、T. evansi陽性が127 検体(42.2%)検出されました。また、A. marginale陽性は90検体中25検体 (28%)が陽性でした。解析した検体には各種病原体が共感染しているもの多く、B. bigeminaT. evansi の共感染が 10.6% (32/301)認められました。感染リスク要因を解析したところ、3歳以下のウシはB. bovisに感染しやすく、B. bigemina感染には地理的要因が関与することが明らかとなりました。以上の結果より、これら感染症はエジプト北部の畜産業に大きな損害を与えることが示唆されます。本論文発表は、エジプトのSouth Valley大学などとの共同研究の成果です。

Fereig RM, Mohamed SG, Mahmoud HY, AbouLaila MR, Guswanto A, Nguyen TT, Ahmed Mohamed AE, Inoue N, Igarashi I, Nishikawa Y*. Seroprevalence of Babesia bovis, B. bigemina, Trypanosoma evansi, and Anaplasma marginale antibodies in cattle in southern Egypt. 

Ticks Tick Borne Dis. 2017 Jan;8(1):125-131. PMID: 27789159 *Corresponding author

平成28年9月:猪原史成さんが日本獣医学会学術集会において「獣医寄生虫学奨励賞」を受賞

http://www.obihiro.ac.jp/topic/2016/inoharajyusyou_28.html

9月6日(火)から8日(木)まで日本大学で開催された第159回日本獣医学会学術集会の日本獣医寄生虫分科会で、連合獣医学研究科獣医学専攻3年生の猪原史成さんが、第7回日本獣医寄生虫学奨励賞を受賞しました。本奨励賞は獣医寄生虫学の進歩に寄与する優れた成果を挙げ、将来の発展が期待される若手研究者に授与されるものです。

受賞研究課題は「トキソプラズマ感染によるマウスの恐怖記憶固定の障害は大脳皮質および扁桃核における機能異常が引き起こす」です。猪原さんが研究を行ったトキソプラズマは世界人口の30%が感染しているとされる寄生生物であり、脳や筋肉に潜伏感染を続けることが知られています。猪原さんはトキソプラズマ感染マウスにおいて恐怖記憶が障害されることに加え、その行動変化と関係する脳領域および神経機能の異常を明らかにしました。この研究成果は、トキソプラズマ感染が引き起こす宿主動物の神経系障害メカニズムを理解し、有効な治療法や予防策の開発につながる有益な科学的知見となります。

猪原さんは、「この度の受賞をとても光栄に思っており、本研究の実施にあたり、ご指導いただいた先生方に深く感謝いたします。今後も寄生病原体の研究を通して、獣医畜産界に貢献することを目指し努力したいと思います。」と受賞の喜びを語りました。

平成28年9月:原虫病研究センターの西川義文准教授が「2016-2017年度日本獣医学会賞」を受賞(http://www.obihiro.ac.jp/topic/2016/nishikawajyusyou_28.html

平成28年7月:論文発表(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27456832

平成28年8月:プレスリリース(http://www.obihiro.ac.jp/press/28/18ronbun-nishikawa_28.pdf

国立大学法人帯広畜産大学原虫病研究センター 准教授 西川 義文、日本学術振興会特別研究員(DC1)猪原 史成らの研究グループは、病原性寄生虫トキソプラズマの感染により宿主動物の記憶に障害が生じることを明らかにしました。

トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)は世界人口の3分の1のヒト、及びほ乳類・鳥類に感染している細胞内寄生性原虫(単細胞の寄生虫)です。免疫機能が正常な成人に感染した場合は無症状ですが、脳や筋肉に潜伏感染を続けることが知られています。さらに、トキソプラズマ感染が統合失調症、うつ病、アルツハイマー症などの発症リスクとなる可能性が推測されています。またトキソプラズマの慢性感染が、ヒトの行動や性格に影響を及ぼすことも報告されています。マウスを用いた実験では天敵であるネコの匂いに対する嫌悪感が減少することが知られており、感染による宿主動物の行動変化が示唆されています。しかし、トキソプラズマ感染が脳神経系に与える影響は不明であり、神経・精神疾患の発症や行動異常に至るメカニズムも解明されていません。そこで本研究では実験マウスの行動変化、脳組織、神経機能を解析し、トキソプラズマが宿主動物の行動を操作するしくみを明らかにすることを目的としました。

行動測定の結果、トキソプラズマ感染によりマウスの恐怖記憶が障害されることが明らかとなりました。恐怖記憶の形成に重要な脳領域に大脳皮質と扁桃体があります。感染マウスの大脳皮質には組織障害が認められ、記憶に不可欠な神経伝達物質であるドパミンの消費が増加していました。また感染マウスの扁桃体では、精神安定の維持に必要とされるセロトニンが減少していました。このような神経伝達物質のバランスが崩れることで神経機能の低下が起こり、感染マウスの記憶能力が低下したものと考えられます。

本研究によって、トキソプラズマ感染による宿主動物の行動変化の新たなしくみが明らかとなりました。今回の研究で見出された大脳皮質の機能低下や神経伝達物質のバランス異常は、統合失調症やうつ病などのヒトの精神疾患とも類似した病態です。今後の研究により、トキソプラズマ感染とヒトの神経・精神疾患との関連性を明らかにしていくことが重要であると考えます。

本研究は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(内閣府)、挑戦的萌芽研究、および特別研究員奨励費の支援のもと、帯広畜産大学において実施されました。

Ihara F, Nishimura M, Muroi Y, Mahmoud ME, Yokoyama N, Nagamune K, Nishikawa Y*. 

Toxoplasma gondii Infection in Mice Impairs Long-Term Fear Memory Consolidation Through Dysfunction of the Cortex and Amygdala. 

Infect Immun. 2016 Jul 25. pii: IAI.00217-16. PMID: 27456832 *Corresponding author

平成28年7月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27377768

ネオスポラ(Neospora caninum)はウシの流産、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium parvum)は子牛の下痢症を引き起こし、それらの感染による畜産業への経済的な損失は世界規模となっています。今回、エジプトのSouth Valley大学などと共同研究を行い、エジプト南部を対象とした家畜のネオスポラおよびクリプトスポリジウムの感染状況を調査しました。ネオスポラ感染率は18.9%、ネオスポラ感染率は35.9%%に達し、ウシの流産や子牛の下痢症の潜在的なリスクが推測されました。

Fereig RM, AbouLaila MR, Mohamed SG, Mahmoud HY, Ali AO, Ali AF, Hilali M, Zaid A, Mohamed AE, Nishikawa Y*. 

Serological detection and epidemiology of Neospora caninum and Cryptosporidium parvum antibodies in cattle in southern Egypt. 

Acta Trop. 2016 Oct;162:206-11. doi: 10.1016/j.actatropica.2016.06.032. PMID: 27377768 *Corresponding author

平成28年5月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27213575

天然ハーブには様々な薬効が含まれていることが歴史上分かっています。今回、タイ産の胡椒科植物に着目し、抗原虫効果の有無を解析しました。興味深いことに、Piper betleのエタノール抽出物には細胞内寄生原虫トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)を殺滅する効果があり、マウスを用いた動物実験でもその効果を確認することができました。本論文発表は、タイ・マヒドン大学との共同研究の成果です。

Leesombun A, Boonmasawai S, Shimoda N, Nishikawa Y*. 

Effects of Extracts from Thai Piperaceae Plants Against Infection with Toxoplasma gondii. 

PLoS One. 2016 May 23;11(5):e0156116. doi: 10.1371/journal.pone.0156116. eCollection 2016. PMID: 27213575  *Corresponding author

平成28年5月:論文発表 http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2405939016300168?np=y

細胞内寄生原虫トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)はヒトを含めた様々なほ乳類と鳥類に感染し、世界レベルでの感染拡大が危惧されています。今回、エジプトのSouth Valley大学などと共同研究を行い、エジプト全土を対象とした家畜のトキソプラズマ感染状況を調査しました。トキソプラズマ感染率は2〜4割に達し、潜在的な食肉からヒトへの感染が推測されました。

Fereig RM, Mahmoud HYAH, Mohamed SGA, AbouLaila MR, Abdel-Wahab A, Osman SA, Zidan SA, El-Khodary SA, Mohamed AEA, Nishikawa Y*. Seroprevalence and epidemiology of Toxoplasma gondii in farm animals in different regions of Egypt. 

Veterinary Parasitology: Regional Studies and Reports. doi:10.1016/j.vprsr.2016.05.002 *Corresponding author

平成28年3月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27021922

細胞内寄生原虫ネオスポラ(Neospora caninum)の感染はウシに流産を引き起こすことから、畜産業で問題となっています。しかしながら、現在有効な治療薬は実用化されていません。本研究では、ネオスポラが植物ホルモンのアブシジン酸を生合成し、その阻害剤フルリドンは抗原虫効果があることを見出しました。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会:2011/LS003)、国立感染症研究所と帯広畜産大学原虫病研究センター共同研究(23-joint-6)の研究成果です。

Ybañez RH, Leesombun A, Nishimura M, Matsubara R, Kojima M, Sakakibara H, Nagamune K, Nishikawa Y*. 

In Vitro and In Vivo Effects of the phytohormone inhibitor fluridone against Neospora caninum infection. 

Parasitol Int. 2016 Mar 25;65(4):319-322. doi: 10.1016/j.parint.2016.03.009. PMID: 27021922 *Corresponding author

平成28年3月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26971577

ネオスポラはイヌやウシなどに感染し神経障害の原因となる病原性原虫ですが、その病態発症メカニズムは分かっていません。今回、ネオスポラのマウス感染モデルを用い、感染による脳組織の変化を解析しました。その結果、炎症反応に伴う脳病変、神経伝達物質量の異常、神経細胞の活性低下が明らかとなりました。本研究により、ネオスポラの感染による中枢神経の機能障害が生じていることが示唆されました。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会:2011/LS003)、挑戦的萌芽研究(文部科学省:15K15118)、特別研究員奨励費(日本学術振興会:15J03171)の研究成果です。

Ihara F, Nishimura M, Muroi Y, Furuoka H, Yokoyama N, Nishikawa Y*. 

Changes in neurotransmitter levels and expression of immediate early genes in brain of mice infected with Neospora caninum. 

Sci Rep. 2016 Mar 14;6:23052. doi: 10.1038/srep23052. PMID: 26971577 *Corresponding author

平成28年3月:国際学術交流の締結

2016年3月にフィリピン大・セブ校(UNIVERSITY OF THE PHILIPPINES Cebu)を訪問し、トキソプラズマに関するセミナーと実習を行いました。また、原虫病研究センターと同大の学術交流協定を締結しました。今後は、フィリピンにおける人獣共通原虫病の調査を進めます。

フィリピン大・セブ校での記念撮影。

フィリピン大・セブ校で実施したセミナーの様子。University of the Visayas Gullas College of MedicineとCebu Technological Universityでもトキソプラズマに関するセミナーを実施しました。

フィリピン大・セブ校で実施したトキソプラズマ診断方法に関する実習風景。

平成28年1月:論文発表  http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26755155

マウスを用いたマラリア貧血モデルにて、マクロファージ等の貪食細胞はマラリアの重篤化を抑える働きがあることを明らかにしました。マウスから貪食細胞を除去すると血中のマラリア原虫は減少するものの、マウスの死亡率が増加しました。貪食細胞を除去し重症化したマウスの病理学的な解析により、肝臓と腎臓で重度な病変が確認され、それら臓器の毛細血管にはマラリア原虫の感染赤血球が蓄積していることが判明しました。代表的な消炎鎮痛剤で抗血小板作用のあるアスピリンで貪食細胞を除去したマウスを治療すると、マラリアの重篤化は抑制されました。これらの結果により、マクロファージ等の貪食細胞はマラリア原虫を積極的に排除し、主要臓器における感染赤血球の凝集を抑えていることが示唆されました。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会, 2011/LS003)の研究成果です。

Terkawi MA, Nishimura M, Furuoka H, Nishikawa Y*. 

Depletion of phagocytic cells during nonlethal Plasmodium yoelii infection causes severe malaria characterized by acute renal failure in mice.

Infect Immun. 2016 Jan 11;84(3):845-55. doi: 10.1128/IAI.01005-15. PMID: 26755155 *Corresponding author

平成27年11月:論文発表  http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26554725

トキソプラズマ感染マウスの慢性感染モデルを使用して、免疫抑制状態になると「うつ様症状」が発症することを明らかにしました。この「うつ様症状」の発症には、脳組織中の炎症性サイトカイン(インターフェロンガンマ)の産生、インドールアミン酸素添加酵素(Indoleamine 2,3-dioxygenase: IDO)の活性化によるキヌレニンの産生が関与していることが示唆されました。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会, 2011/LS003)と平成27年度 挑戦的萌芽研究(文部科学省, 15K15118)の研究成果です。

Mahmoud ME, Ihara F, Fereig RM, Nishimura M, Nishikawa Y*. 

Induction of depression-related behaviors by reactivation of chronic Toxoplasma gondii infection in mice. 

Behav Brain Res. 2015 Nov 7. pii: S0166-4328(15)30276-X. doi: 10.1016/j.bbr.2015.11.005. PMID: 26554725 *Corresponding author

平成27年10月:国際学術交流の締結

インドネシアのサムラトランギ大学医学部を訪問し、本学原虫病研究センターとの学術交流を締結しました。今後は、インドネシア・スラウェシ島北部を対象にヒトにおける人獣共通原虫病の調査を進めます。

サムラトランギ大学執行部との記念撮影

左から4人目:西川義文准教授、5人目Ellen Kumaat学長

サムラトランギ大学:http://www.unsrat.ac.id

平成27年8月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26275144

海洋生物「クロナマコ」から抗酸化作用を有する物質としてリゾリン脂質を同定しました。クロナマコは歴史的に健康食品として食されてきており、今回同定したリゾリン脂質の関与が示唆されます。本結果は、平成20年度グローバルCOEプログラム「アニマル・グローバル・ヘルス」の研究成果です。

Nishikawa Y*, Furukawa A, Shiga I, Muroi Y, Ishii I, Hongo Y, Takahashi S, Sugawara T, Koshino H, Ohnishi M. 

Cytoprotective Effects of Lysophospholipids from Sea Cucumber Holothuria atra. 

PLoS One. 2015 Aug 14;10(8):e0135701. doi: 10.1371/journal.pone.0135701. eCollection 2015.PMID: 26275144. *Corresponding author

平成27年7月:新聞記事掲載

本学原虫病研究センターの紹介記事と西川義文准教授の研究内容が日本経済新聞朝刊(7月29日、27面)に掲載されました。

平成27年7月:本の紹介

原虫病研究センター・西川義文准教授がおススメする本の紹介記事が掲載されました。

http://www.milive-plus.net/ニューリーダーからの1冊/ホット-ゾーン/

平成27年7月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26197440

インドネシア・ジャワ島西部の家畜(ウシ、ブタ)を対象に、トキソプラズマ感染に関する調査を行いました。トキソプラズマ抗体陽性の割合は、ウシで7.4%、ブタで14.6%でした。インドネシアにおけるヒトのトキソプラズマ感染率は50%を超えており、食肉あるいは環境からの感染が推測されます。本研究結果は、インドネシア・ジャワ島の都市スバンにある 家畜疾病診断センター(Disease Investigation Center Subang)との共同研究の成果です。また本論文発表は、平成26年度 基盤研究(B)(海外学術調査)(文部科学省)(26304037)の研究成果です。

Ichikawa-Seki M, Guswanto A, Allamanda P, Mariamah ES, Wibowo PE, Igarashi I, Nishikawa Y*. 

Seroprevalence of antibody to TgGRA7 antigen of Toxoplasma gondii in livestock animals from Western Java, Indonesia. 

Parasitol Int. 2015 Jul 18;64(6):484-486. doi: 10.1016/j.parint.2015.07.004. [Epub ahead of print] *Corresponding author

平成27年3月:国際学術交流

2015年3月に原虫病研究センター・西川義文准教授と本学畜産衛生学専攻博士後期課程1年Guswantoがインドネシア・ジャワ島の都市スバンにある 家畜疾病診断センター(Disease Investigation Center Subang)を訪問し、 原虫感染証の血清診断法に関するワークショップを開催しました。 本ワークショップにはインドネシア各地域の家畜疾病診断センターに所属する職員が参加し、 血清診断法の原理の理解と実習を通してその技術を習得しました。 また、実際の実験データの報告会を実施し、今後の対策を協議しました。 この海外学術交流は2017年まで継続し、インドネシア全土を対象にした原虫感染の疫学調査を進めていく予定です。 

平成27年2月:国際学術交流の締結

インドネシアのサムラトランギ大学動物科学部を訪問し、本学原虫病研究センターとの学術交流を締結しました。今後は、インドネシア・スラウェシ島北部の動物における原虫感染症の調査を進めます。

サムラトランギ大学:http://www.unsrat.ac.id

トキソプラズマ原虫由のタンパク質であるサイクロフィリンが、原虫の宿主体内の移動に関与していることを明らかにしました。

サムラトランギ大学動物科学部長との記念撮影

右から、Sri  Adiani博士(Head of Laboratory of Reproduction, Breeding and Animal Health、西川義文准教授、Charles L. Kaunang教授(Dean)

平成27年1月:論文発表  http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25628099

細胞内のトキソプラズマを殺傷する新たなメカニズムとして、インターフェロン・ベータ依存的なimmunity-related GTPaseの役割を明らかにしました。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会, 2011/LS003)の研究成果です。

Mahmoud ME, Ui F, Salman D, Nishimura M, Nishikawa Y*. 

Mechanisms of interferon-beta-induced inhibition of Toxoplasma gondii growth in murine macrophages and embryonic fibroblasts: role of immunity-related GTPase M1 (IRGM1). 

Cell Microbiol. 2015 Jan 28. doi: 10.1111/cmi.12423. [Epub ahead of print] *Corresponding author

平成27年1月:論文発表  http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25604996

ネオスポラ感染マウスの脳組織を用いて、脳内の全遺伝子を対象にしたトランスクリプトームと病理組織学的解析を行いました。感染脳組織では神経系の質的な破綻が示唆されました。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会, 2011/LS003)の研究成果です。

Nishimura M, Tanaka S, Ihara F, Muroi Y, Yamagishi J, Furuoka H, Suzuki Y, Nishikawa Y*. 

Transcriptome and Histopathological Changes in Mouse Brain Infected with Neospora caninum. 

Sci Rep. 2015 Jan 21;5:7936. doi: 10.1038/srep07936. *Corresponding author

平成27年1月:論文発表  http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25558986

ケモカイン受容体CCR5はネオスポラ感染の防御免疫に必要であり、本受容体の欠損によりネオスポラの神経症状の発症が増加することが明らかとなりました。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会, 2011/LS003)の研究成果です。

Abe C, Tanaka S, Nishimura M, Ihara F, Xuan X, Nishikawa Y*. 

Role of the chemokine receptor CCR5-dependent host defense system in Neospora caninum infections. 

Parasit Vectors. 2015 Jan 6;8(1):5. [Epub ahead of print] *Corresponding author

平成26年11月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25481361

北海道と沖縄の農場で検出したクリプトスポリジウム・パルバムは、遺伝型が同一で人獣共通型であることが明らかとなりました。

Ichikawa-Seki M, Aita J, Masatani T, Suzuki M, Nitta Y, Tamayose G, Iso T, Suganuma K, Fujiwara T, Matsuyama K, Niikura T, Yokoyama N, Suzuki H, Yamakawa K, Inokuma H, Itagaki T, Zakimi S, Nishikawa Y*. 

Molecular characterization of Cryptosporidium parvum from two different Japanese prefectures, Okinawa and Hokkaido. 

Parasitol Int. 2014 Dec 3;64(2):161-166. doi: 10.1016/j.parint.2014.11.007. [Epub ahead of print] *Corresponding author

平成26年11月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25373617

マラリア用のワクチンを開発するために、ワクチン抗原をオリゴ糖リポソームへ封入し、マウスの感染モデルでワクチンとしての有効性を確認しました。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会, 2011/LS003)の研究成果です。

Terkawi MA, Kuroda Y, Fukumoto S, Tanaka S, Kojima N, Nishikawa Y*  

Plasmodium berghei circumsporozoite protein encapsulated in oligomannose-coated liposomes confers protection against sporozoite infection in mice.

Malar J. 2014 Nov 5;13(1):426. doi: 10.1186/1475-2875-13-426.*Corresponding author

平成26年6月29日:テレビ番組出演

6月29日(日)深夜のTBSテレビ「別冊アサ(秘)ジャーナル」で本学が紹介されました。 「別冊アサ(秘)ジャーナル」は、2001年からスタートし、浅草キッド(水道橋博士・玉袋筋太郎)、江口ともみさんの3人が、日本の森羅万象を徹底取材するTBSの名物深夜番組です。2013年春からは、「別冊アサ(秘)ジャーナル・ニッポン学校最前線」として新しいテーマ『学校』を取材しており、このたび本学が紹介されまた。

http://www.tbs.co.jp/asa-j/index-j.html#midokoro

下記URLで番組が見られます(私は番組最後に少しだけ出演しました。)。

http://www.tudou.com/programs/view/jDS_KqF_LGo/

平成26年4月15日:プレスリリース

【リリース概要】

国立大学法人帯広畜産大学原虫病研究センター 准教授 西川 義文、東海大学工学部生命化学科 講師 黒田 泰弘らの研究グループは、この度マラリア原虫とトキソプラズマの感染を制御可能なワクチンの作製に成功しました。

【研究の背景】

単一の真核細胞で構成される原虫は、ヒトを含めた様々な哺乳動物に感染し、重篤な症状を引き起こすものが存在します。世界的によく知られているものでは、ヒトに感染するマラリア原虫などが挙げられます。また、トキソプラズマはヒトと動物に感染し病気を引き起こします。これら原虫の感染に伴う疾患は、医学、獣医・公衆衛生領域で重要視されているにも関わらず未だ有効なワクチンが確立されていません。

【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】

今回作製に成功したワクチンは、マウスの実験モデルでその効果が確認されたことから、今後のワクチン開発の実用化につながる成果といえます。2010年のマラリア患者数はアフリカを中心に約2億1600万人に上り、推定655,000人が死亡しています(2011年 世界マラリア・レポート)。また、トキソプラズマは先進国でも感染が確認されており、世界人口の30〜60%が感染していると報告されています。特にトキソプラズマの妊婦への感染は日本でも問題となっています。今後のさらなる研究により、これら原虫病の予防ワクチンの実用化を達成することで人類の健康に大きく貢献することが期待されます。

【参考論文】

1. Tanaka S, Kuroda Y, Ihara F, Nishimura M, Hiasa J, Kojima N, Nishikawa Y*

Vaccination with profilin encapsulated in oligomannose-coated liposomes induces significant protective immunity against Toxoplasma gondii

Vaccine.2014 Apr 1;32(16):1781-1785. *Corresponding author

2.Terkawi MA, Kuroda Y, Fukumoto S, Tanaka S, Kojima N, Nishikawa Y*  

Plasmodium berghei circumsporozoite protein encapsulated in oligomannose-coated liposomes confers protection against sporozoite infection in mice.

Malar J. 2014 Nov 5;13(1):426. doi: 10.1186/1475-2875-13-426.*Corresponding author

十勝毎日新聞記事掲載(2014年4月23日)、北海道新聞記事掲載(2014年4月23日)、日経産業新聞記事掲載(2014年4月24日)、科学新聞(2014年5月16日)

平成26年5月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24885547

トキソプラズマ原虫のステージ変換は、宿主のリポ蛋白質の枯渇により誘導されることを明らかにしました。

Ihara F, Nishikawa Y*. 

Starvation of low-density lipoprotein-derived cholesterol induces bradyzoite conversion in Toxoplasma gondii. 

Parasit Vectors. 2014 May 29;7(1):248. doi: 10.1186/1756-3305-7-248. *Corresponding author

平成26年5月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24661782

Ibrahim HM, Nishimura M, Tanaka S, Awadin W, Furuoka H, Xuan X, Nishikawa Y*

Overproduction of Toxoplasma gondii cyclophilin-18 regulates host cell migration and enhances parasite dissemination in a CCR5-independent manner.

BMC Microbiol. 2014 Mar 25;14(1):76.  *Corresponding author

平成26年4月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24530937

トキソプラズマ原虫のワクチン開発につながる有効な抗原として、プロフィリンを見出しました。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会, 2011/LS003)の研究成果です。

Tanaka S, Kuroda Y, Ihara F, Nishimura M, Hiasa J, Kojima N, Nishikawa Y*

Vaccination with profilin encapsulated in oligomannose-coated liposomes induces significant protective immunity against Toxoplasma gondii

Vaccine.2014 Apr 1;32(16):1781-1785. *Corresponding author

トキソプラズマ原虫は宿主動物の脳に寄生することで様々な病態が引き起こされます。本論文では、原虫感染脳内の遺伝子発現の全容を解明しました。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会, 2011/LS003)の研究成果です。

Tanaka S, Nishimura M, Ihara F, Yamagishi J, Suzuki Y, Nishikawa Y*

Transcriptome Analysis of Mouse Brain Infected with Toxoplasma gondii. 

Infect Immun.2013 Oct;81(10):3609-3619. *Corresponding author

平成25年8月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23742998

ネオスポラ原虫用のワクチンを開発するために、NcGRA7抗原をオリゴ糖リポソームへ封入し、ウシの感染モデルでワクチンとしての有効性を確認しました。本論文発表は、最先端・次世代研究開発支援プログラム(日本学術振興会, 2011/LS003)の研究成果です。

Nishimura M, Kohara J, Kuroda Y, Hiasa J,Tanaka S, Muroi Y, Kojima N, Furuoka H, Nishikawa Y*

Oligomannose-coated liposome-entrapped dense granule protein 7 induces protective immune response to Neospora caninum in cattle. 

Vaccine. 2013 Aug 2;31(35):3528-3535.*Corresponding author

平成25年8月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23988663

トキソプラズマ原虫の感染防御免疫にはCD8陽性T細胞が重要であり、α2-3シアル酸の付加が鍵となることを明らかにしました。

Nishikawa Y, Ogiso A, Kameyama K, Nishimura M, Xuan X, Ikehara Y.

α2-3 sialic acid glycoconjugate loss and its effect on infection with Toxoplasma parasites. 

Exp Parasitol. 2013 Aug 27;135(3):479-485. *Corresponding author

平成25年8月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23966554

ネオスポラ原虫の血清診断システムに応用できるタンパク質として、NcSUB1を見出しました。

Ybañez RH, Terkawi MA, Kameyama K, Xuan X, Nishikawa Y. 

Identification of a highly antigenic region of subtilisin-like serine protease 1 for serodiagnosis of Neospora caninum infection. 

Clin Vaccine Immunol. 2013 Oct;20(10):1617-22. *Corresponding author

平成25年6月6日:プレスリリース

【リリース概要】

帯広畜産大学原虫病研究センターの西川義文准教授、東海大学工学部の黒田泰弘講師らの研究グループは、世界で初めて、ウシの流産の原因となる家畜原虫病ネオスポラに対する感染制御に成功しました。

【研究の背景】

原虫とは、単一の真核細胞で構成されており、ヒトを含めた様々な哺乳動物に感染し重篤な症状を引き起こすものが存在します。世界的によく知られているものでは、ヒトに感染するマラリア原虫が挙げられます。国内の畜産業では各種原虫の感染による産業動物の経済的な損失が問題視されています。その中で、ウシの流産の原因となるネオスポラ原虫に対する有効な薬やワクチンはなく、本原虫症に対処することはできませんでした。

【本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)】

今回、成功したワクチンは、実際に問題となる動物(ウシ)で効果が確認されたことから、ワクチン開発の実用化に大きく前進する成果となります。この成果は、医学、獣医・公衆衛生領域で重要視されているにも関わらず、未だ有効な予防法が確立されていない様々な原虫病の予防ワクチンを世界に先駆けて開発することにつながり、国民の健康、食糧の安定供給に大きく貢献することが期待されます。

Nishimura M, Kohara J, Kuroda Y, Hiasa J,Tanaka S, Muroi Y, Kojima N, Furuoka H, Nishikawa Y*

Oligomannose-coated liposome-entrapped dense granule protein 7 induces protective immune response to Neospora caninum in cattle. 

Vaccine. 2013 Aug 2;31(35):3528-3535.*Corresponding author

日本経済新聞記事掲載(2013年6月7日)、十勝毎日新聞記事掲載(2013年6月7日)、北海道新聞記事掲載(2013年6月12日)、日本農業新聞記事掲載(2013年9月12日)    

平成25年4月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23408523

トキソプラズマ原虫の血清診断システムに応用できるタンパク質として、TgGRA7を見出しました。

Terkawi MA, Kameyama K, Rasul NH, Xuan X, Nishikawa Y. 

Development of an Immunochromatographic Assay Based on Dense Granule Protein 7 for Serological Detection of Toxoplasma gondii Infection. 

Clin Vaccine Immunol. 2013 Apr;20(4):596-601. *Corresponding author

平成25年2月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23239805

ウシを用いたネオスポラ原虫の感染モデルを確立しました。

Nishimura M, Kohara J, Hiasa J, Muroi Y, Yokoyama N, Kida K, Xuan X, Furuoka H, Nishikawa Y. 

Tissue distribution of Neospora caninum in experimentally infected cattle. 

Clin Vaccine Immunol. 2013 Feb;20(2):309-12. *Corresponding author

平成24年6月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22365337

ウシの妊娠期においてネオスポラの再活性化が起こる場合、NcGRA7とNcSAG1に対する抗体レベルをモニタリングすることで流産リスクが判定できることを明らかにしました。

Hiasa J, Kohara J, Nishimura M, Xuan X, Tokimitsu H, Nishikawa Y. 

ELISAs based on rNcGRA7 and rNcSAG1 antigens as an indicator of Neospora caninum activation. 

Vet Parasitol. 2012 Jul 6;187(3-4):379-85. *Corresponding author

平成24年3月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22258707

ネオスポラ感染による神経症状は、NcGRA7抗体およびNcPF抗体のレベルに正の相関を示すことを明らかにしました。

Hiasa J, Nishimura M, Itamoto K, Xuan X, Inokuma H, Nishikawa Y. 

ELISAs based on Neospora caninum dense granule protein 7 and profilin for estimating the stage of neosporosis. 

Clin Vaccine Immunol. 2012 Mar;19(3):411-7.  *Corresponding author

平成24年3月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22217002

ネオスポラ原虫のタンパク質であるサイクロフィリンは、ケモカイン受容体CCR5依存的に宿主免疫細胞を遊走させることを見出しました。

Kameyama K, Nishimura M, Punsantsogvoo M, Ibrahim HM, Xuan X, Furuoka H, Nishikawa Y. 

Immunological characterization of Neospora caninum cyclophilin. 

Parasitology. 2012 Mar;139(3):294-301. *Corresponding author

平成23年2月:日本学術振興会 最先端・次世代研究開発支援プログラム「難治性原虫感染症に対する新規ワクチン技術の開発研究」に採択 

http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/index.html

【研究の背景】 

原虫とは単一の真核細胞で構成され、哺乳動物に感染し重篤な病気を引き起こすものも存在する。医学・農畜産分野では、マラリア原虫やトキソプラズマをはじめ様々な種類の原虫が人類の生存、家畜の生産に 悪影響を及ぼしている。国内外の多くの研究者が原虫病に対するワクチンの開発を試みてきたが、病原性 原虫がもつ独自のワクチン抵抗性能力に阻まれてその実現には至っていない。 

【研究の目標】 

本研究は、ヒトと家畜動物を対象にした原虫病に対する次世代型ワクチンを開発し、動物実験により有効性を確認することを目標とする。

【研究の特色】 

本研究で提案する技術は、脂質とオリゴ糖で作製したカプセルの中にワクチン成分を封入した新しい形式のワクチンである。今までのワクチンは原虫を殺傷する効果が低かったが、今回の新型ワクチンはヒトや動物の免疫反応を効率的かつ強力に誘導することができる。

【将来的に期待される効果や応用分野 】

本研究の成果は、医学、獣医・公衆衛生領域で重要視されているにも関わらず未だ有効な予防法が確立されていない原虫病の予防ワクチンを世界に先駆けて開発することになり、国民の健康、食糧の安定供給、他の難治性疾患に対するワクチン開発に大きく貢献する。 

平成22年5月:日本寄生虫学会第19回奨励賞を受賞

受賞テーマ:トキソプラズマ由来分子と一酸化窒素による原虫のステージ変換と宿主細胞アポトーシスの誘導

平成21年6月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19564392

トキソプラズマ原虫のタンパク質であるサイクロフィリンが宿主免疫細胞を活性化させること、および原虫のステージ変換に関与することを見出しました。

Ibrahim HM, Bannai H, Xuan X, Nishikawa Y*

Toxoplasma gondii cyclophilin 18-mediated prduction of nitric oxide induces bradyzoite conversion in a CCR5-dependent manner. 

Infect Immun. .2009 Sep;77(9):3686-3695. *Corresponding author 

平成25年10月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23856619

平成21年6月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19357313

ネオスポラ原虫のワクチン開発につながる有効な抗原として、NcGRA7を見出しました。

 Nishikawa Y, Zhang H, Ikehara Y, Kojima N, Xuan X, Yokoyama N. 

Immunization of oligomannose-coated liposome-entrapped NcGRA7 protects dams and offspring from Neospora caninum infection in mice. 

Clin Vaccine Immunol. 2009 Jun;16(6):792-797. 

平成20年6月:論文発表 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18406478

トキソプラズマ原虫のタンパク質であるPDCD5は、宿主細胞のアポトーシスを促進させる因子であることを見出しました。

Bannai H, Nishikawa Y*, Matsuo T, Kawase O, Watanabe J, Sugimoto C, Xuan X. 

Programmed Cell Death 5 from Toxoplasma gondii: a secreted molecule that exerts a pro-apoptotic effect on host cells. 

Mol Biochem Parasitol. 2008 Jun;159(2):112-120. *Corresponding author

平成19年4月

帯広畜産大学・原虫病研究センター・西川研究室スタート