人材募集・研究テーマ
当研究室の活動への参加にご関心をお持ちの方に向けて、当研究室でこれから実施可能な研究テーマや、テーマ設定の方針について記します。
当研究室の研究活動に参加するには
当研究室は産総研の心身機能・モデル化研究グループ (以下、「当グループ」) 内にあります。当グループでは、学生以外にも多数のメンバーが在籍して心身機能に関する最先端の研究を行っています。
当研究室の活動に参加するには、以下のような方法があります。ご質問やご相談は片平(k.katahira AT aist.go.jp)までお問い合わせ下さい。(ATをアットマークに置き換えて下さい)
※大変申し訳ありませんが、現状では当研究室の募集 (片平担当) は日本語を母語とする方に限定させていただいております。
産総研の研究職員になる:産総研では研究職員を毎年5月に募集しています (冬にも二次応募がある場合があります)。基本的には研究職員は任期無し (テニュア) です。詳しくはこちらのウェブサイトをご覧ください。修士号を取得した方を対象とした修士型採用もあります。
※産総研全体での採用になるため、必ずしも当グループ、つくばセンターへの配属となるとは限りません。産総研特別研究員 (契約職員、年度契約) になる : 当グループでは、企業との共同研究費をもとに研究員を雇用する場合もあります。この場合は企業との共同研究に専従していただくことになる可能性があります。現在の募集状況についてはお問合せください。
筑波大学の大学院 (ニューロサイエンス学位プログラム) に入学する: 片平は筑波大の連携大学院 (ニューロサイエンス学位プログラム) の教員となっており、学生 (修士・博士課程) を受け入れることができます。詳しくは、こちらのページをご参照ください。
産総研の技術研修生・リサーチアシスタントになる: 現在学生として大学院 (修士・博士課程)に所属されている方は、技術研修生として産総研で技術を学びながら研究に参加する制度があります。産総研の研究業務に貢献できる場合は、リサーチアシスタント (RA) として収入を得ながら研究をすることもできます。いずれも、指導教員の許可が必須となります。詳しくはこちらのウェブサイトをご覧ください。
学振PD、RPDなども制度上受け入れは可能ですが、産総研の制約から、海外留学を考える場合はお勧めしていません。また、実施可能なテーマは産総研の制約から限られる場合もありますので、ご相談ください。
研究の対象・方法
当研究室では、基本的に人間やその他の動物の「行動」を対象に、計算論モデリング、統計モデリングを中心的な手段として研究しています。ここでいう「行動」は、アンケートへの回答行動や、発話なども含みます。
研究対象として扱う「行動」のデータは、選択行動、意思決定などの離散的かつ小数次元のデータが多いです。(歩行などの運動は高次元かつ連続量のデータになります)
「こういう行動に興味があり、数理モデル化したい」と考える方は多いのですが、数理モデルで扱える行動・扱うことに意味のある行動は限られるのが現状です。対象とする行動の幅は広げていきたいと思いますが、最初は当研究室で馴染みのある既存の行動パラダイム (例えば2つの選択に対して報酬が与えられるバンディット課題) 、既存のモデル (例えば強化学習モデル) から入り、基本を身に着けていただいてからご自身の関心のある行動に発展させる方が良いと思います。
例えば、名古屋大の博士課程時代に当研究室に所属した菅原通代さんは、最初の1年で既存のバンディット課題における行動データを分析し、強化学習モデルでモデル化した研究で論文を発表しています (菅原 & 片平, 2019; Sugawara & Katahira, 2021)。その論文は国外の研究者にも影響を与えています (Palminteri博士の論文 (Palminteri, 2023) をご参照ください)。 その後、菅原さんはその研究を基盤として、もともと関心を持っていた「手に入らないものをなぜ追い求めるのか」という問題を扱える行動課題パラダイムを独力で開発し、独創的な研究を行いました (Sugawara & Katahira, 2022)。まだ課題もありますが、発展性のある研究だと思います。なお、菅原さんはそれらの一連の研究が評価され、名古屋大情報学研究科心理・認知科学専攻のエクセレントドクター (各専攻1名) に選出されています。
産総研の業務では特に、アンケートへの回答のデータを分析する機会が多いです。アンケートのデータ分析についても、例えば前の質問と同じ選択肢を選びやすい、といった回答の傾向を行動ととらえて統計モデリングにより扱うこともできます。
例えば,名古屋大修士課程から当研究室に所属し、産総研でもRAを務めた島田君は、そのような回答の傾向がアンケート回答データの信頼性の指標に与える研究を実施しました。様々な条件で実施した調査のデータの分析だけでなく、数理モデルに基づく理論的な解析も行っています。その研究は高く評価され、行動の研究法についての一流誌であるBehavior Research Methodsに掲載されています (Shimada & Katahira, 2023)。
研究環境・研究の方法について
当研究室では現在のところ自由に使える実験室環境は無く、使える研究機材は基本的にPCのみとなります (他のグループメンバーの他の研究室との共同研究により実験が可能な場合もあります)。
実験や調査などのデータ取得は基本的にはオンライン (ウェブ実験、ウェブ調査)で実施することで行います。
ウェブ実験で選択課題を実施した例: 上述の菅原さんの研究 (Sugawara & Katahira, 2021, 2022) 、遠山さん (当時名大研究員) の研究 (Toyama, Katahira & Kunisato, 2023)、大谷さん (当時名大修士課程) の研究 (大谷 & 片平, 2020)
ウェブ調査を実施した例: 上述の島田君の研究 (Shimada & Katahira, 2023)
新しいモデルや新しいデータ分析手法を検討する研究では、自分でデータを取得せず、公開データを用いて研究を行うこともできます。
新しいモデルを公開データに適用した研究の例: 角谷さん (学振PD) の研究 (Sumiya & Katahira; 2020)。
理論的な研究では、シミュレーションや数式上の計算のみで研究することも可能です。
例:強化学習モデルやそれに基づく分析の性質についての理論的研究 (Katahira, 2018; Katahira & Toyama, 2021; Katahira & Kimura, 2023)
実施可能な研究テーマ
以下では、いくつか考えれる研究トピックを挙げたいと思います [24/1/22 詳細は追記予定]。研究テーマはご本人のご関心に応じて相談しますが、片平の主務は大学ではなく、制約のある研究所であるため、どんなテーマでも可、というわけにはいかないのが現状です。(自由なテーマで研究したい場合は大学専任の先生を指導教官として選ぶ方が良いと思います)。関心のある研究テーマがある場合は、まずは片平までご相談ください。
報酬を伴う選択行動における学習の非対称性、固執性についての研究 (参考: 前述の菅原さんの研究)
行動モデリングにおける方法論、信頼性についての研究
モデルは常に真のデータ生成過程とは一致するとは限らず、通常は何らかの「間違い」が含まれます。その間違いがどのような影響を及ぼすか、ということについてシミュレーションや理論的研究を行ってきました。遠山さん (当時名古屋大研究員)の研究 (Toyama, Katahira & Ohira, 2019; Toyama, Katahira & Kunisato, 2023) や片平の研究 (Katahira, 2018)ではそれらの問題を検討しています。
モデルで推定したパラメータの推定値はどの程度安定するか (個人内で一貫するか)、ということが近年注目されています。この基準は「信頼性」、と呼ばれます。遠山さん (当時名古屋大研究員)の研究 (Toyama, Katahira & Kunisato, 2023) では、同一参加者に対して1か月程度の間隔をあけて2回の行動課題を実施し、パラメータがどの程度一貫した傾向が得られるかについても検討しています。信頼性の評価の仕方についても研究をしています。
個人差 (パーソナリティ、精神疾患の傾向) と行動の関係。 例:大庭さん (当時名古屋大・大学院生・研究員) はサイコパシー傾向と学習の関係を強化学習モデルで検討しています (Oba, Katahira & Ohira, 2019, 2021)
オンライン実験・オンライン調査の方法論についての研究:参考論文: Zorowitz & Niv (2023) PDFはこちらから入手できます。とても良い研究で、まずは同様の実験・分析を国内でやってみてもよいと思います。
「食」の選択に関する研究 (特に食選択の探索傾向などについて。これからやっていきたいと思います)
深層学習モデルを用いたデータモデリング手法の検討
これまでは強化学習モデルで扱われてきた報酬に基づく選択行動のモデリングにも、再帰型ニューラルネットワーク (RNN) などの深層学習モデルが用いられるようになってきています (例えば Dezfouli et al. (2019))。RNNを使うことで強化学習ではとらえられない複雑な選択のパターンがとらえられるようになると考えらていますが、それが実際にどの程度人間の行動の特徴をとらえるのに有効かつ必要であるか、ということは検討していく必要があると思います。
また、深層学習モデルは調査データ、ヘルスケアレコードなどの分析へも適用していきたいと考えています。
ヘルスケアサービスに関する個別化のための研究
個人差を考慮した適切なサービスの提供のため、個人を分類する研究も行っています。例えば分類のクラスターの数の評価指標の検討を行っています (Katahira, 2023)。
勤務地・研究実施場所について
基本的な活動拠点は茨城県つくば市 (産総研つくばセンター) になります 。研究自体はテレワークでもできますが、産総研に勤務する (技術研修を受ける) 場合はつくばセンターに出勤できることが原則となります。
つくば市はつくばエクスプレスや高速バスなどにより交通の便もよく、東京や千葉、埼玉などから通勤することも可能です (神奈川からはちょっと大変かもしれません)。
つくば駅はつくばエクスプレスで秋葉原駅から快速で45分です。つくば駅から産総研まではバスで15分程度、自転車で20分程度です。
つくばは「パンの街」と知られ、おいしいパン屋さんがたくさんあります。ラーメンも有名なお店が複数あります。有名な焼き芋のお店も産総研の近くにあります。
産総研のすぐ近くには洞峰公園という美しい公園があります。
「つくば」のことを「筑波」と書く人も多いのですが、地名としての「筑波」は筑波山の山麓の地域を指します。産総研や筑波大があるのは「つくば市」です (どうでもよいことですが)。
研究室の窓から見える筑波山。左に見えるのはJAXAです。