信州大学 理学部 理学科 生物学コース

分子共生生物学 高梨研究室

研究内容

日本の高山におけるマメ科植物と根粒菌の共生関係

現在の日本の高山植物は北極圏から南下した植物に起源すること、および第四紀の最終氷期(約2万年前)以前には日本各地の高山に地理的に隔離にされたことが推測されています。本来、マメ科植物—根粒菌共生系はある程度厳格な宿主特異性を有しているのですが、マメ科高山植物は北極圏からずっと共生系を維持して日本に南下してきたのでしょうか?それとも日本において新しい共生パートナーを見出したのでしょうか?このマメ科高山植物の移動・隔離の過程における根粒菌との共生関係の変化を調べています。

*山岳科学研究拠点のHPにも簡単な紹介記事を掲載しました。(→ 山岳科学研究拠点


マメ科植物の根粒における代謝産物の動態

マメ科植物と根粒菌の間で行われる共生窒素固定において、光合成産物と窒素化合物の交換は良く知られていますが、他にどのような代謝物が関与しているかはあまり知られていません。共生窒素固定系の確立や維持に関わる代謝産物を、輸送体の解析を通して明らかにしたいと考えています。

植物が生産する二次代謝産物の動態と進化

植物が生産する二次代謝産物の多くは、抗菌活性や殺虫活性を有し植物を外敵から守っていますが、潜在的には植物に対しても有毒です。しかし、二次代謝産物を生産する植物は自らが生合成する化合物に対して種特異的な自己解毒機構を有しており、ダメージを受けることはありません。自己解毒機構の解明を目指して、二次代謝産物の生合成・輸送機構の解析を行っています。また、陸上植物の進化の過程で、二次代謝産物の蓄積部位が変化したり、全く異なる種が独立的に同じ二次代謝産物生合成能を獲得したりしていることが分かっています。これらに関わる生合成・輸送遺伝子の分子進化も明らかにしたいと考えています。