6. (過去イベント)2014年感染症数理モデル短期入門コース

ご案内

日本では、感染症の数理モデルは未だ十分に実用化されておらず、それを支えるための学術的基盤も十分とは言い難い状態です。しかし、産業および政策の現場では、数理モデル活用に対する十分なニーズがあります。欧州や米国をはじめとする先進諸国では感染症数理モデリングの専門家が政府や地方公共団体、製薬企業、シンクタンクなどで独立セクションを構えるグループとして雇用されており、複雑さを増す社会現象と膨大な観察データに客観的・先端的研究手法を用いて対峙する専門家として、今後の感染症対策を支える中心的役割を担うことが期待されています。

そのため、これまでに研究コンソーシアム(オリジナル研究から予算、教育、普及啓発までを担当する専門家の研究会)の立ち上げ企画を進行してまいりました。中でも若手育成プログラムはコンソーシアムの最も重要な役割と位置づけています。このたび、2014年8月に、第1回となる感染症数理モデルの短期コースを開講することと決定しました。正味10日間の短期コースを開講します。分野を問わずに参加者を募り、応用数理・統計学・情報科学・物理学などはもちろん、医学・獣医学・薬学・保健学・生物学など、バックグラウンドを一切限定せずに受講できるコースです。概ね大学院修士課程の学生を中心とする予定ですが、研究志向の高い学部学生や若手からシニアに至るまでの研究者、現場の疫学者や医師・獣医師・保健師などの方にも参加していただけるよう門戸を広くして開講いたします。開講に向けて準備して参りますので、ご質問やご意見・ご要望などございましたらお寄せ下さい。

入門者向けでないアドバンスコースは別途企画いたします。

概要

1.開講内容

名称 感染症数理モデル短期コース(正式「入門:感染症数理モデルによる流行データ分析と問題解決」)

運営責任: 西浦博(東京大学大学院医学系研究科)

開催: 統計数理研究所(統計思考院公募型人材育成事業の一環で夏期大学院として実施します)

2. 共催・後援等

後援:厚生労働省健康局結核感染症課

協力:文部科学省委託事業「数学協働プログラム」

協賛:国立感染症研究所

3. 開催日時: 2014年8月2日(土)から8月11日(月)(途中で休日なし、土日も講義・実習をします)

4. 目的: 感染症数理モデルの基礎的考え方と取扱い、発展の方法、データ分析および批判的吟味について、同専門に関心のある若手研究者を対象に、短期集中型の入門的な教育機会を提供すること、です。特に、論文を独立して読んで、批判的吟味ができるところまでを到達目標にします。

内容:講義・実習とグループワーク、集中型の2週間コース

5. 言語:日本語、ただし、特別講師による講義があり、外国人講師は英語のみで講義・質疑とします(それに備えることも参加者のマナーとして下さい)。

6. 定員:最大50名を想定。

応募資格:特にありません。熱意を持って取り組んでいただける方のみとして下さい。また、高校理系卒業程度の数学能力を想定します(総和や積分記号へのアレルギーなど数式アレルギーを有する方には不向きです)。

応募多数の場合は、簡単な履歴書を提出していただきますので、それを基に選考することがあります。選考過程は明かしません。2014年に受講できない方は2015年以降に優先登録できるように対応します。

7. 参加料:無料。但し、滞在先の斡旋はありませんので、各自通学域の宿泊地を確保して下さい。

講師(確定者の抜粋のみ)

西浦博 (東京大学大学院医学系研究科 准教授)

Gerardo Chowell(アリゾナ州立大学 准教授)

Laith Abu-Raddad (コーネル大学医学部 准教授)

Nicolas Bacaer(フランス国立開発研究所 主任研究員)

伊藤公人 (北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター 准教授)

稲葉寿 (東京大学大学院数理科学研究科 准教授)

岩見真吾(九州大学大学院理学研究院生物科学部門 准教授)

斉藤正也(統計数理研究所データ同化センター 助教)

佐々木顕(総合研究大学院大学 先導科学研究科 教授)

筒井俊之(動物衛生研究所ウイルス・疫学研究領域 領域長)

プログラム(以下は暫定版のみです)

8月第2週が夏季休暇のため、週末の土日を2度活用することにより10日間連続で短期コースを開講します。帰省を要する学生に対応します。1週目は感染症数理モデルの基礎と構造を学びます。疫学的概念はもちろん、数理モデルの閾値特性と基本再生産数の導出を行い、伝播の異質性について理解します。2週目はモデルの応用について学びます。HIV/AIDSやSARS(重症急性呼吸器症候群)、インフルエンザなど具体的な流行データの分析事例や理論的ポイントを明確に、モデルの活用について明確に分類して学びます。1日の構成は、午前中に講義、午後に実習とグループワークを行います。夕刻に講師陣による特別講義(最新の研究をわかりやすく解説)を企画します。実習ではコンピュータ(PCレベル)を利用して簡単な数値計算と統計学的推定問題に取り組みます。数値計算ではBerkeley Madonnaによる方程式計算を行い、統計学的推定にはExcelとRのみで対処します。これにより、生物学・医学・獣医学などの数学的背景が高校卒業レベルで留まっている者に対しても十分に門戸を開けられるよう配慮します。グループワークでは予め準備された研究課題について5名程度のグループで取り組み、最終日に発表を行います。

より詳しいカレンダーはページ下の画像ファイルをクリックして下さい.

(1週目)

土 感染症疫学の概念、感染自然史、基本再生産数の定義、特別講義(外国人講師)

日 集団免疫とワクチン、ワクチンの効果推定、特別講義(外国人講師)

月 感染年齢と基本再生産数、グループワーク2、特別講義(外国人講師)

火 短期的流行とR0、常在的発生と周期性、コンピュータ実習1、特別講義(国内講師)

水 R0推定、感染自然史2、コンピュータ実習2、グループワーク3、特別講義(国内講師)

(2週目)

木 年齢構造とネットワーク、次世代行列の推定、逆計算、グループワーク4、特別講義(国内講師)

金 地理的な拡大モデル、流行の予測、コンピュータ実習3、特別講義(国内講師)

土 量反応関係と感染伝播、性感染症のモデル、蚊媒介疾病のモデル、コンピュータ実習4、特別講義(国内講師)

日 実効再生産数、検疫と隔離の効果推定モデル、グループワーク5、特別講義(国内講師)

月 学校閉鎖、コンピュータ実習5、グループワーク発表会

 

受講申し込み・お問い合わせ

受講申し込みはこちら(申し込み票のリンクが開きます)。

お問い合わせはメールまでお寄せ下さい。

受講申し込み終了の報告(2014年3月31日)

予定の最大受講者数の倍近くの方から御応募をいただきました.ありがとうございました.受講者多数につき,2014年の登録は締め切らせていただきました.

正式連絡は随時差し上げますが,既に申し込みをいただいた方で全日参加可能とお答えいただいた方は登録完了となる予定です.全日参加できるか不透明な方には大部分に参加可能か,別途連絡差し上げて参ります.