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How to Write Term Papers

レポートの書き方(心理学の場合)

大学では,さまざまな形で「レポート」を提出することが求められる。一般的に,レポートは,論理的で,わかりやすい文章で,かつオリジナルな内容でなければならない。以下に,レポートの種類や形式を解説しておく。

レポートの種類

意見論述型レポート

基本は,「序論・本論・結論」の三段構成。本論では,問題の背景として5W1Hを考慮して,自分の意見を説得的に組み合わせていく。自分の意見をサポートする文献などを引用するとよい。また,予想される反対の意見に対するさらなる反論があると説得力が増しやすい。月並みな意見や努力目標などは書かず,オリジナルな論を展開できれば高評価につながる。

資料調査型レポート

何らかのテーマについて,過去の文献を読み,その結果をまとめるレポート。そのテーマに関する古いものから最新の資料に目を通すことはもちろん,より広い視点から関連テーマの文献も読み,また反対の立場の意見なども考慮しながら,まとめ上げることが大切。

実験研究型レポート

授業で行った実験や調査をまとめて,考察するレポート。基本は,「題目・要約・目的・方法・結果・考察・文献」というスタイルを取る。要約は末尾につけることもある。また,この型のレポートや論文には,要点だけを2500~8000字程度)にまとめた「ショートペーパーと,8000~40000字程度(多くは15000~20000字)の「フルペーパー」がある。字数制限を設けていない学業論文(卒業論文,修士論文,博士論文)では,完全な追試が可能なほど精緻に記述することが求められることもある。

題目

タイトルは,研究の内容をできるだけ正確に反映したものにする(誇大広告のような,あるいはあまりに内容を過小評価するような題目はよくない)。それを見れば内容が想像できるような具体的かつ端的なものにする。どのような研究を行ったのかわからないような,幅広い表現を使ったタイトルはよくない。基本的に疑問文などは使わず,体言・名詞止めにする。サブタイトルは,できれば避ける。メインタイトルとサブタイトルの間には,2倍ダッシュ(――),またはコロン(:)をつける。タイトルの長さは,30 字以内が目安。本文をすべて書き終えた後に書けば,良いタイトルになりやすい。題目の見本はこちらから。

要約

研究の目的,方法,結果,考察を200字から300字程度でまとめる。それぞれ1文くらいが目安。あくまで本文の要約であり,本文に書いていない内容や事実は書かない。また,ここに感想や反省を書いたりしない。

目的

研究の背景(先行研究)を踏まえ,問題提起をし,何を明らかにするのかという研究の目的を述べる。また,仮説がある場合は,if-thenロジックの形式で記述する。目的は現在形で書く。

方法

実験の日時や場所,研究を行った対象者(性別,平均年齢,男女別・合計人数,健康状態など),研究の手続き,用いた刺激・材料などについて書く。基本的に過去形で記述する。

結果

得られたデータを整理し,事実に即して忠実に説明する。自分の予期に反した事実も省略しない。基本的に過去形で記述する。ここでは,自分の解釈は極力書かないように十分気をつける。図表にすることでわかりやすくなることが多いが,図表はあくまで文章の補足であり,文章を主体とすること。それを初めて読む人でも十分理解できる書き方でなければならない。図表を載せる場合は,そのタイトルをつけること(表は上,図は下)。図と表は別々の通し番号にする。挿入位置は本文にそれが登場するパラグラフの下が望ましい。図と表の違いがわからない人は,その違いを調べておくこと。

考察

得られた結果を元に,どのように考えられるか,解釈できるか,推測できるか,を記述する。関連する先行研究などを参考にして,論考の幅を広げる。当研究の問題点(実験などの場合は,内省報告も参考になる)を明らかにし,今後この研究を続けるとすれば,どのような課題をどのように解決していけばよいかという展望も書くとよい。考察は,実験の結果に関する記述は過去形になるが,それに対する考えは現在形で書く(例,感情が変化しないという仮説に反する結果になったが,それは参加者が極度に疲れていたためと考えられる)。

文献

何か参考にしたものがあれば,どのような種類(書籍,辞書,雑誌,新聞,ウェブサイト,講義,テレビ,映画,小説,漫画,知人の話)のものでも必ず書くこと。「なんとなく参考にした」ではいけない。他人が書いたり考えたりしたものを参考にし,本文中に引用箇所を明記しなければ,知的財産の盗用や剽窃に当たり,知的財産権,とくに著作権の侵害になる。どこに誰のどのような考えを入れたのかを明確にすること(※友人のレポートを写した場合は,その友人も含めて処分の対象にnる)。文献欄に書く文献は,すべて本文中に明記されたものでなければならず,逆もまた然り。文献欄には,著者名のアルファベット表記で若い順に並べる。

文献欄では,書籍の場合は,著者,出版年,タイトル,出版社を明記する必要があるが,ウェブサイトを引用する場合にも,それを誰がいつどのようなタイトルで書いているのかがわかるものが望ましい。必ずURLを明記すること。ただし,ウェブサイトの情報は,学術機関や官公庁のそれを除き,信頼性が低いものが多いため,本来,引用は望ましくない。

引用の仕方

文中の引用法には,2種類がある。

逐語的引用 著名な学者の有名な言葉,あるいは非常に巧みな表現を用いている場合に使用する。この場合,引用部を鍵括弧に入れ,著者名,出版年,引用部のページ数を文中に明記する。しかし,このような引用を行う場合は,出版社や著者に対して使用の許可をもらう必要があることもあるため,できるだけ参照的引用をするように心がける。

例:「医学と言えば,科学の一部であるということに誰も疑いは持たない」(村上,2000,p. 70)が,医学は・・・

参照的引用 文意を損なわない範囲で原著者の文章を自分なりの言葉に置き換えることである。これを「パラフレーズ」と言い,能動態を受動態に置き換えたり,名詞や動詞を類語に代えることを指す。ちなみに,英語の文章の場合,連続で5語以上抜き出すと,表現の盗用に当たると言われる(大学では停学等の処分の対象になる)。

例:一般に医学は科学であると思われているが(村上,2000),医学は・・・。

間接的引用 ウェブサイト上や書籍などのなかで引用された文献を,あたかも自分がその文献を読んだかのように引用しないこと。原著を自分で読まずに,誰か他の人がその原著について書いた内容を鵜呑みにしてそのまま引用することは,基本的に倫理に反すると考えられている。これを間接引用(孫引き)という。必ず原著を読んで自分なりに参照すること。ただし,原著が入手不可能な場合などは,間接引用であることがわかるように記述すればよい。

例:「串崎(2000)によると,中田(1998)が・・・と述べている」,「中田(1998)は・・・と述べている(串崎,2000)」などと明記すること。 その際,文献欄には,原著の出典を記し,その後に直接参照した文献を括弧に入れ,間接引用であることを明記しておくこと。

レポートの形式

    • 一人称視点(「私」「ぼく」「私たち」等)は原則的に使わない。必要であれば,「筆者」,「観察者」「参加者」などと,文脈に応じて書く。

    • レポートは白黒でわかるように書く。カラーはそうしないとわからない場合(例,外科手術時の写真,サーモグラフィなど)のみ使用可。印刷コスト,変色・劣化,色盲などの問題もある。

    • 価値判断(~すべき,~が良い)は原則的に書かない(例,健康のためには半身浴をすべきである→×,健康のためには半身浴が効果的である→○)

    • 読みやすい文章は,一文が60字以内と言われる。

    • 見出しには大きく3レベルがある。見出しはすべてゴシックにする。以下はその一例。

      • 中央大見出し 紙面の中央に太字で書く。上下は1 行あける。例えば,問題,方法,結果,考察をこれにしてもよいが,それぞれが短いレポートの場合は,横大見出しレベルでも良い。

      • 横大見出し 上だけ1行あけ,下はあけず,本文を改行して始める。

      • 横小見出し 行は上下ともあけず,左端から1 字あけて書き,本文は1字あけて続ける。方法のなかの参加者や手続きをこれにすることが多い。

    • 内容にもよるが,改行は200字程度が目安。無駄に改行しないこと。

    • 改行後は一マスつめる。メールのように,一文ごとに左に詰めて書いたりしないこと。

    • 小数点は,課題の性質を考えて,せいぜい第2位くらいまでで統一させる。

    • 引用や図表で文末に( )をつけるときは,句点の前。

    • 「:」は”that is to say”の略,「;」は”and”の略,「/」は”or”の略を表わす記号。記号の勝手な使い方をしないこと。

より詳細な書き方は,日本心理学会のウェブサイトから無料でダウンロードできる。とくに,p.17, 20, 24-26, 33-40, 51-53を参照。

※レポートのフォーマットは,それぞれの担当教員によって異なるため,その時々の指示にしたがうこと。

お薦め文献

    • American Psychological Association (Ed.) (2001). Publication manual of the American Psychological Association (5th Ed.). Washington, DC: American Psychological Association. 江藤裕之・前田樹海・田中建彦(2004).APA論文作成マニュアル 医学書院.

    • 樋口裕一(2005).小論文トレーニング ブックマン社.

    • 細江達郎・細越久美子(訳)(1996).心理学 実験・研究レポートの書き方:学生のための初歩から卒論まで 北大路書房.

    • 中澤務・森貴史・本村康哲(編)(2007).知のナヴィゲーター くろしお出版.

    • 吉田健正(2004).大学生と大学院生のためのレポート・論文の書き方(第2版) ナカニシヤ出版.