プロフィール

背景

子供の頃から星を見るのが好きだった筆者は、大学で天文学を学ぶべく、東北大学理学部に進学。当時、学部レベルで天文学を専攻できる大学は、東大、京大、東北大しかなかった。物理の研究者になるには、コンピュータのスキルが必須と考えていた筆者は、入学後、独自にコンピュータの勉強を始める。だが、研究者への夢はあったものの、自身の適正を見極めた上で、就職することを決断。コンピュータの可能性に魅力を感じていたため、迷わずコンピュータメーカーへ。社会に出るからには、現場に出たいと考えていた筆者は、NECでシステムエンジニア職を選択。

しかし、数年経ったころ、筆者は自身の経験や能力が期待したほど伸びていないことを認識するようになる。ちょうど、筆者が入社した直後にバブルが崩壊し、魅力的な仕事になかなか就けなかったことも一因だっただろう。個人的には、自身の人間の幅を広げるべく、海外一人旅を始めた。これが原因で、海外志向が目覚めることになる。

仕事での行き詰まりと膨らんできた海外志向が相まって、自身の修行のため海外留学を決断する。仕事に直結しそうな MBA といった選択肢もあったが、自然好きで環境問題に関心があった筆者は、環境分野への転身を図る。NECでの9年間に渡るSE職に終止符を打ち、当時、環境学のプロフェッショナルスクールとしてアメリカで注目されていた Bren School, University of California, Santa Barbara へ入学。2年間の厳しい学業を終え、半年間の就職活動を経て現在の職に就く。Bren School と並び、環境のプロフェッショナルスクールとして名高い Nicholas School, Duke University である。アメリカの東西を代表する環境スクールに身を置くことができるのは、非常に幸運である。

Nicholas School での仕事

筆者の所属は、Marine Geospatial Ecology Lab(あえて日本語に訳すと、海洋地理空間生態学研究所)。海の野生動物のエコロジー、バイオロジー、保護 (conservation) を空間的時間的に研究することを主とする。空間的時間的視点に立った研究は、動物の分布や、生息数を明らかにする上で非常に重要で、今もっとも注目されている分野の一つである。

筆者は、コンピュータのバックグランドと環境学の修士号を活かして、海の野生動物の研究データを世界の研究者から集め、標準化・データベース化し、付加価値を付けてインターネットを介して再発信するシステム OBIS-SEAMAP を開発している(詳細は後述)。地球規模でデータを集め分析することで、動物の分布や、生息数に関する研究に役立てるわけだ。この目的のため、就職してすぐ、フロリダ州マイアミにある NOAA の研究所 (NOAA Southeast Fisheries Science Center; NOAA: 米国海洋大気管理局) に出向。ここで、NOAA が蓄積した膨大なデータを整備して、Duke University の システムに登録して再発信する仕事に取りかかる。マイアミでの仕事が一段落付いて、Duke University (Durham, North Carolina) に本社復帰する。

本社復帰後は、最新技術を積極的に取り入れて OBIS-SEAMAP の進化に尽くすと共に、Census of Marine Life(海洋生物センサス)の Mapping & Visualization Team の一員として、この世界規模のプロジェクトで集められるデータの視覚化・オンライン化に取り組む。

OBIS-SEAMAP とは

OBIS-SEAMAP は、イルカ・クジラといった海のほ乳類や、ウミガメ、海鳥の研究データを集積しインターネットを介して有効活用するためのシステムである。動物の目撃情報をグーグルマップ上に表示したり、データの集計結果を時系列のグラフに表示するなど、多様な機能を備え、研究者や教育関係者、学生の様々なニーズに応えることができる。アメリカの研究機関を中心に、世界中の研究者からデータを収集しており、この分野のデータベースとしては、世界最大規模である。

筆者は、世界の研究者とコンタクトを取ってデータを収集し、データ処理し、データベースに登録するという日常業務ばかりでなく、データベースからオンラインシステムに至るまで、このプロジェクトに含まれるほとんど全てのシステム・サブシステムを開発している。サブシステムとしては、イルカの背びれの写真をもとに個体を識別する研究のデータをオンラインで活用するシステムや、ウミガメの産卵場所に関するデータをオンラインで地図化するシステムなどが含まれる。

OBIS-SEAMAP の上位システムとして OBIS(オービス)がある。OBIS-SEAMAP がほ乳類、ウミガメ、海鳥に特化しているのに対し、OBIS は全ての海洋生物(植物を含む)を対象として、データを収集しており、OBIS-SEAMAP のデータは OBIS にアップロードされる。OBIS は Census of Marine Life のデータセンターとしての役割を果たしている。データセンターはニュージャージー州の Rutgers University にある。

Census of Marine Life

Census of Marine Life(海洋生物センサス)は、文字通り海に生息するあらゆる生物の分布、多様性、生息数 (distribution, diversity and abundance) を調査するという壮大な研究テーマを追求すべく、2000年に始まったプロジェクトである。世界80カ国2000人の研究者が参加しているとも言われ、海洋生物研究では人類史上最大規模のプロジェクトである。沿岸部から深海に至るまで、海のあらゆる領域を対象にしており、日本の大学・研究者も多数参画している。

2010年がこの10年がかりの巨大プロジェクトの最終年にあたる。これに備え、筆者の所属する研究室は、Census of Marine Life の研究で収集・生成されるデータの、地図化・視覚化を託されることになる。科学雑誌に投稿される論文や関連書籍に掲載される地図を制作したり、オンラインでデータを多角的に表示するサービスを提供することを主とする。グーグルアースに、Census of Marine Life のコンテンツが標準で掲載されるようになったが、このためのシステムの開発も手がける(筆者が開発)。

Census of Marine Life で収集されるデータは、基本的に OBIS に集積されるのは前述の通りだが、このオンラインシステムは、必ずしも最新技術を取り入れたものとは言えず、性能面や使いやすさにおいても研究者の要望に完全には応じ切れていない現状がある。このため、OBIS-SEAMAP を手がける筆者が、OBIS のオンラインシステムの改良を託されることになる。Census of Marine Life 自体は2010年に終了するが、OBIS はデータセンターとして存続することになり、その役割は重要である。

Census of Marine Life は、2010年10月にロンドンにおいて、世界中のメディアを集めて研究成果発表「A Decade of Discovery」を行う。

なお、2010年に公開された映画「オーシャンズ」は Census of Marine Life が制作協力しており、映画の冒頭にも、Census of Marine Life とその資金提供団体 Alfred Sloan Foundation にクレジットが与えられている。英語版の美しいパンフレットには、筆者が作成した地図が掲載されている。

GOBI

国連及び国連環境開発 (UNEP) の取り組みの一つに、生物多様性条約 (Convention of Biological Diversity) がある。この CBD の活動に Global Oceans Biodiversity Initiative (GOBI) がある。GOBI は公海・深海上の保護地域設立に向けた研究を促進することを目的としている。従来の海洋保護区が沿岸地域、各国の経済水域に集中しているのを補完するものである。

筆者の属する研究所は、GOBI に、研究・分析を行うグループとして参画している。現時点では、具体的な保護地域の選定を行うわけではなく、選定のための手法を提案することを目指している。筆者も技術面で係わっている。

GOBI の成果は2010年10月に名古屋で開催される COP10(生物多様性条約締結国会議)で取り上げられることになっている。

番外編

英語力を活かして、年に数回、翻訳のお手伝いも行う。現在、沖縄の特産品を米国に売り込もうとしているベンチャー企業に対してサービスを提供している。提案資料や商品の宣伝パンフレット、技術文書の英日・日英翻訳を行う。

履歴書

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