フェムト秒レーザーを駆使した計測技術や光源技術の開発を通じて,固体中の超高速現象を研究しています。
■これから行いたいと思っている研究(2025年広域科学専攻大学院入試パンフレットより)
■これまで研究してきた主なトピック:
テラヘルツ波を使った反強磁性スピン系の制御
高強度テラヘルツ波やプラズモニクスの技術を用いて,強力に励起されたスピン系(主に反強磁性体オルソフェライト)の非線形なダイナミクスを調べてきました。
代表論文:
Phys. Rev. Lett. 120, 107202 (2018) :高強度THz波によって磁気相転移の対称性を動的に崩し,巨視的な磁化を生成できることを示しました。高強度THz波により巨視的な磁化制御に成功した最初期の研究になりました。東大物性研での研究です。
Commun Phys 6, 51, 1–6 (2023) :高強度THz波によってマグノンの第二高調波を励起し,磁気複屈折効果によって観測できることを示しました。東大物性研での研究です。
Nature Physics (2024). https://doi.org/10.1038/s41567-024-02386-3. :二次元THz分光によって,異なるマグノンモード間の非線形結合を観測しました。MITとの共同研究です。
Nature Materials 1 (2024), https://doi.org/10.1038/s41563-024-02034-4 :超高強度THz磁場によって磁性体中の磁化を瞬時にスイッチングすることに成功しました。京大との共同研究です。
超高速時間スケールの乱雑現象(揺らぎ)の観測
「揺らぐ」スピンの乱雑な運動(スピンノイズ)をピコ秒時間スケールで実験的に観測する技術を世界に先駆けて提案し,実証してきました。
代表論文:
Nature Communications 14, 7651 (2023) :フェムト秒プローブパルスが磁性体と相互作用したときに感じる偏光ノイズを統計処理することで,室温の熱エネルギーによって励起されたスピンの定常的な熱揺らぎダイナミクスを自己相関関数として計測することに成功しました。固体素励起における超高速時間スケールの乱雑現象を観測した最初期の研究の一つになったと思っています。Konstanz大での研究です。
Review of Scientific Instruments 95, 083005 (2024) :上のNat.Comm論文の実験セットアップ(フェムト秒ノイズ相関分光法)を,数式を交えて詳細に解説した技術論文です。Konstanz大との共同研究です。
Phys. Rev. Applied 24, 044021 (2025) :フェムト秒ノイズ相関分光法の信号を定量的に評価するための方法論を開発した技術論文です。Konstanz大との共同研究です。
超短パルスレーザー光源の開発
非線形光学実験のための,位相が固定されかつ数サイクルという短いパルス幅を持ったフェムト秒レーザー光源を開発してきました。
代表論文:
Optica 5, Issue 11, pp. 1474-1477 (2018) :ペタワットレーザーにより金属膜がアブレーションする際に発生したTHz波を円状に集光することで,進行方向に強力な電場をもったZ偏光THz波を作れることを示しました。Jena大との共同研究です。
Optics Letters 47, 3552-3555 (2022). :エルビウムファイバー技術を用いて,波長0.9-2.2umの近赤外領域において4 fs程度まで圧縮された極短フェムト秒パルスを生成し,GaAs中における量子干渉電流を観測しました。Konstanz大での研究です。
Opt. Express, 31(7), 11649–11658 (2023). :100kHz繰り返しのYb:KGW再生増幅レーザーをベースとした縮退OPAを構築して波長1.7-2.4umのブロードな中赤外光を発生し,2サイクル程度まで圧縮されたフェムト秒パルスレーザーを実現しました。東大物性研での研究です。
Applied Physics Express 17, 122006 (2024). :10mJ級のTi:Sapphireチャープパルス増幅システムを用いて,波長3um帯域において出力数100uJの高強度中赤外光を発生するOPAを構築し,水薄膜からの高次高調波発生がプレパルス照射によって増大するという現象を発見しました。東大物性研での研究です。
Applied Physics Express, 2025:LiB3O5結晶を増幅結晶として用いた非同軸OPAを構築することで,Yb:KGW再生増幅レーザーの3倍波(343nm)励起時に問題となる二光子吸収による結晶のダメージを抑えながら可視光を増幅し,パルス幅11 fsの可視フェムト秒パルスを発生しました。東大物性研での研究です。
(Last update: 12 November 2025)