文学部生のための

数学・物理学のブックリスト

This is a book list for non-STEM students. This list contains introductory textbooks of mathematics and physics, mostly written in Japanese. 

このリストは文系の人が数学や物理学を勉強するための本の案内です.あくまで,個人的に勉強になったものを並べているだけで,もちろん網羅的ではありません.やたらと並んでいることからわかるように,いろんな本を読んでは挫折して,凹んだりしていました.優秀ならこんなにいっぱい挙げなくていいのだろうと思います.ここから下は,挫折と失敗の個人的な記録です.


何かコメントやアドバイスがある方は,こちらのブログのエントリ(http://hand4.blog2.fc2.com/blog-entry-43.html)にコメントをつけてください.

とりあえず概略をつかみたい人へ

特に体系的に学ぶつもりがない人でも,一部の.数学・物理学の項目については学びたくなることがあると思う.そんな時に役立つものを挙げておくと

数学

数学の教科書は古くなりにくい.特に,60年代に書かれたような教科書は今でもやはりいい教科書なので再版を重ねている.いわゆる名著を下に多くあげているし,実際にお世話になった.ただ,もちろん数学だって発展している.例えば,線形代数のコアの内容がこの50年で変わったとは思わないが,線形代数の意義は変わっているのだと思う.その意味では古い本ばかりではなく,新しい教科書も手にとって欲しいとは思う.

全般

線型代数

解析・微積分

集合・位相

群論

多様体

物理学

以下のリストは,物理学の標準的な内容としては網羅的ではないが,それは森田の関心のせい.また,発展的な領域(QFTや物性とか)については,そもそも絶賛勉強中だったりするし,別にこんなリスト読まずに,もっとちゃんとした人の参考文献表を見ればいい.哲学者に役に立つのかは知らないが,そういうものも一部含まれている.

古典力学

古典力学だけを対象にしている哲学研究というのはあまり多くはないので,どこまで理解すれば十分というのはそもそもない気がする.文系でも,高校レベルの微分積分やベクトルがわかっていれば十分理解できる.もちろん,哲学史や科学史において古典力学の重要なトピックだとは思うが,現代的な理解がどの程度必要なのかということについては,森田自身があまりわかっていない.

電磁気学

電磁気学を理解するために必要なのはベクトル解析とか微分方程式とか.その都度勉強するでもいい気もする.歴史的な再構成系のテキストもあるのだけど,マクスウェル自身の議論はめちゃくちゃ難解なので(昔調べて挫折した),再構成された教科書を読んだ方がいい.

量子力学

量子力学に必要な数学としては,とりあえず有限・離散の範囲内なら線形代数さえ抑えておけばなんとかなる.歴史系の内容を理解したい場合には,微積分を抑えておいたほうがいい.ハイゼンベルグが行列力学を提示したとき,当時の物理学者は行列についてあまり知らなかったというのは有名な話.また,量子力学は関数解析のことという極論もあるので,関数解析さえできればいいのかもしれない.

熱統計力学

 熱統計力学に必要なのは主に微積分.ただし,線形代数については,最低でもベクトルとスカラーの違いを抑えておいて欲しい.統計や確率論についての知識も必要だが,その辺の数学をちゃんとやらなくても,以下で挙げたテキストではフォローしてくれている.もちろん,量子的な側面を学ぶなら線形代数はきちんとやらないと困ると思う.

相対性理論

特殊相対性理論は中学数学のレベルでも理解できるはず.他方,一般だともう少し数学的に高度で微積や線形代数はもちろんだが,多様体についての理解も必要だ.ただ,数学の勉強をしすぎて物理の本を読めないというのは本末転倒になる可能性もあるので,数学についてはあんまり完全な理解を追い求めすぎないほうがいいと思う.

物性物理学

固体物性を勉強するために必要なのは,量子力学と統計力学.熱力学や電磁気学についても知識はあった方がいいだろう.物理化学との境界が難しいという話もあるらしいので,いわゆる「この世界の本質」みたいなものに関心がある人には向かないかもしれない.しかし,物質はそれぞれに宇宙があると言われるように,固体物理には非常に興味深い現象がたくさんある.また,量子力学や相対論を勉強しただけでは見えてこない,現代物理学の特徴を知ることができると思う.なにせ「物理学の王」なので.


その他参考になりそうなリスト


物理を学びたい人文学徒のための読書案内

http://asonosakan.blogspot.com/2020/07/blog-post.html

一応匿名のブログっぽいんで名前は控えますが,私よりずっと優秀だと思うし,そもそも前提とする数学のレベルをキチンと明言しているのも大変参考になります.このリストと私のリストのどっちがいいのかというのは不毛だと思うので,テンションが合う方をどうぞ.

科学哲学日本語ブックガイド

http://tiseda.sakura.ne.jp/PofSbookguide.html

科学哲学の専門家である伊勢田先生による日本語の科学哲学の教科書のブックガイドです.物理の本を読んだ上で参考にしてもいいですが,関心がありそうな項目読んでから物理・数学を勉強してもいいのではないかと思います.このリストへのリンクもあります.

Reading lists in philosophy of physics

https://sites.pitt.edu/~dmw121/resources.html

PittsburgのDavid Wallaceによる物理学の哲学のリーディングリスト.熱物理学,時空間と対称性,量子論の三つに分けてある.どのような論点があり,それに関連してどのような論文や書籍があるのかがコメント付きで載せてある.VSIシリーズの拡張版だと思えば良い.

論理学およびその周辺領域の本

https://sokrates7chaos.hatenablog.com/entry/books-of-logic

論理学についてコミットしていないので,参考になりそうなものとしてはコレを.作成が新しいのも良いことだと思うし,かなり網羅的なのですごく勉強になる.また,このリストのさらに前段になるような「今,「論理」を学ぶ人のために 」という論理学を学ぶべきか悩んでいる人へリストもある.その辺の心配りや,様々な本が列挙されているなどを踏まえると,評判の悪いこのリストに載せるのが申し訳ないくらい良いリストだと思う.