企業パートナーシップのご案内

はじめに

現在、大学のポジションとは別に、オーストラリアで2012年に共同で設立したKGM & Associates Pty Ltd.のDirectorとして、様々な活動をしています。コンサルティング業務などは、この企業を通じて引き受けています。共同研究などは、大学として引き受けることもあります。下記を読んだ上で、keiichiro.kanemoto@gmail.comまで直接、ご連絡ください。私の所属している大学等に問い合わせても、お答えできない場合が多いです。大学との共同研究を望まれている場合には、契約等の適切なタイミングで大学の担当者を加えて手続きを進めます。

Eora多地域間産業連関表やその環境フットプリントデータのビジネスへの利用については、https://worldmrio.com/store/のライセンスの購入をご検討ください。Shopifyから直接購入を頂けます。質問があれば、日本語または英語にて、ご連絡ください。

スコープ3排出量・気候変動関連のパートナーシップ

概要

などで協力することができます。詳しくは下記をご確認ください。

背景:

多数の企業が、TCFD (気候関連財務情報開示タスクフォース) に基づいたスコープ3排出量の開示に取り組んでいる/取り組もうとしていると思います。しかし、多くの企業にとってスコープ3排出量の算定は非常に複雑かつ多くの問題を抱えています。

詳細に入る前に、まずは現在のスコープ3排出量の算定の現状を説明していきます。ある企業のスコープ3排出量を算定しようとすると、理想的には、すべての取引先企業の取引額 (量) とスコープ1排出量、そしてその取引先企業の取引先との取引額 (量) ととスコープ1排出量、さらにその取引先企業の取引先企業の取引先を知る必要があります。しかし、それは現実的ではないので、最初のステップとしては、産業連関表やLCAデータベースを使って、ある製品やサービスをX円もしくはX kg調達した際の平均的な上流および下流での排出源単位を使って、スコープ3排出量を算定します。例えば、板ガラスを200万円分調達した際には、4.2 t-CO2/百万円という上流でのスコープ3排出原単位を使って、8.4  t-CO2が板ガラスの調達によって排出されたと考えます。国内の排出原単位は、環境省を通じて入手することができます。国外を含めた原単位は、私も開発に関わったEora多地域間産業連関データベースなどから入手することができます。現在は多くの企業は、このようなデータベースを直接もしくは間接的に使ってスコープ3排出量を開示しています。そして、それを自社で行うことが可能な大企業、コンサルティング企業に依頼している企業、SaaS企業が提供しているソフトウェアを利用している企業と様々です。ほとんどの大手コンサルティング企業は算定のビジネスを行っています。

ただし、このようなデータベースに頼ると、よりGHG排出量の少ない調達先に変更してもスコープ3排出量が変わらない、実際のスコープ3排出量とは乖離している可能性があるといった問題があります。そこで、多くの取引関係のある企業がそれぞれスコープ1、2排出量や取引情報を共有し合い、それぞれのスコープ3排出量の算定に利用し合う必要が出てきます。しかし、御社の取引先情報や取引額をすべて共有し合うことがいかに大きな問題があるのかは想像が付くと思います。また、同じ製品やサービスであっても、使っている産業連関表やLCAデータベースによって大きく排出量 (数倍程度) が異なるということが起こります。そのため、あるデータベースを使っている企業と別のデータベースを使っている別の企業のスコープ3排出量を比較することが難しいことが理解できるかと思います。

研究:

そこで、私たちは企業レベルのサプライチェーンデータベースの開発と独自のスコープ3排出量の算定に取り組んでいます。これまでにもスコープ3排出量の算定で用いられてきた産業連関表の産業や製品 (板ガラス部門など) をその製品を生産している企業および企業のセグメントなどに分割しています。例えば、日本の板ガラス部門には、日本板硝子の3つのセグメント、セントラル硝子、村上開明堂、オハラ、そして、その他板ガラス企業という4つの企業およびその他企業と、7つの (サブ) セグメントに分割されています。この分割には、企業の有価証券報告書の財務情報、船荷証券、取引先情報などを使っています。例えば、トヨタ自動車の有価証券報告書には、自動車セグメントと金融セグメントがあります。そのセグメントを産業連関表の部門に対応させて、さらにセグメントをサブセグメントに分割した単位で、サプライチェーンデータベースを作成していきます。日本の税関は公表していないですが、いくつかの国では輸出企業名、輸入企業名、HSコード (貿易に使われる分類)、輸出入額や量などの情報を公表しています。これらを使って、ある企業のあるサブセグメントが別の企業のあるサブセグメントと取引している金額を推定していきます。その他にも、有価証券報告書等で、ある企業が主要取引先として公表しているのであれば、それら企業間には取引があるとみなして、その金額を推定します。これによって、産業連関表やLCAデータベースと同じ形で、世界9,000企業間、20,000セグメント、76,000サブセグメント間の取引関係を推定しています。このデータベースと各企業が公表しているスコープ1排出量やスコープ2排出量を使って、独自に、世界2,000企業、19,000サブセグメント間のスコープ3排出量を推定しています。

この独自のスコープ3排出量の推定結果は、一部のサプライチェーンではなく、すべての上流の排出量を含んでおりかつ統一の排出原単位が用いられているので、結果が企業間で比較可能です。企業レベルのスコープ3排出源単位を確認されたい方は、CarbonScopeという無料のiPhoneアプリに消費者向けの企業のみの結果を掲載しています。ご確認ください。

ビジネスへの応用可能性:

独自に推計しているスコープ3排出量の結果の提供もしくは協業により、下記の3つの形で主に利用できると考えています。どれかに興味のある企業の方や、このように使えないか、さらなる開発を共同でできないかなど考えられている方はご連絡ください。

参考文献:

TNFD・生物多様性関連のパートナーシップ

概要

などで協力することができます。詳しくは下記をご確認ください。

背景:

TNFD  (自然関連財務情報開示タスクフォース) 1.0が公表され、多くの企業がTCFDへの取り組みと同じようにTNFDへの取り組みも考えていると思います。しかし、どこで1トンの二酸化炭素を排出しても、同じ気候変動問題と異なり、ブラジルの生物多様性の高い森林を切り開いて生産した1トンの大豆と米国で生産された同じ1トンの大豆の生物多様性などの自然への影響は大きく異なります。また、ほぼすべての企業が直接または間接的に利用するエネルギー消費が主な要因となる気候変動問題と異なり、TNFDに関係する企業は一次産品を直接または間接的に利用する企業が主な対象となります。例えば、農林水産業、鉱業、食品、化学、建設、一部製造業、そして金融が主に取り組まなければいけない業種になります。

TNFDはよくネイチャー・ポジティブと一緒に語られ、日本での植林やサンゴ礁の再生をしようという話をしている企業もあります。しかし、それらは意味がないことはないですが、有効な取り組みだとは考えられておらず、ネイチャーポジティブを実現するためにまず必要なことではありません。現在、ネイチャー・ネガティブが非常に大きく、これを減らす活動が求められています。では、ネイチャー・ネガティブの主な容易となっているものは何かかというと、土地利用と関連した農地の拡大、森林伐採、資源の利用などです。より具体的には、建設関連の企業であれば、その建築資材である鉱石はどこの鉱山から採掘され、そこではどの程度森林伐採や生物多様性の損失が起こっているのか、また、建築用木材は生物多様性の保全優先度の高い地域で伐採されたのかなどです。そのため、企業としてTNFDに取り組みのであれば、御社および御社のサプライチェーンにおける一次産品 (農畜産物、鉱物、木材) がどこで生産、採掘されたのかを知ることが一義的に重要になります。そのため、御社に直接および間接的に関連する一次産品の場所 (GIS座標やポリゴンなど) が正確に分かっていれば、かなり正確なTNFD対応に向けた評価ができると言っていいと思います。では、どのようにすればそのような情報から正確な評価ができるのか、そしてわからない場合にはどのようにすれば良いのかは、この分野の研究からある程度の答えを得られると思います。

研究:

私たちは、ある場所での様々な自然環境影響 (生物多様性の損失、水消費、森林伐採など) を定量化する研究や、それと国や地域のサプライチェーンとを結びつける研究を行っています (Lenzen et al. 2012, Moran and Kanemoto 2017, Hoang and Kanemoto 2021)。これによって、ブラジルのある地域 (もしくはブラジルという国) から、大豆をXトン輸入した際の生物多様性への影響はどれくらいありそうかなどを定量化することが可能です。48の農畜産物別、生産と消費別の生物多様性への悪影響 (生物多様性の保全優先度の高い地域との競合) マップはSpatial Footprintからご覧いただけます (Hoang et al. 2023)。これによって、おおよそどこの地域からどのような農作物を輸入することが、どれだけ生物多様性に悪影響を与えそうかを知ることや、TNFD対応のための基礎的な資料の作成をすることができます。水消費や森林伐採についても同様に取り組んでいます。

ビジネスへの応用可能性:

御社に関連する農畜産物や鉱物、木材の生産場所がある程度正確にわかっている場合には、どのようにするのが適切でしょうか。この場合には、私たちに頼らなくてもある程度は自力で御社のネイチャーネガティブな影響を知ることができます (LEAPアプローチのLOCATE/EVALUATE)。下記は2024年4月時点で、私が考える第一歩です。

良くない兆候が現れたとしても、それをきちんと報告することが最初のステップです。TCFDの元でも多量の温室効果ガスを排出していたとしても、企業は素直に報告しています。次の段階として、サプライチェーンを変更するなどの対応が次に取り組むべき方策になります。水や生物多様性の場合には似たような指標を提供している機関・企業があると思いますが、この分野に特に詳しくない場合にはWRIのAQUEDUCTやIUCNのSTAR指標などの世界的によく用いられている指標を使うことが望ましいです。あまり用いられていない指標を使うことは、御社のTNFD評価が国際的に認められない可能性があります。

上のガイドラインは、あくまで最初のステップです。また、これに当てはまらない事例もあります。例えば、森林の場合、Global Forest Watchは、森林とゴムの木やアブラヤシを見分けることができません。そのため、天然ゴムやパーム油を輸入している場合には、森林伐採をしてプランテーションを行っても森林伐採はなかったとなるので、1の方法は利用できません。また、その場所で森林伐採が起こっていたからといって、必ずしも他と比較して悪いわけではありません。ココア、コーヒー、パームオイルなどは元々森林がある地域以外で生産することがかなり難しいので、例えば生産場所の60%で過去20年間に森林伐採が起こっていても、ココアやコーヒー、パームオイルなどの生産地帯は平均するとそれ以上で必ずしも悪いとは言えません。一方で、もっと低くても問題となる場所もあります。

生産場所が詳細に分かっている企業で、上記以上のことが知りたい場合には、コンサルティングとしてご依頼ください。また、他の地域と比較して、御社の生産場所の環境影響を比較したい場合などをご希望の場合にも貢献できると思います。

次に、御社に関連する農畜産物や鉱物、木材の生産場所がわかっていない場合には、どのようにするのが適切でしょうか。この場合には、私たちの研究成果を利用することで、御社のネイチャーネガティブな影響をある程度は定量化することができます。

しかし、このような分析の前に、最低限で御社の方で、生産国または生産地域別かつ一次産品の商品別の調達量・金額を持っていることが前提となります。調達関連の部門と連携して、情報を収集するところから始めましょう。

また、データの提供や自然資本への影響の算定、さらなる開発を共同でできないかなど考えられている方の依頼もお引き受けできると思いますので、ご連絡ください。

関連論文: