KSP466th

みなさま

2019年5月の第466回KSPでは,いつもと少し趣向を変えて,朝日新聞科学医療部の小宮山亮磨さんに,科学あるいはより広く学術研究とマスメディアの関係について,ご自身の経験をふまえた話題提供をお願いしました.

社会心理学者によらず,あるいは研究者によらず,ご関心のある方はどなたでもご参加下さい.事前連絡不要です.※懇親会の参加申込は締め切りました.ご了承下さい.

【日時】2019年5月25日(土)14:30−17:30

【場所】関西学院大学大阪梅田キャンパス K.G.ハブスクエア大阪 10階 1005

【題目】科学記者と付き合うときに知っておくと得かもしれない、いくつかのこと

【発表者】小宮山亮磨(朝日新聞社科学医療部)

小宮山亮磨と申します。朝日新聞の科学医療部というところで記者をしています。

ふだんはもっぱら研究者のかたのお話を聞く役回りですが、今回は三浦先生のお招きで、みなさまの矢面に立つ羽目になりました。

科学記者としてのキャリアは約10年。小惑星探査機はやぶさ、原発事故、STAP細胞、東北大元総長の論文不正問題などに力を入れてきました。ここ最近では、自死に追い込まれた仏教研究者の記事を書きました。

中でも原発事故報道をめぐる事例は、記者たちが何を考えどう行動するか、彼らの限界は何かを示す意味で、とても重要です。一連の記事はなぜあんなにも歯切れが悪かったのか、どうして「メルトダウンしてます」と、もっと早く言えなかったのか? 実体験にもとづき、疑問に答えます。

また、さらに広げて、以下のようなことについてもお話しできたら、と思っています。

記者はどのように「ネタ」を探しているのか。せっかくプレスリリースしたのに、あんまり記事にしてくれないじゃないか。ウェブ記事なのに原典へのリンクを貼らないのはおかしいじゃないか。そもそも論文をちゃんと読んで(読めて)いるのか。カガク音痴の文系ばっかりなんじゃないのか?

では、どうぞよろしくお願いします。

【紹介者コメント】 三浦麻子(大阪大学大学院人間科学研究科)

小宮山さんと私は,関学時代に指導した「甲子園球場のビールの売り上げは,阪神が1点取ると1.12倍になる」という卒論の取材を受けたことがきっかけで,取材者と被取材者という立場で知り合って以来,その延長線上の,マスメディアを介したサイエンスコミュニケーション(SC)に関わる者同士という立場で,単なる「ネタの授受」に留まらない意見交換を重ねてきた間柄です.

小宮山さんと議論する中で感じたのは,研究者が研究知見を社会に周知したいという時の動機と,マスメディアの記者がそれをしたいという動機には,重なるところがある一方でずれているところもあって,それを互いに(少なくとも研究者は)許容しないことには,マスメディアを介した研究の社会還元,そしてそれに呼応して生じるSCはうまくいかないのではないか,ということです.

そこで今回,マスメディアは科学報道をどう考えているのかを,小宮山さんなりの目線で語っていただくことによって,私たち研究者が両者の共通点と相違点に自覚的になり,改めてSCのあり方について考える機会になればと思って話題提供をお願いした次第です.

小宮山さんが執筆した記事一覧は,こちらからご覧いただけます.