KSP447th

Post date: Aug 11, 2017 9:08:48 PM

第447回関西社会心理学研究会のお知らせ

【日時】2017年9月9日(土)14:00~17:00ごろ

【場所】関西学院大学大阪梅田キャンパス

http://www.kwansei.ac.jp/kg_hub/access/index.html

【話題提供者】平井 啓(大阪大学)

【発表題目】心理学者2.0を目指して

−人間の心の理を明らかにするための多元的・包括的心理学研究アプローチの可能性−

【発表概要】

発表者は、心理学者として、これまでがん医療をフィールドとした研究・教育・実践活動を行ってました。この領域では、主に臨床医学・看護学・薬学・倫理学など他分野と、また心理学の中においても、臨床心理学、社会心理学、教育心理学などの学際融合により、患者さんへのインタビューを中心とした質的研究、尺度開発研究、心理療法プログラムの開発・効果検証研究、がん検診受診行動におけるフレーミング効果の無作為化比較試験などのさまざまな研究テーマに取り組んできました。しかし、数年前より自分の研究の前提としてきた心理学理論やその方法論に限界を感じるようになってきました。苦労して心理尺度を作り、その論文を発表するが、研究では使われても、現場ではほとんど役に立たないとか。

そんなときに、2010年から岸和田市民病院という病院で「心理コンサルタント」として現場の問題に直接関与する機会を得ることができました。当初は、苦労して作った心理学的ツールの役に立たなさに対する無力感の中で仕事をしていましたが、徐々に現場での実践の中で、心理学理論、特に意思決定やパーソナリティーに関する理論や技術が、現場での問題解決や患者さん、クライアントさんのQOL向上の実現のために重要であることを再認識するようになりました。さらに、これらの理論や技法はテーマごとに作られていたため、それらを統合・包括する「多元的・包括的心理学研究アプローチ」の必要性を強く感じるようになりました。また、御存知の通り国家資格「公認心理師」で求められる心理学の専門家像も心理学の中ではありますが、多元的で、包括的なアプローチを使って、「結果にコミットできる」心に関する専門家であることが求められています。公認心理師時代を生き抜いていくためにも「新しい心理学者」の具体像について考えておく必要があるのではないかとおもいます。

そこで、勝手ながら「多元的・包括的心理学研究アプローチ」を行える心理学者のことを「心理学者2.0」と呼び、それを定義付けてみると面白いのではないかと考えました。「心理学者2.0」とは、①これまでの心理学の理論・方法論では解明できなかった心理に関する命題に、新しい理論の構築、新しい方法論の適応により挑戦する心理学者、②これまでの心理学研究に対して、メタ的なスタンスをとることで、他分野の知見や方法論を採用することを厭わない=包括的アプローチができる心理学者、③多分野の妥当性要求水準に対応できる=多元的アプローチができる心理学者ととりあえず定義しておくことにします。

そこで本発表では、発表者のこれまでの研究と現在進行中の研究(心理学者がやってみた行動経済学研究と精神症状やパーソナリティに関する包括的アセスメント・フレームワーク構築に関する研究)を紹介しながら、参加者のみなさまと議論することで、このきわめて個人的な「心理学者2.0」の定義を少しだけ一般的なものに定義し直し、共有できる形にする作業ができればと考えています。

みなさまのご参加をお待ちしております。

【懇親会】

研究会終了後,17時半~18時をめどに懇親会 (会費制) を開始したいと思います。場所は会場周辺を予定しています。恐れ入りますが参加される方は9月4日までに、平井啓宛て(khirai@grappo.jp)にその旨ご連絡をお願い申し上げます。

今後のKSPの予定です。

10月 柿本 敏克 先生(群馬大学)

11月 渡辺 文隆 先生(日本原子力研究開発機構)

12月 竹村 和久 先生(早稲田大学)

2018年

1月 岩谷 舟貴 先生(東京大学)