KSP445th
Post date: May 14, 2017 10:19:29 PM
【日時】2017年6月10日(土)14:00~17:00
【会場】大阪大学大学院人間科学研究科本館3階32教室
大阪府吹田市山田丘1番2号、Tel 06-6877-5111(代表)
交通アクセス http://www.hus.osaka-u.ac.jp/ja/access.html
【報告者】白樫三四郎(大阪大学名誉教授)
【演題】「思い出の心理学研究者:三隅、フィードラー、フェスティンガー、カートライト、リカート、ブルーム、レーブン、ラタネ、チェマーズ、カーク」
【報告概要】長年にわたって報告者が交流を保ってきた各研究者の略歴、主要な研究業績、行動パターン、具体的な交流経過など。
1. 三隅二不二(1924-2002)阪大名誉教授、リーダーシップPМ理論、「リーダーシップ行動の科学」(改定版、1984)、クルト・レヴィン賞、国際応用心理学会賞など受賞。
報告者は学部、大学院を通じて三隅の指導を受け、リーダーシップPМの初期の研究では三隅の指導を受け入れてきた。しかしその後、状況変数を積極的に考慮しない立場への不満から、しだいにPМ理論から離れていった。
2. Leon Festinger(1919-1989)スタンフォード大学、New School for SocialResearch教授、「認知的不協和の理論」(1957)、アメリカ心理学会賞受賞。
フェスティンガーは自分の理論がベトナム戦争において、アメリカ軍に使用されたことに心を痛めてきた。
3.Fred E. Fiedler(1922-)University of Washington 名誉教授、リーダーシップ効果性の条件即応モデル、認知的資源理論、”A theory of leadership effectiveness”(1967)、”New approaches to effective leadership: Cognitive resources and organizational performance”(1987、共著)、ストッディル賞ほか受賞。
報告者はフィードラーのリーダーシップ理論に最も大きな影響を受けてきた。とくにフィードラーのリーダーシップ理論において重用されてきたLPC(Least Preferred Coworker)指標と行動との関係分析に心を注いできた。
4. Rensis Likert(1903-1981)University of Michigan 名誉教授、経営参加システム論、態度測定尺度、”New patterns of management”(1961)、ストッディル賞。
長年に亘り、Institute for Social Research, University of Michigan を率いた。三隅はリカートから大きな影響を受けてきた。
5. Dorwin Cartwright(1915-2008)University of Michigan 名誉教授、グループ・ダイナミクスの体系化、”Group dynamics: Research and theory”(1968、第3版、共編)。
長年に亘り、Research Center for Group Dynamics, University of Michigan を率いた。
6. Victor H. Vroom(1932-) Yale University 名誉教授、組織の意思決定に関する参加の効果の検討、”The new leadership: Managing participation in organization”(1988、共著)、
彼の初期の研究において参加の効果が人々の独立性の要求、権威主義的態度といった要因によって左右されることが見いだされている。その後の研究では、組織が置かれている多数の要因をよりシステマティックにとらえ、それを考慮した上で参加がもたらす効果を実証的に測定するモデルを構築するに至った。この点でFiedler理論に共通する点があると考えられる。
7. Bertram H. Raven(1920-)UCLA名誉教授、社会的勢力、”Social psychology”(1983、共編)、クルト・レヴィン賞受賞。
現実の社会現象を社会的勢力という視点で捉えようとする一貫性が認められる。新興宗教団体「人民寺院」の集団自殺事例あるいは、病院における院内感染防止のための「手洗い」の実践と病院組織における社会的勢力との関係など、現実の社会問題解明への関心がきわめて高い。
8. Bib Latane(1937-)Florida Atlantic University 教授、傍観者効果、社会的手抜き、社会的インパクト理論、”The unresponsive bystander: Why doesn’t he help?”(1970、共著)、アメリカ心理学会賞。
きわめて単純な条件設定、変数操作による実験研究のあざやかさには、つねに驚嘆させられる。また、初期の研究が実は後の研究につながっていく、全体としての壮大なつながりに驚かされる。
9. Martin M. Chemers(1937-)University of California, Santa Cruz名誉教授、リーダーシップ、”An integrative theory of leadership”(1997)。
文化に関する関心は若い頃からあった。アメリカと中近東、あるいはメキシコなどとの比較など、部分的ではあるが、きわめて興味深い。報告者はともすれば日本の研究結果がアメリカのそれと一致するか否かに大きな関心を寄せがちであるのに対し、チェマーズらの問題提起は大きな意味をもつ。英国の心理学者マイケル・W・アイゼンクは心理学の多くの領域において文化が与える効果の検討することの重要性を指摘してやまない。
10. Roger E. Kirk(1930-)Baylor University 教授、心理統計、実験計画、“Experimental design: Procedures for the behavioral sciences” (2013、4 th ed.)。
カークによる分散分析のシステマティックな分類、解説は多くの研究者によく受け入れられてきた。
(参考文献)
白樫三四郎 2006 リーダーシップ研究史における三隅二不二とフレッド・E・フィードラー 甲子園大学紀要、34、157-172.
白樫三四郎 2008 思い出の心理学研究者 甲子園大学紀要、36、193-210.
【懇親会】研究会当日、18時頃から大阪モノレール「千里中央駅」周辺で開く予定(会費制)。参加希望者はなるべく早めに、遅くとも6月5日(月)までに寺口司(阪大助教)あてご連絡ください。Eメール:teraguchi@hus.osaka-u.ac.jp このとき参加者氏名、メール・アドレス、所属、懇親会のみの参加有無を併せてお知らせください。
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今後のKSPの予定です。
7月29日 毛 新華 先生(神戸学院大学)
8月 休会
9月9日 平井 啓 先生(大阪大学)
10月 柿本 敏克 先生(群馬大学)