甲状腺疾患
バセドウ病の診断
バセドウ病の男女比は1:5で、女性の約500人に1人がバセドウ病といわれています
橋本病においては男女比が1:20であり、圧倒的に女性に多い病気ということが分かります。
TRAb測定法。第2世代は未治療バセドウ病で98%で陽性になるためバセドウ病の除外に用いられる。第3世代では3 IU/dL以上で無痛性甲状腺炎の可能性は否定でき、バセドウ病と診断できる。逆に0.8未満の場合には無痛性と診断できる。
FT3/FT4 >2.5はバセドウ病の目安となる
バセドウ病の治療
バセドウ病に伴う心房細動の治療は?
ホルモン値のコントロールにより約50%の患者で洞調律に戻る
https://accessmedicine.mhmedical.com/content.aspx?bookid=2129§ionid=179924631
バセドウ病のアイソトープ治療のパンフレット
アイソトープ治療後の経過(バセドウ病)
1~2ヶ月後には治療効果が現れてきます。3~4ヶ月後に一時的に甲状腺機能低下状態になることがありますが、多くの場合、自然に甲状腺機能は回復してきます。治療効果を見るために4ヶ月間は月に1回程度の間隔で受診していただきます
また、1回のアイソトープ治療で効果が十分でない場合は、3~12ヶ月後に再度治療を行います
ヨードはどのくらいまで許容範囲か?
バセドウ病の方はヨウ素過剰摂取を避ける必要が通常量なら摂取してもよいでしょう。昆布を毎日摂取することは、ヨウ素過剰になります。ヨウ素の含有量は昆布が群を抜いており、次がひじきです。わかめ、海苔に含まれる量はこの2つと比べるとはるかに少量です。
http://www.ito-hospital.jp/06_iodine/02_01food_including_iodine.html
バセドウ病の治療中に起こることのある症状
体重増加:機能亢進による過食の習慣が続いているため食事習慣の変更が必要
脱毛:女性に高頻度に見られる。薬の副作用ではなく甲状腺機能の変化によるもので、甲状腺機能が正常化してしばらくすると止まるため治療を中止するべきではない
筋肉の痙攣:甲状腺機能の正常化、低下により見られ、機能正常化が続けばやがてなくなってくる。ATDの過剰で症状がひどい場合は一時的にT4製剤を投与することもある
どんなときに橋本病やバセドウ病は悪くなるか?
転職、結婚、離婚、本人や子どもの受験、看護、配偶者の死亡などのストレス
出産後3〜9ヶ月後(逆に妊娠中は症状が軽くなることがある)
花粉症(免疫反応が強くなるため、橋本病にはあまり影響がない)
薬剤(ステロイドの中止、アミオダロン、GnRHアゴニスト、インターフェロン)
5年後までに30%以上に上る。臨床的には甲状腺腫が縮小することが重要な指標、これを加味すれば25%程度
また、中止に際しては少なくとも次の夏を越すまでは厳重なヨード制限を行うよう指導している
抗甲状腺剤でヨードの利用が抑えられているのが、中止後にホルモンの材料が多く摂取されれば不都合と考えている。
TRAbが消失せず、TSHも低値に留まる場合には抗甲状腺剤を増量するが、増量によってTSHが上昇し、これに反応して甲状腺腫が大きくなることが屡々経験される。
甲状腺腫がある程度大きくてTRAb陽性、TSHが高値の場合、十分量の抗甲状腺剤を投与するとともに、25~50μgのT4(チラージンS、1/2錠、1錠)を併用してTSHの上昇、ひいては甲状腺腫の増大を抑える。
アメリカ人はバセドウ病の9~22%に心房細動がみられますが、日本人の場合はずっと少なく2%程度
心房細動になって10年経っていないなら、クスリか電気的除細動(DCカウンター:一種の電気ショックでアメリカのブッシュ元大統領もこの治療を受けることになっていました)で治ることが多いので、積極的に治療を受けることを勧めます。
バセドウ病の治療をして甲状腺ホルモンが正常になったら心房細動のある10人中7人ではこの不整脈はなくなります。しかし、残りの3人では不整脈が続きます。
ヨウ化カリウムによるバセドウ病治療
医師によっては先にヨウ化カリウムを投与して, 100mgでも効果が十分でなければMMIを考慮するということもある。副作用を避けたい場合には、特に間違った方針とは言えない。
ヨウ化カリウムでTRAbが陰性化しない場合は他剤に切り替える必要があるか?
併用してコントロールした後にヨウ化カリウムを中止することがある
ヨウ素の摂取を制限しないとバセドウ病の薬が効きにくい、バセドウ病が再発しやすくなるなど意見がありますが、これが事実かどうか、一体どれぐらい制限したらよいのかなどはまだ不明です。
ヨウ素欠乏地域ではヨウ素過剰摂取によりヨウ素誘発性機能亢進症を発症することが報告され、バセドウ病の方はヨウ素過剰摂取を避ける必要があります。しかし、日本はヨウ素充足地域であり、通常量なら摂取してもよいでしょう。
2mg/日程度といわれている。10mgを超えることも珍しくない
必要量は0.2mg/日程度
昆布100gでヨード 130、ひじきで30, わかめ 7.8g、のり、観点
甲状腺機能亢進症治療薬
甲状腺機能亢進症に合併した類もやもや病
非常にまれ
治療は内分泌学的なコントロールを優先
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jstroke/34/2/34_2_82/_pdf/-char/ja
TSH lowでFT4 正常範囲の場合のMMIの治療開始の基準
ヨウ化カリウムの有用性
TSH受容体抗体(TRAb)が正常化し、かつ1年以上甲状腺機能が正常に保たれていれば中止かつ、抗甲状腺薬を週に2錠まで減量し、それでも活動性がさらないものは中止しない、という考えもある。
抗甲状腺薬を週に2錠(1日0.286錠換算)にまで減量でき、TRAbのみならず、バセドウ病の活動性を反映するTSAb も陰性の条件で中止し、平均約2年後に約4%以上で再発した。再発を完全になくせない。
抗甲状腺薬を週に2錠(1日0.286錠換算)にまで減量でき、TRAbのみならず、バセドウ病の活動性を反映するTSAb も陰性の条件で中止し、平均約2年後に約4%以上で再発した。再発を完全になくせない。
平均11.2年(1.3年~25.1年)経過観察した結果、
抗甲状腺薬開始後7年までの寛解率(抗甲状腺薬を中止できて、その後再発無い患者の割合)は年間約8%ずつ上昇し55%に。
抗甲状腺薬開始後8年以降は年間の寛解率は低下(と言っても寛解する人はそれなりにいます)
結論として、「7年目を目途にアイソトープ(放射性ヨウ素; 131-I)治療・手術療法(甲状腺全摘出)の可能性を考えてもよいのでは」との事です
MMI , PTU投与漸減法
6T→3T→2Tに、FT4 1.0ng/dLを下回らないように。TSHが測定可能になったらTSH値正常を目標に調整、この際もしばらくはFT4が1を下回らないように注意が必要
TSHを正常に保つのに必要最小限の投与量を一定期間継続後漸減、TSHが測定感度以下、またはそれに近い数値になれば減量前の量に戻す。
MMIの増減に伴い甲状腺機能の変動が激しい症例では、6T/日程度の十分に甲状腺機能を抑えられる量のMMIとチラーヂンS 100μg/日を併用することにより安定した効果を得ることができる
1日1錠でTSHが6ヶ月間正常ならば隔日で1錠に減量、その後6ヶ月TSHが正常ならば中止について考える。TRAb 3.0 IU/L以上であれば再発する可能性が高いため中止しないでそのまま経過を観察する。
TRAbがそれ以下でも陽性ならば再発の可能性が高いのでさらに6ヶ月間隔日で1錠を継続したのち中止を検討する。
TRAbが陰性であれば寛解している可能性は70%以上 。
隔日1錠を長期間続けてから中止したほうが寛解率は高くなる可能性があるため、患者さんが躊躇するようなら1年以上続けたほうがよい
中止を望まない場合にはそのまま継続することも一つの選択である。医療費の問題はあるものの、再発を防ぎ、副作用の心配もまずないからである。
中止後のf/uは1M→2M→3Mを1年間、その後は6ヶ月ごと、2年以降はTRAbが高値でなければ年1回のf/uでよい
PTU, MMIの初期投与量
FT4>7ng/dLではMMI 15mg, PTU 300mgにくらべてMMI 30mgの有効性が高い
FT4<7ng/dLでは3群間にあまり差がない。いずれも8週後には8割以上で正常化する。
PTUの減薬
PTUは同じ投与量でも分割して投与したほうが効果が強くなる。
PTU 2T/日から1T/日に減量する際には、2T分2→2T分1→1T分1と減薬する方法もある
メルカゾールによる治療と中止の目安
初診時FT4 >5の場合はKCL50mg+MMI 15mgで治療開始
抗甲状腺薬 1 錠隔日 服用(最少維持量)で 6 ヶ月間以上、TSH 値を含めて甲状腺機能が 正常に保たれていれば中止を検討し ても良い
薬物治療中の再燃および治療 後の再発率は 20~75%
基準に 則って抗甲状腺薬を中止した場合、寛解率は 67.2~80.7%であり約 20~30%は再発している
TRAb が陰性でも約 3 割は再発し、陽性でも約 3 割は寛解するため 抗甲状腺薬中止時における TRAb 値では、バセドウ病の再発は予測 できないと考えられる。
一般的に若年(40 歳未満)、男性、喫煙者(特に男性)、大きな甲状腺腫( 80g 以上)、バセドウ眼症の存在および治療前と終了時の TRAb の高値は再発しやすいと言われている
海藻について
昆布以外の海藻は、昆布に比べてヨウ素の含有量がずっと少ないので、(昆布だしも含めて)かなり大量に食べ続けないかぎりまず問題ありません。
甲状腺機能低下症になりやすいのは橋本病の人で、半数ぐらいの人が大なり小なり影響を受けます。
橋本病でない人もまれに影響を受けることがあります。
昆布が大好きな人は、好きなだけ食べてみて、甲状腺機能低下症になるか検査してみるという方法もあります。
バセドウ病と妊娠
hCGはつわりにも関係しますので、つわりがひどくなる時期(妊娠10週頃)に甲状腺機能亢進の程度が強くなり、つわりが落ち着いてくる頃には甲状腺機能も落ち着いてきます。
メルカゾールに関しては、POEMスタディという本邦における研究の結果、妊娠中のメルカゾールの内服が頭皮欠損、後鼻孔閉鎖、食道閉鎖、臍腸管瘻といった胎児奇形に関連することが証明されました。そのため、妊娠初期のメルカゾール内服は避ける必要があります。ただし、奇形に関する影響が危惧される期間を過ぎた妊娠15週以降であれば、メルカゾールの使用は可能です。
バセドウ病のある方の場合、妊娠中はバセドウ病の勢いが落ち着いてきます。しかし、出産後は、4~7ヶ月頃を目処にバセドウ病が悪化する可能性があります。他に、妊娠中に甲状腺ホルモンの内服量を増量しなければならなかった場合、出産後は減量が必要となります。
以上のような理由から、甲状腺機能の異常がある方の場合、出産後も甲状腺機能の確認ならびに内服の調節が必要となってきます。
メルカゾールであれば、1日2錠、プロパジール(チウラジール)であれば、1日6錠までは母乳中への移行は問題ないとされています。これ以上の量が必要な場合、内服後6時間程度あけて授乳するなど、工夫することで母乳栄養の継続は可能です。
つわりの時期に甲状腺機能亢進症になって、甲状腺ホルモンが一時的に過剰になることがあります
妊婦さんの100人に2人ほどに起こります。原因は、胎盤が産生する絨毛性ゴナドトロピンです。
治った状態になっていても、産後に再発することがある。
妊娠中も治療が必要だった場合は、産後にしばしば薬の量を増やす必要がでてくることが多い。
再発や悪化は、産後6-7か月を過ぎると良くなったり軽くなったりする傾向がある。
再発ではなくて一時的な甲状腺ホルモンの過剰状態が起こることもあります(無痛性甲状腺炎の項参照)。これは産後の2-4か月ごろが一番多く、バセドウ病の再発と間違われることがあります
産まで薬が必要だった場合は、産後に薬の量を増やす必要がでてくることが少なくありません。ただし産後6-7か月がピークで、その後妊娠前ぐらいの状態にもどることが期待できます。
ヨウ素で治療している場合の授乳も可能ですが、今はまだ安全性を確かめつつある段階なので、乳児の甲状腺機能を検査する必要があります。
メルカゾール1錠(5㎎)に対してチウラジールやプロパジールは2錠(100mg)かそれ以上に必要で、特にバセドウ病が悪化しやすい産後は大量に必要とすることが少なくありません。そこで授乳する場合もメルカゾールが薦められるようになりました。
メルカゾールは1日2錠までなら授乳に制限は全くありません。
服用量が多い場合(1日3錠以上)は乳児の甲状腺機能検査が必要
チウラジール、プロパジールの場合は、1日6錠(300mg)までなら乳児への影響はないですし、それ以上でも問題ないとの報告があります。(メルカゾールは1日2錠までなら授乳に制限は全くありません。)
服用量や服用方法によってはすべて母乳でよい。
バセドウ病眼症について
患者さんの2~3割が、目にも症状がありますが、これは甲状腺ホルモンの過剰が著しいか軽いかとはと関係がありません
橋本病と妊娠
自己免疫性甲状腺疾患と流産
TPOAb陽性例において、甲状腺機能が正常であっても積極的に甲状腺ホルモン剤を投与すると流産率・早産率ともに抑制されたという報告があります。そのため、習慣性流産で悩まれており、甲状腺自己抗体が陽性の方の場合、甲状腺ホルモン剤の補充を試みてみるのも一つの選択肢となってきます。
不妊症女性の10人に1人は潜在性甲状腺機能低下症、5人に1人は甲状腺自己抗体陽性とされています。特に、不妊症の原因として排卵障害や子宮内膜症が関連している場合、潜在性甲状腺機能低下症の合併率が有意に高いとする報告もあります。そのため、不妊治療を行う前には、TSHの値やTgAbあるいはTPOAbの測定も必要と考えられています。
妊娠中の受診の時期は4週、10週、15週,30週を目安に
産後に、約4~6割の方に甲状腺機能の変動がみられ(無痛性甲状腺炎)、産後の体調不良の原因になることがあります。このため、産後も定期的なフォローを行います.
出産後は1〜2ヶ月後、6ヶ月後のfollow upを推奨
米国甲状腺学会ガイドライン2011では、妊娠前~妊娠初期(13週まで)はTSH <2.5μU/ml、妊娠中期(14週~)TSH<3.0μU/mlとしています。
橋本病の方は出産後いつ頃受診したほうがいいか
産後に約半数が無痛性甲状腺炎を発症
チラーヂンは減薬〜中止できることも多い
バセドウ病と不整脈
https://www.kuma-h.or.jp/kumapedia/encyclopedia/detail/?id=238
日本人では、バセドウ病の約2%の方にこの不整脈が起きており、これは年齢が高くなるほど高率になります。甲状腺ホルモンの量が正常になると、そのうち6割以上の方はこの不整脈が自然に治ります。
チラーヂンについて
半減期が約1週間のため、服用し続けていれば服用時間がずれても血中濃度の変動はほとんどありません。そのため、いつ服用しても、血中濃度の時間帯による効果の違いもあまりありません。なお、最近の研究では、食後よりも空腹時や寝る前の方が吸収が少しよいことがわかっています。
https://www.ito-hospital.jp/04_treatment/01_1medicine_of_thyroid_disease.html
チラーヂン:食前か食後か
このお薬は血中半減期(薬の血中濃度が半減するまでの時間)が約1週間と非常に長く、継続して服用すると血中濃度の変動はなくなります。よって服用する時間帯による効果の違いはほとんどありませんので、患者様ご自身が飲み忘れのない時間帯に服用時間を変更していただいても結構です。
http://www.ito-hospital.jp/04_treatment/01_2medicine_qa.html
チラーヂンの用量調節
45歳未満の重症症例では50μgから開始する。45歳以上、軽症の場合には25〜50μg〜開始。
妊娠が確認された場合には直ちに 1.3〜1.5倍に増量する。
冠動脈疾患、心疾患を持っている高齢者、75歳以上ではTSHの目標は4〜6μU/mLを目標にする。
適正な補充量は「組織中の甲状腺ホルモン濃度が正常」である量であるが、現在この指標として存在するのはTSHのみ。
チラーヂンで治療中にはFT3は、FT4に比べて低くなる傾向がある。
下垂体はFT4の影響を受けやすい。T3が正常範囲でもTSH低下していれば機能亢進状態になっていると言われている。このためTSHを正常範囲に保つことが治療の目安となる。
チラーヂンと一緒に飲むと良くないものはある?
薬剤ではカルシウム剤・鉄剤・亜鉛製剤、エビスタ、痛み止め(バファリンなど)、メソトレキセート(MTX)(リウマトレックス®)、クレメジン®、ケイキサレート®等で吸収低下することがある。
食物は豆乳・豆腐・納豆・大豆製品、エスプレッソ(濃いコーヒー)、食物繊維、乳製品(牛乳・チーズ・ヨーグルトのカルシウム)で吸収が低下
薬剤や食品の影響を避けるためには、起床後すぐ(朝食30分前)に水で飲むのがベスト。ただし、長期的には影響は影響は軽微と考えられるため食後での服用も可
T4製剤は半減期が約1週間のため、服用し続けていれば服用時間がずれても血中濃度の変動はほとんどありません。そのため、いつ服用しても、血中濃度の時間帯による効果の違いもあまりありません。なお、最近の研究では、食後よりも空腹時や寝る前の方が吸収が少しよいことがわかっています。
鉄剤、コレバイン、アルミニウム製剤なども吸収を阻害するが、4〜5時間あけて服用すれば影響なし
チラーヂンは空腹で飲むと吸収率が15%上がる。継続服用で血中濃度の変動がほとんどなくなる。
潜在性機能亢進症
TSH <4 は2%〜4%程度
無痛性甲状腺炎の頻度も高いため1〜2ヶ月御に再検査
TSH<0.1が続く場合は治療を開始すべき
高齢者では一般的に無症状ですが、若年者では頻脈、手指のふるえなどの症状が出現することもあります。
わが国では成人の約1.7%が潜在性甲状腺機能亢進症該当する
65歳以上の高齢者や閉経後女性、また、骨粗鬆症などの骨減少状態や心血管病を合併している患者では、潜在性甲状腺機能低下症が持続することによる悪影響が大きいため、治療が望ましいと考えられます。これらの患者で、特にTSH0.1 mU/L以下の場合には治療が必要です。
一方、一般成人でこれらの合併症がなければ、潜在性甲状腺機能低下症は、通常、経過観察しますが、TSH0.1 mU/L以下の場合には治療が望ましいと考えられます。
橋本病
妊娠希望の場合、TSH値が2.5μU/ml以上であれば、甲状腺ホルモン薬を服用します
妊娠したら5~6週で受診し、甲状腺機能をチェックしましょう。妊娠初期は4週ごとに、その後は30週前後に甲状腺機能をチェックします
分娩すると、甲状腺ホルモンの必要量は妊娠前の状態に戻ります。そのため、分娩後は甲状腺ホルモン薬を減量または中止することが多いです。また、産後に、約4~6割の方に甲状腺機能の変動がみられ(無痛性甲状腺炎)、産後の体調不良の原因になることがあります。このため、産後も定期的なフォローを行います
一般的には、機能低下症状の訴えがある、あるいは脂質異常を認め、かつTSH≧10μIU/mLでは
合成甲状腺ホルモン(チラージンS)の補充治療をしたほうが良いとされます。
潜在性甲状腺機能低下症は、TPO抗体陽性では年4.3%の頻度で顕性甲状腺機能低下症に移行する可能性があります。
日本人の高齢者ではTSH高値(>8μIU/mL)で顕性甲状腺機能低下症になる可能性が高い
潜在性〜顕性のイメージ
潜在性機能低下症の治療目安
チラーヂンの用量調節
45歳未満の重症症例では50μgから開始する。45歳以上、軽症の場合には25〜50μg〜開始。
妊娠が確認された場合には直ちに 1.3〜1.5倍に増量する。
冠動脈疾患、心疾患を持っている高齢者、75歳以上ではTSHの目標は4〜6μU/mLを目標にする。
適正な補充量は「組織中の甲状腺ホルモン濃度が正常」である量であるが、現在この指標として存在するのはTSHのみ。
チラーヂンで治療中にはFT3は、FT4に比べて低くなる傾向がある。
下垂体はFT4の影響を受けやすい。T3が正常範囲でもTSH低下していれば機能亢進状態になっていると言われている。このためTSHを正常範囲に保つことが治療の目安となる。
妊娠中のTSH
成人女性の約7~8人に1人が橋本病の素質
TPO抗体が陽性の女性では、TSH測定を産後3~12週および6ヶ月目に行うべきである。
I型糖尿病の女性はPPT出現の頻度が一般人口に比し3倍高い。 したがってTSH測定は産後3および6ヶ月にスクリーニングすることが推奨される。
PPT既往のある女性では5~10年後に永続性の原発性甲状腺機能低下症を発生するリスクが非常に高い。 したがってTSHは年1回検査するべきである。
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/perinatal/bosei/bosei-hashi.html
甲状腺自己抗体陽性の潜在性甲状腺機能低下症は、1年に4.3%の人が顕性甲状腺機能低下症になると報告されています。この頻度は甲状腺自己抗体陰性でTSHが正常の人の38倍とされています。
昆布、とろろ昆布、昆布だし、ひじき
その他
亜急性甲状腺炎(急性期)の診断ガイドライン
甲状腺機能の異常、顕性、潜在性の頻度
潜在性低下 5.8%
顕性低下 0.7%
潜在性亢進 2.1%
顕性亢進 0.7%
無痛性甲状腺炎の症状持続期間
二次性甲状腺機能低下症
二次性甲状腺機能低下症は,視床下部により甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が十分に産生されない場合,または下垂体によるTSHの産生が十分に行われない場合に生じる。ときに,TRH分泌不足が原因で生じるTSH分泌障害は三次性甲状腺機能低下症と呼ばれる。
FT3/FT4比がBasedow病では無痛性甲状腺炎よ り高く鑑別に有用とあるが,オーバーラップが 多い
多腺性機能不全症候群(PDS)
共通の原因による,数種の内分泌腺機能の連続的または同時的な低下を特徴とする。病因は自己免疫性であることが最も多い。治療法としては,欠損または欠乏しているホルモンの補充のほか,ときに免疫抑制薬を使用する。
メルカゾール薬価: 10点
甲状腺機能亢進とホルモン値以外の検査データ
伊藤病院-アイソトープ治療について — Nov 8, 2015 1:11:29 PM
伊藤病院-甲状腺疾患の薬について — Nov 8, 2015 1:10:38 PM
すみれクリニック-甲状腺の病気について — Nov 8, 2015 1:09:31 PM
日本甲状腺学会 — Nov 8, 2015 12:22:32 PM
甲状腺がん — Jul 25, 2017 9:04:49 AM
甲状腺結節性疾患有所見率等調査 — Aug 22, 2017 3:12:17 AM
バセドウ病眼症と甲状腺機能亢進症自体の治療との関係 — Oct 12, 2017 3:05:35 AM
バセドウ病の病態 甲状腺疾患の疫学 — Oct 12, 2017 2:07:26 AM
バセドウ病(放射線治療)受け入れ可能施設一覧 — Oct 12, 2017 1:40:24 AM
外部リンク集
リンク集
甲状腺癌取り扱い規約 第7版 — Apr 16, 2016 3:12:36 AM
バセドウ病アイソトープQandA — Apr 16, 2016 3:09:31 AM